『元祖!大食い王決定戦』のMCの話だ。
「MC交代」の3パターン
中村ゆうじの後継者について語る前に、「番組のMC交代」のパターンについて整理しておきたい。番組は存続するがMCが交代する、という状況は過去に例がいくつもあり、その人選には大きく分けて3つのパターンがある。
(1)同キャラ・同ポジションから人選する
最も一般的なのは芸能界の同キャラ・同ポジションから新MCが選ばれるパターン。
例えば『王様のブランチ』は寺脇康文から谷原章介へ「バラエティ対応できる俳優枠」の中で交代が起こった。『ニュースステーション』(久米宏)から『報道ステーション』(古舘伊知郎)も「元局アナ、フリー後にバラエティで活躍、報道志向」という共通点がある。ショーンKが登板するはずだったフジの新番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』が新たにモーリー・ロバートソンを起用したのも、同キャラ・同ポジションの考え方からだと思われる。
ただ、このパターンには様々なしがらみから「同じ事務所から選出する」というオプションがつくことがある。
島田紳助が2011年に引退した時は、『開運!なんでも鑑定団』『人生が変わる1分間の深イイ話』『オールスター感謝祭』のMCが今田耕司に引き継がれ、『行列のできる法律相談所』も同じ吉本興業の芸人でMCを続けている。
(2)モデルチェンジする
番組リニューアルに伴う変更や、やんごとなき事情で前MCが降板した場合は、前MCとキャラが異なる人物を迎えて新たなスタートを切るケースがある。また、前MCの功績が大きすぎる場合も、中途半端に同じ路線をたどるとどうしても比較されてしまうため、あえて新MCで別路線を図ることもある。
『ザ・ベストテン』(久米宏→小西博之→松下賢次→渡辺正行)、『探偵!ナイトスクープ』(上岡龍太郎→西田敏行)、『パネルクイズ アタック25』(児玉清→ABC浦川アナ→谷原章介)など、長寿番組の中にはMCのモデルチェンジが成功して存続しているものも多い。20年以上続く『開運!なんでも鑑定団』もこの春に石坂浩二→福澤朗のモデルチェンジが起こるが、福澤朗へのチェンジは『アメリカ横断ウルトラクイズ』(福留功男→福澤朗)『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』(逸見政孝→福澤朗)のように短命に終わりがちなのが気になるところ。
モデルチェンジの中で異色なのはEテレ『すイエんサー』。
(3)レギュラーがMCに昇格する
外から新MCを迎え入れるのではなく、番組レギュラーが新MCへ昇格するケースもある。番組の進行が頭に入っているので引き継ぎのコストがかからず、番組の空気も保ちやすいメリットがある。
代表例は『笑点』だろう。
中村ゆうじの後継者はどのパターンか?
では『元祖!大食い王決定戦』の中村ゆうじの場合はどうか。
通常なら(1)同キャラ・同ポジションなのだが、中村ゆうじの大食い実況は27年のキャリアがあり、おいそれと真似できるものではない。選手が食べ続ける45分間(決勝は60分間)、選手の状態や食べた皿の数、周囲の状況などを、選手の後ろで立ったまま実況して盛り上げるスタイルは体力をとても使う。進行やジャッジなど、実況以外に気を配る部分も多い。
さらに、中村ゆうじは素人の選手たちに「あだ名」をつけることでキャラ付けをし、ストーリーを作る役割も担う。今では芸名になっている「ジャイアント白田」や「ギャル曽根」も、元々は中村ゆうじがつけたあだ名だ(ちなみに「さかなクン」も、『TVチャンピオン』の魚通選手権で中村ゆうじが命名したもの)。
中村ゆうじと同じMCを期待して、同キャラ・同ポジションを起用するのはハードルが高い。功績が大きすぎるため、新MCは比較もされるだろう。となれば(2)モデルチェンジの策を取りたくなるが、「大食いの実況」という独特のスキルが求められるMCをスムーズに引き継ぐなら(3)レギュラーからの昇格が一番無難ではないだろうか。
『元祖!大食い王決定戦』には地方予選や新人戦があり、中村ゆうじ以外の人物がMCを務めることがある。
地方予選などで大食い実況の経験を積んでいるのは新MCへの大きなアドバンテージとなる。中村ゆうじが局側に卒業を申し入れたのは2014年秋とのこと。卒業を踏まえ、2016年1月9日の放送が新MCへのオーディションも兼ねているとしたら、彼らの中から新MCが誕生する可能性が高い。
……と、次のことばかり気にしてしまったけど、まだ中村ゆうじのMCは1回残っている。最後の勇姿は4月3日放送の『元祖!大食い王決定戦〜爆食女王新時代突入戦〜』。有終の美をしっかり見届けたい。最後まで食って、食って、食いまくるぞーっ!!
(井上マサキ)