「徴兵制の準備ですか?」自衛官募集のために市が“個人情報提供”で炎上…福岡市と自衛隊に見解を聞いた
「徴兵制の準備ですか?」自衛官募集のために市が“個人情報提供”で炎上…福岡市と自衛隊に見解を聞いた

福岡市の広報戦略室がXに投稿した内容が波紋を広げている。4月1日付のその投稿では、「自衛官募集事務のため、令和8年度に18歳、22歳になる方の氏名と住所の情報を、自衛隊に提供します」としたうえで、「個人情報の提供を望まない方は、除外申請の手続きを6月1日までに行ってください」と呼び掛けた。

これに対し、SNSでは不安の声が広がっている。

自衛官募集のための個人情報提供に対してSNSでは賛否の声

「即刻やめて」
「徴兵制の準備か?」
「何年も前から全国の自治体で行われています。 除外申請のお知らせをしてくれるだけ、福岡市はマシだと思います」

4月1日に福岡市広報戦略室が自衛官募集事務のためにXに投稿した内容に対して、コメント欄には賛否の声があがった。

自衛官募集のための個人情報提供は、自衛隊法施行令や住民基本台帳法などを根拠に福岡市に限らず多くの自治体で行なわれている。

個人情報の提供にあたり、これまでは自衛隊職員が住民基本台帳を閲覧して書き写していたと福岡市市民局区政推進課の担当者は説明する。

「令和元年度までは、自衛隊職員が各区役所で住民基本台帳を閲覧し、氏名や住所などの情報を書き写していたため、閲覧期間が長期に及ぶことや市職員の立ち会いが必要であることなどの負担がありました」

その後、募集対象者を一括抽出する機能が追加されたことから、令和2年度より提供方法が見直されたという。

「令和2年に行なわれたシステムの刷新については、市民サービスの向上や業務の効率化等を目的に、住民記録のほか、税や社会保障分野などのシステムの刷新を行なっております。

その中の住民記録システムでは住民票を個人票(1枚につき、1人のみ記載される個人単位の様式)で交付できるようにすることで市民サービスの向上を図ったり、抽出機能を追加するなどを行なっております」

「様々な広報媒体を活用し、丁寧な説明を心掛けております」

プライバシーへの不安を感じる人も多い個人情報の提供だが、同担当者は「法に基づいた手続き」だと説明する。

「自衛官募集にあたっては、毎年、自衛隊から市町村長に対して、自衛隊法及び同法施行令に基づいて対象者情報の提供について依頼があります。それに対し、自衛隊への本人の同意を得ない対象者情報の提供は、個人情報保護法に基づいて実施しています。

自衛隊は被災地支援などの公益性の高い重要な任務も担っており、自衛官募集事務については、全国の1100を超える市町村が自衛隊へ情報提供を行なっており、福岡市も法令に基づき協力を行なっているものです」

同市では、市民への丁寧な説明を心掛けていくという。

「福岡市では、情報提供を望まない市民の心情に配慮するため、除外申請の手続きを設け、申請をいただいた方は自衛隊へ提供する名簿から除外していることや、これまでの経緯など丁寧な説明を心掛けております。

福岡市ホームページや市政だよりへの掲載、区役所・出張所、市内高校や大学のほか、公民館、市民センターでのチラシやポスターの掲示など、様々な広報媒体を活用しております」

現在、市民からは個人情報の取扱いに関する意見や、除外申請手続きに関する問い合わせを受けていると話した。

「自衛官という職業を就職・転職先として認知していただくことが課題」

自衛隊福岡地方協力本部渉外広報室の担当者は、自衛官の募集に関する案内の送付は重要な活動だと説明する。

「募集に関する案内の送付は、募集対象者やその保護者の方々に、職業としての自衛官を正しく理解していただくための重要な募集活動であり、案内の送付に際しては、地方公共団体から募集対象者に関する情報を提供いただくことが必要です。

地方公共団体から提供を頂いた情報については、募集のためのみに用いることを徹底するなど、関係法令に基づき、個人情報の適切な取扱いに努めてまいります」

これまでは、募集にあたって自衛隊職員が住民基本台帳を閲覧して情報を書き写す作業を行なっており、膨大な時間がかかっていた。

「書き写しには、多大な時間を要しておりました。地方公共団体から募集対象者に関する情報を提供いただくことにより、書き写しに要していた時間を募集業務に充てることが可能となったほか、書き写しによる誤記がなくなりました」

自衛官募集の背景には、人材不足が指摘されている状況もある。

「令和7年度の応募状況及び充足状況については、現在集計作業中のため、ご回答できませんが、令和6年度の自衛官の募集環境は、高校新卒者の有効求人倍率が過去最高の3.7倍を記録する等、引き続き厳しいものとなり、その結果、約15000人の自衛官を採用する必要があるのに対し、実際の採用者数は10000人に達しませんでした。

少子化による募集対象者人口の減少に加え人材獲得競争が厳しいことから、自衛官という職業を就職・転職先として認知していただくことが課題です。

このため職業としての自衛官の魅力について分かりやすく発信するなど、広報・情報発信、募集活動の強化に積極的に取り組んでまいりたいと考えています」

自衛官募集のための個人情報提供に関しては、日弁連が2025年に示した意見書の中で疑義を呈するなど、違法の可能性を指摘する声も少なくない。

国を守り、災害救援活動でも活躍する自衛官は、日本にとって大切な仕事である。自衛官の定員割れが続いている現在、人材確保は重要な課題だろう。そのいっぽうで、個人情報の提供のあり方については今後も議論が続きそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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