マイクロブタの“ぶひまる”と暮らす夫婦。迎えた当初は体重3キロだったぶひまるも、5歳となった今では40キロを超え、夫婦の日常はすっかり“ぶひまる”中心に回っている。
そもそもなぜ“ブタ”を飼うことに決めたのか。豚肉を口にできなかった日々や、スーパーで“ブタの顔”を目にしたときの衝撃など、ぶひまるとの生活の中で生まれた価値観の変化やリアルな“ブタとの暮らし”に迫った。(前後編の前編)
ぶひまるとの出会い
――そもそも、どうしてブタを飼おうと思ったんですか?
夫・しょうへい(以下、しょうへい) もともとブタが好きだったんです。犬や猫はこれまでに飼ったことがあったので、「次はブタを迎えてみたいな」と思うようになりました。
――夫から「ブタを飼いたい」と言われたとき、るなさんはどう感じましたか?
妻・るな(以下、るな) 正直、反対でした。私も動物は大好きで、ずっと犬がいる家庭で育ってきたんですが、犬や猫以外を飼った経験がなかったので、不安のほうが大きくて。でも、私が何か言っても変わらないだろうなというのはわかっていたので、その日の夜に高速を使って東京まで行って、翌日にはブタを我が家に連れて帰ってきました。
――すごい急展開ですね。ぶひまるとはどこで出会ったんですか?
しょうへい 吉祥寺にある、マイクロブタと触れ合える“ブタカフェ”です。開店と同時に入って、たくさんのブタの中からぶひまるを選びました。
――決め手は何だったのでしょうか?
るな とにかく食欲が旺盛だったところですね。他の子は餌がなくても寄ってきてくれるのに、ぶひまるは餌を持っているだけで、どんなに遠くからでも必死になって全力で走ってくるんです。その姿が単純で可愛くて、「この子だな」と思いました。
――ブタのどんなところに魅力を感じていますか?
しょうへい つぶらで優しい瞳ですね。それに鼻の形とか、ブタならではの特徴的な外見にすごく魅力を感じています。
――ブタ以外の選択肢はあったんでしょうか?
しょうへい 僕は最初から“ブタ一択”でした。
るな 私は昔からヤギに興味があったんですけど、今はぶひまるに寂しい思いをさせたくないので、なかなか踏み切れずにいます。
――ブタを迎え入れたとき、周囲の反応はいかがでしたか?
るな 義母は「本当に大丈夫なの?」と少し心配していましたが、私たちの家族や友人はみんな動物好きなので、基本的には温かく受け入れてくれました。
昔から私たちをよく知る友人たちは「この2人ならやりかねないよね」と(笑)。変わった人たちが、変わった動物を飼い始めた、くらいの感覚だったと思います。
体重3キロから42キロに…100キロを超える可能性も…
――実際に迎え入れてから、どのくらい大きくなりましたか?
しょうへい 迎え入れた当初は、500mlのペットボトルくらいの大きさで、全長30センチ、体重も3キロほどでした。それが5歳になった今では、全長90センチ、体重は42キロまで成長しています。
――マイクロブタがそこまで大きくなるとは、想定されていましたか?
しょうへい 正直、ここまで大きくなるとは思っていませんでした。特に2~3歳くらいの頃にはすでに30キロに達していたので、成長スピードはかなり速かった。だからこれから「ブタを飼いたい」っていう人には、「思っている以上に大きくなるよ」ってことを伝えたいですね。
――たしかに、“マイクロ”という名前から小さいイメージがありますよね。
しょうへい そうなんですよ。豆柴とか柴犬くらいのサイズ感を想像される方が多いと思うんですが、実際は違います。そもそもマイクロブタって体重によって呼び方が変わるんです。40キロを超えると「ミニブタ」、100キロを超えると一般的な「ブタ」と呼ばれるようになります。だから、今のぶひまるは正確には「ミニブタ」ですね。
――今後、ぶひまるがさらに成長して100キロを超える可能性もある?
るな どうなるかは、まだわからないですね。
しょうへい 例えば、元サッカー日本代表の前園真聖さんもブタを飼っていましたが、ちょうどマイクロブタブームが始まる初期の頃で、参考になるケースがまだ少ないんです。なので、今後どうなっていくのかは、僕たちも手探りで見守っている状態ですね。
「なぜ食べないの?」への回答
――ぶひまるの存在によって、夫婦の会話や生活はどのように変わりましたか?
るな 本当に子どもがいるような感覚で、無言の時間がほとんどないんです。夫婦の会話も、仕事の話かぶひまるの話か、どちらかが中心ですね(笑)。それくらい今では、ぶひまるがいない生活は考えられないです。
しょうへい 僕たちは田舎に住んでいるんですが、例えば田んぼを耕しているトラクターを見て「足が短くて丸っこいね、ぶひまるみたいだね」なんて笑い合ったり、出かけた先でも「これ、ぶひまる好きそうじゃない?」って話したり。
生活のあらゆる場面にぶひまるがいるので、言ってしまえば、僕たちの人生はぶひまるを中心に回っているような感覚がありますね。
――「ぶひまるをなぜ食べないの?」という問いも動画内で投げかけられていましたが、改めてご回答いただけますか?
しょうへい 家族として迎え入れているので、食べようと思ったことは一度もありません。
るな ぶひまるは“ペット”というより完全に家族ですし、そもそも「ブタ」という感覚もあまりないんです。一人の人間のような存在として見ています。
しょうへい ただ、よく聞かれるのが「豚肉は食べるんですか?」という質問で。そこに関しては、僕たちは普通に食べています。
――その点について、葛藤はなかったのでしょうか?
しょうへい ぶひまるを迎えたばかりの頃は、1カ月ほど豚肉を食べられなかった時期はありました。でも一緒に過ごす中で、自然とまた食べられるようになりました。例えば、魚を飼っている人が寿司を食べないのか、植物を育てている人がサラダを食べないのかというと、そうではないですよね。そこはある意味、合理的に受け止めています。
るな 私は最初から豚肉に抵抗はなかったんですが、同じ種の命をいただいているという意識は強くなりました。その分、フードロスについてはめちゃくちゃ考えるようになりましたね。
――命との向き合い方にも変化があったということですね。
るな そうですね。田舎に住んでいるので、ブタが出荷されていく様子を見ることも多く、胸が痛くなることもあります。だからこそ、目の前にいるぶひまるをより大切にしようと思うようになりました。ぶひまると暮らすことで、犬や猫とはまた違った形で、命の重みやありがたさを感じられるようになった気がします。
しょうへい たしかに食に対する意識は大きく変わりました。例えば、スーパーに行ったとき、冷凍コーナーにブタの顔の部分がそのまま売られているのを見て、「これもぶひまると同じような存在なんだ」と思うと、あまりにショックでなんとも言えない気持ちになるんです。
だからこそ、肉は絶対に残さないと決めていますし、「いただきます」の意味も変わりました。きちんと感謝して食べるようになりましたね。
後編「〈ブタを飼う夫婦〉『僕たちの第一子は“ぶひまる”』第一子誕生予定で注目される“家族のカタチ”と“ブタ会”の意外な実態」へつづく
取材・文/木下未希

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