子どもの頃、クラスには「巨人ファン」と同様に「アンチ巨人」が大量にいた。

自分も後者の一人だったが、きっかけは「父親がアンチ巨人だったこと」「好きなテレビ番組が巨人戦で潰れること」など。

そのため、万年リーグ5~6位の成績にもかかわらず、巨人を得意のフォークで斬ってくれた横浜大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)・遠藤一彦投手のファンになり、大洋ファンになった経緯もあった。
我が家では、ひいきのチームはそれぞれ異なるものの、「巨人の悪口」が親子で盛り上がる共通の話題だったが、そういった親子は日本に多数いたことと思う。

でも、「アンチ巨人」って、今も健在なのだろうか。長年のアンチ巨人は根強くいると思うが、新規のアンチ巨人は少ない気がする。自分はいつの間にか「アンチ巨人」熱が冷めてしまったし、巷でも「アンチ巨人」を公言する人にあまり出会わない。

かつての「アンチ巨人」のきっかけや理由、現状について考察してみたい。


●親の影響→親の影響でアンチ巨人になる子は、昔ほど多くない印象がある。そもそも子どもの親世代(30代~40代)には「メジャーリーグのほうが面白い」という人や、「野球よりサッカー」という人も多く、視線が外に向けられているせいもあるだろう。

●「好きなテレビ番組が巨人戦で潰れる」→昔に比べ、テレビ放送されるのが巨人戦ばかりでなくなっている。また、毎日ゴールデンにアニメ番組があった昔と違い、そもそも子どもがテレビをさほど観ていないこともある。
さらに、日本テレビの発表によると、2014年度のプロ野球巨人戦中継は、地上波で放送する巨人主催試合のデーゲーム14試合のうち全国ネットは2試合のみに激減。ナイターは地上波の全国ネットでは6試合放送予定。
つまり、東京ドームでの巨人戦は、昼夜あわせて地上波では8試合しか全国ネットで放送されないわけで、昨年度は22試合だったことを考えると、激減しているのだ。

●「ナベツネ」という存在→社会人・大学野球の選手がドラフトで「逆指名」できるようになったり、「フリーエージェント」で他球団から良い選手を集めたりできるようになったりと、都合の良い制度を導入してきた讀賣巨人軍オーナー・ナベツネ(渡邉恒雄)が「裏金問題」でオーナーを辞任。以降、アンチ巨人をやめたという人も(その後すぐ会長になり、震災時には予定通りの開幕を主張して非難を浴びるなど、相変わらずだが……)

●「金満」→93年のFA制度導入後、落合博満、広澤克己、江藤智、小久保裕紀、ローズ、ペタジーニなど、他球団からスター選手ばかりをかき集めることにより、「巨人はカネで他球団から良い選手を集めているんだから、強くて当たり前」と言われてきた。さらに、「逆指名」で上原浩治、高橋由伸、阿部慎之助などの「即戦力」も多数獲得。しかし、近年は「育成枠」から良い選手が多数育っており、「生え抜き」率が上がっていると言われる(※投手は生え抜き率が低いが、野手は高い)。

●「江川事件」「KK(桑田・清原)事件」→ドラフトをめぐり、巻き起こった巨人の「黒い事件」。
往年の野球ファンは誰もが知っているが、若い人には知らない人ももはや多いだろう。

●「徳光」という存在→熱狂的な巨人ファンとして、他球団に対する数々の暴言で多くの怒りを買ってきた元・日本テレビアナウンサー「徳光和夫」という存在。現在はレギュラー番組も消滅し、あまり見かけなくなっている。

●巨人じゃなく「巨人ファン」が嫌い→「巨人が強いことで、自分も強いと錯覚し、エラそうな態度になる」など、巨人ファンの「性質」が嫌いという人も。また、かつてはとにかく人数が多かったため、単純に「多数派アンチ」の人もいた。今はひいきのチームが以前より分散し、巨人にばかりファンが集中していない印象があるため、アンチも生まれにくい気がする。


●「ライバル」として→阪神ファンなどを中心として、「ライバル」としてのアンチ巨人は、今も健在だろう。

ところで、本来、「嫌う」「憎む」というネガティブな感情で盛り上がるのって、あまり健全ではないと思うのだが、残念ながら個人的には「アンチ巨人熱」が冷めてきてから、野球熱そのものも落ち着いてしまった。
かつてのクロマティのような「愛嬌ある名悪役」(?)にカッカしながら、下品な罵声をテレビにむかって浴びせ、家族で盛り上がっていた日々が、少し懐かしい面もあるのだった。
(田幸和歌子)