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 「無限の猿定理」というものがあります。


 「猿がでたらめにタイプライターを叩き続けても、長い時間をかければシェイクスピアの作品を執筆できる」という例え話からこの名がつけられた、確率論の思考実験です。


 これを「現実にやったらどうなるか?」と思い立ち、実際に「無限の猿定理シミュレーター」としてWeb上に公開してしまう猛者が現れました。


■ “サーバーに住む猿”が30秒に1文字を生成する「無限の猿定理シミュレーター」

 この世の“すべて”の俳句を網羅した「全俳句データベース」をはじめ、ゲームや謎解きなどユニークなコンテンツを手がけてきたXユーザーの「ほり」さん。


書き出し一文完成に9億年!?思考実験「無限の猿定理」再現サイトの狂気とロマン
ほりさんの投稿


 このほど公開した「無限の猿定理シミュレーター」はその名の通り、「無限の猿定理」の思考実験を実際にやってみる試みです。


 オリジナルと大きく違うのは、日本人には比較的馴染みの薄いシェイクスピア作品ではなく、太宰治の「走れメロス」の完成を目指しているという点です。


 「無限の猿定理シミュレーター」は30秒に1回、ランダムに1文字を生成。


 それを繰り返していけば、理屈の上では「メロスは激怒した」から「勇者は、ひどく赤面した」までの「走れメロス」全文が生み出されることになります。


 30秒に1回なのは、ほりさんのシミュレーターが「内部に猿が住んでいる」という世界観をもっているため。実際の猿は常にタイプライターの前にいて打鍵し続けるのではなく、遊んだりどっかに行ったりするだろうという推定から、これだけの間隔をもうけているとのことです。


書き出し一文完成に9億年!?思考実験「無限の猿定理」再現サイトの狂気とロマン
サーバーに住む猿


 本当は30秒に1回ではなく完全にランダムの秒数で文字を生成するようにしたかったそうですが、実装が大変になるため断念したのだとか。

■ 有名な書き出しの一文「メロスは激怒した」を生成するのにかかる目安は9億年!

 シミュレーターを開くと生成された文字列が並んでいますが、そこにあるのは「走れメロス」どころか日本語としても意味をなしていない文章。


書き出し一文完成に9億年!?思考実験「無限の猿定理」再現サイトの狂気とロマン
無限の猿定理シミュレーター


 文字列の下部にある「本日の書き出し最長一致」を確認してみれば、記事執筆時点(2026年8月17日11時11分時点)での最長一致は「めろ」まで。主人公の名前にすら辿り着けていません。稼働開始からこれまでの最長一致ですら「めろす」までです。


書き出し一文完成に9億年!?思考実験「無限の猿定理」再現サイトの狂気とロマン
書き出しの最長一致は「めろす」


 目安としては「メロスは激怒した」が完成するまでに約9億年。しかしほりさんいわく「確率の世界なので今日完成するかもしれませんし、9億年経っても完成しないかもしれません」とのこと。


書き出し一文完成に9億年!?思考実験「無限の猿定理」再現サイトの狂気とロマン
書き出しの一文で9億年


 ちなみに次の一文も含めた「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した」が完成するまでの目安を調べてみると、約30不可思議年でした。9億年が可愛く見えてきます。全文一致ともなると、出力された数字の桁数を数え上げるだけで日が暮れそうです。


書き出し一文完成に9億年!?思考実験「無限の猿定理」再現サイトの狂気とロマン
書き出しの二文で30不可思議年


 ページ左側からは「見つかった言葉コレクション」なども確認することができます。これはこのシミュレーター内で生成された「走れメロス」に登場する単語の一覧ですが、進捗は28/80。書き出し一文の一致に9億年かかることを考慮すると「意外と見つかってるかも?」と思えてしまいますが、間違いなく感覚が麻痺しているのだと思います。


書き出し一文完成に9億年!?思考実験「無限の猿定理」再現サイトの狂気とロマン
登場単語80個のうち28個を生成済み


 ちなみになぜ「走れメロス」にしたのかについては、上述した「シェイクスピア作品だと日本人に馴染みがないから」にくわえて、「書き出しを多くの人が知っているうえ、主人公名から入るのが素晴らしい」「邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)、セリヌンティウスなど途中で出てくる言葉もおもしろい」といった理由があるそうです。

■ 実は1度断念している「無限の猿シミュレーター」2度目の今回は……?

 ほりさんが「無限の猿シミュレーター」に挑戦するのは今回が2回目。もともと「猿がタイプライターを叩くのを見守るのは面白い」という理由から挑戦を決め、1回目は物理的なサイコロで文字を生成する仕組みを作りました。


書き出し一文完成に9億年!?思考実験「無限の猿定理」再現サイトの狂気とロマン
無限の猿定理マシン


 しかし自分だけの世界に閉じてしまうことや、アナログ機械のために持続が難しいこと、そして「サイコロを振る音がうるさい」などの理由で断念。


 Web上でなら上記の課題がクリアできると判断し、2度目の挑戦に踏み切りました。


 「私がレンタルサーバー代を払い続ける限りはずっと続くし、みんなとそれを共有することができ盛り上がります」(ほりさん)


 ちなみに、ほりさん自身が亡くなるとレンタルサーバー代を払う人がいなくなり、継続できなくなってしまうため、「そのときが来たら誰かに相続します(たぶん)」と話しています。


 シミュレーターのページのトップには「太宰治『走れメロス』の全文と一致する日が来るまで、この実験は終わりません」との記述が。溢れ出る狂気に妙にゾクゾクさせられます。


 人類が滅びた後の世界でぽちぽちと「走れメロス」の執筆をし続ける“サーバーの中の猿”を想像すると、ロマンが止まりませんね。

<記事化協力>
ほり さん(@horicun)
「無限の猿定理シミュレーター」


(ヨシクラミク)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By ヨシクラ ミク | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026082102.html
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