〈沖縄でも…〉ギューっとハグして、キス疑惑、セクハラざんまい…南城市の“居座り続ける市長”4度目の不信任でやっと可決「粛清恐れ誰も逆らえなかった空気」
〈沖縄でも…〉ギューっとハグして、キス疑惑、セクハラざんまい…南城市の“居座り続ける市長”4度目の不信任でやっと可決「粛清恐れ誰も逆らえなかった空気」

居座りを続けていたお騒がせ市長についに不信任が突きつけられた。沖縄県南城市の市議会は9月26日、古謝景春市長(70)の不信任決議案を可決した。

市長のセクハラ問題を巡り、市議会から不信任決議が突きつけられたのは、2024年3月から数えて4度目。市長のセクハラ行為を認定した第三者委員会からの辞職の提言を無視し続けた市長の頑なな姿勢が問題の複雑化を招いたといえる。全国では、斎藤元彦・兵庫県知事や、田久保眞紀・伊東市長など、問題を指摘されながらも居直りを続ける「トンデモ首長」の行状が相次ぎ報じられている。そんななかでも、古謝市長の専横ぶりは「地元でも際立っていた」という。いったい、どんな人物なのか。 

古謝市長の女性運転手「勤務中に胸をさわられた」

「市長にセクハラ疑惑がある、と聞いた時もまったく驚きはなかった。逆に『なんでいまさら』という疑問が浮かんだくらい」。

古謝市長を知るある地元関係者はこうため息をつく。

9月26日の市議会で不信任決議が可決された古謝市長。今後は、地方自治法の規定に基づき10日後に当たる10月6日までに議会の解散か、失職か辞職かの道を選ぶことになる。

「古謝市長はこれまで、来年2月に控える市長選まで続投する方針を貫いてきました。ところが、今回の不信任決議を受けて古謝市長が失職か辞職のいずれかを選ぶということになれば、市長選が前倒しで行われることになる。

地方自治法で、首長の失職・辞職から50日以内に選挙を行わなければならないという決まりがあるためで、問題発覚後も粘り腰を続けてきた古謝市長はいよいよ進退窮まった格好です」(地元紙記者)

そもそもの問題の発端は、2022年12月にさかのぼる。

古謝市長の運転手をしていた女性が市に「勤務中に胸をさわられた」などと市長からの「セクハラ」を申告し、対応を求めた。

ところが、市側はその後、女性との業務委託契約を解除。この件を地元紙が報じ、その後、女性は市と市長側に損害賠償を求めて民事提訴したほか、県警への被害申告にも踏み切った。

一連の問題を受け、市議会が職員アンケートを実施したところ、「市長からのセクハラ」の訴えが複数あったことから、市が市議会の要請を受ける形で第三者委員会を設置した。

この間、2024年3月に市議会が最初の不信任決議案を提出したが否決。翌25年5月、第三者委が、職員に対して「出張随行の際のキス」「飲み会でのキス・太ももを触る」などの複数のセクハラ行為があったと認定し、古謝市長に辞職を求める「提言」を行った。

「それでも市長は『何もやっていない』の一点張りで第三者委員会の提言を拒否し、職にとどまりました。第三者委員会からの提言があった直後の不信任決議も自身の影響力を駆使した多数派工作で否決に持ち込み、7月にあった3度目の不信任決議も乗り切りました」(前出の地元紙記者)

3度目の正直ならぬ4度目の議決でついに可決に至った背景には、古謝市長が職員に「ハグはやったさぁね」「変なことやられていないって言ってね」などと自身の行為を自白し、被害者に口止めするかのような発言が明るみに出たことがある。

被害に遭ったとされる職員が、古謝市長とのやり取りを録音した音声データの存在が報じられ、これまで市長側に立っていた与党市議側から「これ以上かばいきれない」との声が相次いだ。

最終的には、与党市議側から不信任案が提出されることとなり、「市長擁護」のスタンスを崩さなかった市議の翻意を促す形で、要件である「出席議員の4分の3以上の賛成」を満たして可決に至ったのである。

