6月5日、梅雨の中休みでカラッと晴れ上がったその日、日本武道館でAKB48とその姉妹グループであるSKE48、NMB48、HKT48の研究生によるコンサート、題して「AKB48グループ研究生コンサート 推しメン早い者勝ち」が開催された。

「研究生、集合~!」
研究生最年長・松村香織(SKE48)の号令とともに、AKB48グループの研究生たち、総勢103名(すでに正規メンバーへの昇格が決まった13人を含む)がステージ上に一斉に集まる。
そして円陣を組んでの「いつも感謝! 冷静に、丁寧に、正確に。みんなの夢がかないますように!」という掛け声でコンサートは始まった。

この春、「終身名誉研究生」の肩書を得たばかりの松村は、AKB48の1期生で現在は研究生を務める峯岸みなみとともに、今回のコンサートで後輩たちをとりまとめるポジションにあった。2人はコンサートを前にお互いをよく知るため、頻繁にメールを交わしたといい、松村が大先輩である峯岸に相談することもあったとか。事前のPRにも余念がなく、グーグルプラスでは、各グループの研究生たちに松村自らカメラを向けて紹介する動画も配信された。

こうして迎えた本番のオープニング、峯岸の声は枯れていた(その後持ち直したが)。
そこからは彼女がこのコンサートにかける意気込みが垣間見えた。ただし主役はあくまで若い後輩たちだからと、「私たちのことは気にしないで」とコンサートの進行役を務めた2人。それでも、曲のあいまのトークのなかで後輩らをうまくフォローするのはさすがだった。おそらく彼女たちがいなければ、コンサートの進行は難しかったかもしれない。

■ルックスの完成度が高く、物怖じしない研究生たち
今回のコンサートに出演したうち、23歳の松村と20歳の峯岸以外は全員10代。最年少はNMB48の嶋崎百萌香(ももか)で、2001年生まれの12歳だ。


それにしても、観ていて思ったのは、いまの子たちは早くからルックスができあがっているなーということ。AKB48の岡田奈々(15歳)、SKE48の北川綾巴(りょうは。14歳)らの美少女ぶりにはドキッとしてしまったし、この日唯一のソロ曲「FIRST LOVE」を歌った小嶋真子(15歳)も、抜群のアイドル性を持つとの評判を納得させるに十分だった。いずれもAKB48結成当時の前田敦子や板野友美などと変わらない年齢だが、先輩たちはここまで垢抜けてなかったぞ(失礼)。

ルックスや歌、ダンスばかりではない、物怖じせず特技を披露したり自己アピールしてのけるメンバーの多いこと。その特技もさまざまで、たとえばNMBの川上千尋はフィギュアスケートをやっていたことから、いくら回転しても体がふらつかないという特技を披露。
あるいは、中等師範免許を持つほどの書道の腕前を持つHKTの山田麻莉奈は、「豚骨」(地元が博多だけに)という力強い字を見せてくれた。

これら特技は王道といえるが、なかには「日本国憲法」の条文を暗唱できるAKBの内山奈月や、「ミカン細工」と称して、その場でミカンの皮をむいてクマをつくってみせたNMBの山尾梨奈のようにちょっと変わった特技を持つメンバーもいた。変わっているといえば、SKEの竹内彩姫(さき)は、中日ドラゴンズの公式チアリーディングチーム「チアドラゴンズ」のキッズメンバーというやや異色の経歴の持ち主。今回のステージでは、松村の歌う「燃えよドラゴンズ」に合わせながらチアダンスを披露した。まさか武道館で「燃えドラ」を聴くとは思わなかったがね。

プロ野球がらみでは、正規メンバー(AKBチームB)への昇格が決まっている大森美優は、巨人などで活躍した大森剛の娘である。
コンサートでは後半の昇格メンバーコーナーにて、同時昇格となった佐々木優佳里、平田梨奈らとともに登場、AKBの最新シングル曲「さよならクロール」などを披露した。このほか、AKBの15期研究生がお披露目されたり、はたまたこの日、16歳の誕生日を迎えたAKBの北澤早紀のために、サプライズでバースデーケーキが用意されたりと、コンサートはてんこ盛りの内容で、あっというまに3時間がすぎた。

■HKT48研究生が“台風の目”となる予感
ステージで続々と紹介された研究生のなかでも、ひときわ私の目を惹いたのがHKT48の田島芽瑠(たしま・める)だ。HKTのファーストシングル「スキ!スキ!スキップ!」で研究生ながらセンターに抜擢されたほか、今春から始まったNHK-BSのキャンペーンのため結成された「AKB48・BS選抜」では、HKTから先輩の指原莉乃とともに選ばれている。

研究生コンサートでも、各グループによるシングルメドレー対決のなかで、田島をセンターに「スキ!スキ!スキップ!」が披露された。このとき彼女から、アイドルのオーラがビンビン伝わってきた。
センターに抜擢されたのも納得である。

また、ユニット曲「7時12分の初恋」を歌ったあとのトークでの一幕も衝撃的だった。このとき、田島は大好きなシロクマのぬいぐるみ、その名も「ホワワちん」を持って登場。それをMCの2人にとりあげられた田島は、「私、(ホワワちんに)キスしちゃった」と言う松村の頬に、いきなりキスしてみせたのである。その一瞬のできごとに、ただあっけにとられてしまった。芽瑠、おそろしい子……!

思えば、AKBとSKEとNMBはグループ内ですでに3チーム体制が確立し、研究生は昇格とともに各チームへ振り分けられるようになっているが、HKTだけはまだチームHしか存在せず、いずれは現在の研究生から新たなチームがつくられることは間違いない。
そのとき、田島のほか、彼女とともに大型ルーキーと目される朝長美桜(ともなが・みお)や渕上舞、あるいはコンサートでもウザキャラぶりを発揮していた谷真理佳(その滑りっぷりやいじられ方は“指原イズム”の後継者と呼ぶにふさわしい)なども入れてチームを組めば、すごいものになりそうだ。彼女たちが今後、48グループの台風の目となる可能性も十分にあると思う。

さて、コンサートは、客席からの“研究生コール”に応えアンコールへとなだれこみ、「LOVE修行」「ファーストラビット」に続き、研究生全員のニックネームを歌詞に織りこんだ「レッツゴー研究生」(AKBチームBの「ワッショイB!」をアレンジしたもの)が披露された。103人の名前が呼ばれていくさまは圧巻で、観衆の興奮はピークに達したまま終演となった。

公演の数日前、ステージの背にあたる「背中席」(通常のAKBコンサートでは、見にくい位置にもかかわらずすぐに完売する)の約1300席が埋まらず、AKBの公式ブログを通じて、松村香織と小嶋真子がファンに向けていま一度チケットの購入を呼びかけたりもした。だがフタを開けてみれば全席が完売。私も武道館には何回かライブを見に来ているが、終演後、九段下の駅に向かうまで人混みでなかなか動けないという経験は初めてだったかもしれない。

じつは、ここしばらく、推しメンが卒業したり、年齢的にも30代半ばをすぎたこともあり、アイドルファンを続けるのもそろそろ潮時かなと感じることもしばしであった。しかし今回のコンサートを観て、気が変わった。とりあえず、ここで観た子たちがブレイクする日まではアイドルファンを続けようと思う。うん、とりあえずは。(近藤正高)