東京でフランスを感じられる地区といえば神楽坂。仏政府機関アンスティチュ・フランセ東京やフランスとの縁が深い暁星学園があり、以前まで幼児~高等教育課程を備えたフランス人学校・東京国際フランス学園も立っていた。
フレンチレストランも多く在日フランス人が集まる地域だ。

じつはもう一つフランスを感じられる場所がある。それは渋谷。ここはパリに本店を持つ有名店の支店が多く集積している。今月16日に東急東横線が都営副都心線に接続し注目を集める渋谷で「フランス」の巡り方をまとめてみた。

地下5階に東横線の入口ができた渋谷ヒカリエ。
ここには「ピエール・エルメ」「ル・パン・ドゥ・ジョエル・ロブション」「サダハル・アオキ」「マリアージュ・フレール」という、フランスを代表する店舗が軒を連ねる。

「ピエール・エルメ」にとって日本は、そのキャリアに深く関係する国の一つだ。ピエール・エルメ氏が初めて店を持った場所が千代田区にあるホテル・ニューオータニ東京。仏老舗菓子店「ラデュレ」でシェフ・パティシエを務めていた同氏が独立し、現在の名声を築く足がかりになったのが同店だった。現在、世界で27店舗を持ち都内にはパリと同数の8店舗を展開している。渋谷周辺はヒカリエ内と日本初の路面店である青山店の2店舗ある。


「ル・パン・ドゥ・ジョエル・ロブション」は仏レストラン「ジョエル・ロブション」が立ち上げた初のパン専門店。同レストランは各国に店舗展開しているが、パンに特化した店舗は世界でも渋谷のみだ。なお渋谷の隣、恵比寿ガーデンプレイス内にはシャトー・レストランがある。

「サダハル・アオキ」の青木定治氏はフランスで最も有名な日本人パティシエだ。マカロンを主に、それまでほぼ使われることが無かった抹茶を仏パティスリー界で素材の一つとして認知させた。日本では都内に5店舗(パリは4店舗)を展開。
大判焼きの生地でチョコレートマカロンを包み焼いた「東京焼きマカロンショコラ」はパリでは売られておらず、渋谷の店舗でしか食べられない。

「マリアージュ・フレール」はご存知フランスを代表する老舗紅茶店。現在、フランス、ドイツ、英国、日本の4カ国に35店舗持つが、そのうち都内には10店舗あり(日本国内全体では15店舗)、渋谷にはヒカリエと西武渋谷の2店舗ある。

渋谷で感じるフランスはヒカリエ内だけではない。宮益坂下にはパリ18区モンマルトルに本店があるパン屋「ゴントラン・シェリエ」が店舗を構えている。渋谷にある店舗はシンガポールに続き海外展開した日本1号店。
東京限定で焼かれている商品もあり日本でしか味わえないパリがある。

東横・副都心線の渋谷駅がある東側からJR線をくぐり西側に目を転じてみるとパン屋「ヴィロン」、カフェ「ドゥ・マゴ」という2つのフランスがある。

宇田川町にある「ヴィロン」はフランスにある店の直営店ではないが、仏シャルトルにある同名の製粉会社ヴィロン社の小麦粉「レトロドール」を直輸入しパンを焼いている店だ。「レトロドール」はフランスのパン屋で使われる銘柄の一つ。パリで行われた2012年のバゲットコンクールでは2位、4位、8位に輝いた店が仏ヴィロン社の粉を使っていた。

渋谷Bunkamura内の「ドゥ・マゴ」はパリ、サンジェルマン・デ・プレにある老舗カフェ「ドゥ・マゴ」の海外初提携店だ。
「ドゥ・マゴ」とは「2体の人形」のこと。パリ店内に飾られた中国人形が名前の由来になっている。サルトル、ピカソ、ヘミングウェイなど多くの芸術家・文化人が通ったことでも知られている。
(加藤亨延)

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