「日頃から女性に対して危うい言動が目立ちました」

自らの誤りを認めない古謝市長の特異なメンタリティーが事態の複雑化を招いたともいえるが、その言動の危うさはかねてから問題視されていたという。

冒頭の地元関係者が声を潜めてこう明かす。

「古謝市長のセクハラ体質はかなり以前から指摘されていたことです。地元風にいえば典型的な『シージャー(先輩)気質』の人。気さくで親分肌。面倒見もいいから慕う人も多いのですが、日頃から女性に対して危うい言動が目立ちました。

女性に異性関係を詮索するような軽口をたたくのは日常茶飯事。親しくなった職員らを自宅や自身で主催した身内の会に呼ぶこともありました。衆人環視の中でハグやキスをするということはありませんでしたが、二人きりの場面などでセクハラととらえられるような接触をするのです。

報道ではセクハラ被害について『ハグ』と伝えられていますが、それも一般的なイメージの軽いハグとは違ったりする。実際に、ぎゅーっと抱きしめるような抱擁を受けた人もいます。ただ、こういった被害を申告しようにも、幹部職員も自分の身内で固めており、被害にあった職員らも、古謝市長の粛清を恐れてみんな口をつぐんでしまうのです」

今回の問題では、古謝市長がフェイスブックなどのSNS上で最初に被害を訴えた元運転手の女性らへの人格攻撃を続けたことにも批判が起きている。

しかもその投稿の内容には、真偽不明の情報や女性側のプライバシー侵害に当たるような内容も複数含まれていたとされる。さらに、こうした危ういネット投稿にも“前科”がある。

「市町村合併で知念村や佐敷町など4自治体が合併して南城市が誕生した2006年に市長となった古謝市長ですが、4期目を狙った2018年の選挙では落選しています。65票という僅差での惜敗でしたが、この敗因のひとつと言われているのが、SNSでの過激投稿でした。

敵対する政治勢力を真偽不明の情報も交えて攻撃していたことが有権者に嫌気されたといわれています。それに、市長にはお抱えの霊媒師がいるとも言われており、一時はその霊媒師の助言に従って県知事の座を狙っていたこともあるほど信心深い一面もあります。そうした指向がSNSの投稿にも反映され、首長という公人らしからぬスピリチュアルな書き込みをして周囲を引かせていました」(前出の地元関係者)

地元紙によると、不信任決議につながった音声データには、「与那原の神女(ノロ)が言っていた」として女性に訴訟をちらつかせて脅しをかけるような発言も記録されていたという。

「神女(ノロ)」とは、祭祀を司る琉球王朝時代からある「神職」で、祭政一致体制を敷いた琉球王国では地域の行政官の役目も担ったとされる。中国大陸由来の儒教、道教などの影響も受けたアニミズム的な祖霊崇拝とも言うべき、独自の信仰が根付く沖縄では、在野の霊媒師「ユタ」とともに地元では高位の霊能力者として認知されている。

もちろん、信仰は憲法で保障された『信教の自由』に関わる部分であることは言うまでもない。ただ、公人の立場でこうした“神がかり”的な言説を交えて相手を追い詰めていたことに驚きを禁じ得ない。

ただ、疑問なのは、なぜ古謝市長はこれほどのまでの権勢をふるうようになったのかという点だ。

「古謝市長は市町村合併前の旧知念村から助役、市長へと上り詰めており、官民問わず、多くのシンパを抱えています。さらに二階俊博元自民党幹事長と関係が近く、県のインフラ整備関連の外郭団体の会長を長年務めるなど、自民党県連内でも、『ウットゥ(後輩)』の立場にある現職の地元国会議員も頭が上がらないほどの影響力がありました。

こうした背景もあって、『誰も逆らえない』という空気が醸成されていったように思います」(同前)

今回の騒動は、首長の権限が強大であるがゆえに、ハラスメント防止の仕組みが脆弱なまま放置されてきたという制度面の問題も浮き彫りにした。これは、南城市だけでなく全国の自治体に突きつけられた課題でもある。内部通報制度の整備や第三者機関による調査体制を強化しなければ、同様の“悲劇”は繰り返される。対策は急務だ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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