「さるかに合戦」は誰もが知っている昔話だと思う。
持っていたおにぎりと、さるの柿の種を交換したカニ。

カニが植えた柿は大きく育ち、実がなる。ずる賢いさるはその実を自分だけ食べて、カニに堅い柿をぶつけて殺してしまう。
カニの子供と、栗・臼・ハチ・牛糞が、さるを殺して仇討ちをする。
両者共に死んでいる。壮絶な話だ。

改めて最近の絵本を調べてみた。

平成以降になってからは「カニは柿をぶつけられて怪我をする」というものが増えている。えっ、怪我だけ?
牛糞は出ない。サルを懲らしめた後に仲良くすごす。「合戦」の文字を抜いて、タイトルは『さるかにばなし』に……などなど改変がされている。
うーむ。どうも納得がいかない。


「さるかに」は、さるがカニをいかに攻撃したかを再現したアプリ。
iPhone版
Android版

作っているのは、3600万ダウンロード突破のアプリ「なめこ栽培キット」や、その元ネタである「おさわり探偵小沢里奈」などでお馴染みのBEEWORKS GAMES。
「なめこ」を手がけたチームがつくったアプリ「さるかに」の狂気と絶望

なかなかのサル構えである。カニを騙して柿をぶつけて殺しそうな顔をしている。
起動すると「アヴェ・マリア」が流れる。さるの狂気が感じられる。


プレイヤーはカニになって、さるの投げてくる柿をひたすら避ける。
カニだから左右にしか動けない。
上部に「!」が出てきて、そこから柿が落ちてくる。ちなみにゲーム画面にさるは出ない。
カニは反撃すらできない。画面をタッチして避けるだけだ。

「なめこ」を手がけたチームがつくったアプリ「さるかに」の狂気と絶望

この柿がとにかくでかい。カニよりでかい。
下が落ち葉なので、柿は地面に落ちた後、ランダムな方向にワンバウンドする。
そうすると画面全体がズシリと揺れる。ものすごい重量感だ。

柿は、さるからしたら、手に握れるほどの小さいものだろう。

しかしカニから見たら、自分の身体ほどに大きな凶器なのだ。
これが上から降ってきて、自分が横にしか移動できない時の恐怖といったらない。

20個を超えたあたりから柿の降ってくるスピードがとんでもなく早くなる。
昔話だと、カニは死んだ時にショックで子蟹を産んだそうだ。
その気持ちが、体感できるくらいに、画面が柿でうめつくされる。絶望的だ。

BGMは悲壮感漂う合唱曲で、なんとなく「さーるーかに」と言ってるように聞こえる。
「なめこ」を手がけたチームがつくったアプリ「さるかに」の狂気と絶望

柿につぶされたカニの末路である。
無残。実に無残だ。

本当にシンプルで、ただカニを左右に動かすだけのゲーム。
なのにやたらカニの動きの質感や、柿の重みの再現がうまい。「なめこ栽培キット」のニュルルスッポン感を生み出しただけのことはある。
おそらくギャグとして作ったであろう、荘厳な音楽と実写のさるの組み合わせ。
これが意外にもマッチしている。カニとさるの間の生死をかけた因縁が、どれだけ深かったかを感じさせる迫力がある。
絵本で「仲良く暮らしました」なんて言っていちゃいかんのだ。

最期を遂げたカニが、とても美味しそうなのがいい。
人間という名のさるが一番残酷なのでした。
めでたしめでたし。

そんなゲームです。無料です。

(たまごまご)