「好きなタイプは、どんな子ですか?」と聞かれることがあるのだが、ちょっと困ってしまう。いないのだ。

いや、女性に興味がないと言ってるのではなく。どのタイプにも、それぞれ唯一無二の魅力がある。お嬢様タイプ、スポーツウーマンタイプ、元ヤンタイプ……。みんな捨て難い。みんな大好き。

あっ。
でも、このタイプには独特のミステリアスな何かを感じるかも。ちょっと、一味違う。“文学少女”タイプのことです。
本上まなみを彷彿とさせる、柔らかいようでいてトゲがありそうな。今までの私の人生に関わりが無かったタイプだけに、妙に興味が湧いてしまう。

ただ、私は彼女らの事をよく知らない。
そして、知る手立てもない。知りたい!
……なんて悶えてたら、最高のテキストを見つけてしまいました。見逃せないです。株式会社アストラが7月17日より発売している『文学少女図鑑』(税抜き1,600円)は、文学少女にスポットを当てた新感覚の写真集。

と言っても、そこにはスパイスが効かされている。そして、並々ならぬ労力が注がれている。

大変だったのは、モデル探しである。既に撮影者の周囲にいた“文学少女”たちから手が挙がり、半分ほどの撮影は済ませていた。しかし、残りが問題。「街で黙々と本を読みふける女の子に声をかけ、上手く行けば写真を撮らせてもらおう」という流れを目標に、製作が行われたらしいのだから。
「たくさんの女の子に声をかけましたが、撮影まで至ったのはごく僅かでした……」(同社・担当者)
しかし、頑張った。この図鑑には、文学少女51人の麗しいショットが掲載されている。
それも“現代文学系”、“古典・文豪系”、“外国文学系”などのジャンルにカテゴライズ分けされて。

そして、もう一つ。これが知りたい。彼女らが大好きな本とは、何ぞや!? そこで、彼女らのマイベストな3冊を聞き出し、愛あふれる感想まで寄せてもらっている。
「著者であり撮影者でもある萩原收さん曰く、『以前から、電車の中で本を読んでいる女の子を見ると、何を読んでいるのだろうと気になっていた』らしいです。その思いが、この本製作のきっかけとなっています」(担当者)

皆さん、街行く“文学少女”の嗜好って気になりません? 実は同書による聞き込みのお陰で、興味深い傾向が浮き彫りとなったのです。

「なぜか、三島由紀夫と坂口安吾の人気が高いんです。あと、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を選ぶ子も多く、『文学少女図鑑』の中でも3人の少女がセレクトしています。あんな分厚い本なのに、一番人気なんですよね(笑)」(担当者)
もっとポップな本が人気かと思いきや、分厚い本と巨匠の作品に人気が集中。さすがは、文学少女だぜ。

感心しているだけじゃいけない。我々も、ウカウカしてられないだろう。
同書では、「電車で隣に座った男性が何を読んでたらクラッとする?」という気の抜けないアンケートを彼女らに行っているのだ。
では、質問に対するアンサーをチラッとだけ見てみよう。思いの外、可愛らしいから。
「なんか分厚い本を読んでたら、もうかっこいいです」
「カバーが布製だったら!」
「電車の中でイケメンが『BIG ISSUE』を読んでいたら、キュンとします!」
「自分が今読んでいる作品と同じものを読んでいる方は、話しかけたくなります」
なるほど、一味違う。コメントだけで、虜になっちまいそうだな……。

そして、やはり注目は文学少女の写真たち。本人の一番好きな本とのツーショット写真が、これでもかと掲載されているからタマらない。
「いきなり声をかけると警戒されてしまいますが、『本が好きですか?』と切り出せば、文学少女たちは不思議とスイッチが切り替わるようです。普段は恥ずかしがり屋でも、『“カワイイ”で出版界を元気にできるなら!』と頑張ってくれた子も多いのでは」(担当者)
そうだったのか、“文学少女”たちよ。……いじらしいな、オイ!

ちなみに同書、かの中森明夫氏(アイドル評論家)が大プッシュしており、勢いあまって「文学少女たちよ!」なるタイトルのコラムも寄稿してくれているという。
「大好きな小説をカミングアウトするのは、さながら“心のヌード”だ。そう、少女は本を読みふけっている姿が一番エロティックだと思う」(「文学少女たちよ!」より)
おぉ、なるほど。言われてみれば、そんな考え方もあるな……。赤裸々な写真集だよ。

才色兼備な彼女たちの写真を愛でるも良し、等身大の女の子が勧めるブックガイドとして活用するも良し、好きな本の傾向からどんな子なのか想像して楽しむも良し。
文学少女のアタマの中まで覗かせてくれる、“文学的な写真集”の登場です!
(寺西ジャジューカ)