先週の日経平均は週間の値幅が3,500円を超える荒い値動きの中、前週末比1,187円安の6万8,557円で取引を終えました。中東情勢の緊迫化やAI・半導体関連の過熱感から一時売りが先行したものの、週末にかけて米国の対話姿勢や半導体大手の投資計画を背景に買い戻しが入っています。

今週は米物価指標や大手金融・半導体企業の決算を控えています。


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落ち着かない値動きが続いた先週の日経平均

 先週末10日(金)の日経平均株価は6万8,557円で取引を終え、前週末終値6万9,744円からは1,187円安となりました。また、週間の値幅(高値と安値の差)は3,565円となり、引き続き株価の振れ幅が大きい週となりました。


<図1>日経平均の5分足チャート(2026年7月6日~7月10日)
週間で3,565円動いた値動き荒い日経平均…当面の「上値めど」と「下値めど」は?【アナリストが解説】
出所:MARKETSPEEDII

 図1は先週1週間の日経平均の値動きを5分足チャートで捉えたものです。


 あらためて、先週の値動きを振り返ると、週初6日(月)の取引開始直後に7万円台を回復する上昇を見せたものの、結局その時につけた7万0,384円が週間の高値となりました。以降は売りに押される展開に転じ、安値引けとなった8日(水)の終値6万6,819円が週間の安値となりました。


 もっとも、週末にかけては買い戻しが入り、9日(木)と10日(金)の両日で1,700円超の反発を見せたものの、7万円台を回復するには至らず、週間の取引を終えました。


 このように、週末にかけて値を戻す展開は、日経平均に限らず、東証株価指数(TOPIX)や東証スタンダード指数、東証グロース250指数でも見られました。


<図2>国内主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年7月10日時点)
週間で3,565円動いた値動き荒い日経平均…当面の「上値めど」と「下値めど」は?【アナリストが解説】
出所:MARKETSPEEDIIデータを基に作成

 そのため、今週の株式市場は、先週の週末にかけて見せた株価の反発基調を引き継げるかが注目点になります。


グロース優位が強まるかがカギ

 そこで、先週末の株価反発の背景についても整理していくと、「不安がくすぶりながらも楽観が続く中東情勢」と、「好材料と成長ストーリーで持ち直したAI・半導体相場」の構図が透けて見えます。


 まず、前者の中東情勢についてですが、先週イランがホルムズ海峡を通過中の船舶に攻撃し、これに対して米国がイランに報復攻撃を行ったことが報じられ、先週前半の株式市場は売りで反応しました。


「米国とイランの交渉期限となる8月中旬までは小康状態が保たれるだろう」という市場の前提が揺らぎ、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)などの原油先物市場が上昇。それに伴ってインフレ警戒が高まったことがネガティブ材料となりました。


 とりわけ、イランでは9日(木)まで故ハメネイ師の国葬を行っていた最中にも関わらず、軍事衝突が生じてしまったこともサプライズになったと思われます。


 ただその後は、トランプ米大統領が自身のSNSに「イランから対話を継続するよう要請があり、同意した」と投稿したほか、「停戦は終わったとイラン側に明確に伝えた」と発言したことで、再び楽観的な見通しが続いたことが安心感につながりました。


 次に、後者のAI・半導体相場についてですが、週初は高値警戒感の売りや、サムスン電子が7日(火)に公表した業績速報の内容が概ね好調だったにも関わらず、株式市場は下落で反応しました。この初期反応を見せたことで、AI・半導体関連企業の業績に対する期待値のハードルの高さを認識させたことが売り材料となっていました。


 しかし、週末にかけては好材料が相次ぎ、買いを誘いました。まず、「中国政府が限定的に国内のAI企業に対し半導体購入を認める方針を示した」と報じられました。また、半導体メモリーのマイクロン・テクノロジー(MU)が米国の半導体サプライチェーン(供給網)を強化するために最大30億ドル規模の投資を行うと発表しました。


 さらに、メタ・プラットフォームズ(META)が社内メモで自社設計半導体の生産を始め、計算能力を現在から倍増させる計画が示されたことや、10日(金)には韓国のSKハイニクス(SKHY)が米国市場へ預託証券(ADR)上場を果たすなどといったニュースが続きました。


 また、別のレポートでも紹介しましたが、主要な半導体関連銘柄で構成される米SOX指数が、弱気相場入りの目安とされる「直近の高値から20%安」の水準近くまで下落していたこともあり、AI・半導体関連銘柄に買い戻しが入りやすかったことも、週末の株価反発につながりやすかったと考えられます。


 最近までバリュー株に向かっていた資金が再びAI・半導体関連銘柄を中心とするグロース株に向かうのかが、今週の焦点になりそうです。


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今週の主な予定~「企業決算と金利の組み合わせ」がカギ

 そんな中で迎える今週ですが、海外を中心に比較的イベントの多い週となります。


 米国では6月分の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)をはじめ、同じく6月分の小売売上高が公表されるほか、決算発表も本格化し、JPモルガン・チェース(JPM)やゴールドマン・サックス・グループ(GS)、モルガンスタンレー(MS)といった大手金融機関の決算が予定されています。


 また、決算絡みでは、半導体製造装置のオランダASMLホールディング(ASML)と半導体受託製造の台湾TSMC(タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリング:TSM)も今週に決算が予定されています。両社の決算は、取引先の半導体企業が増産に備えて注文を増やしているかどうかを判断する試金石になりそうです。


 その一方で、中東情勢については警戒感がくすぶっています。先週末11日(土)に、イラン最高指導者のモジタバ師から「復讐は我が国民の意志であり、必ず実行されるだろう」という声明が出されたほか、それに伴ってか、イラン革命防衛隊もホルムズ海峡の再封鎖を宣言するなど、緊張感が高まっています。


 今週公表の米経済指標についても、内容次第では米金融政策への思惑が働くことも想定され、今週は企業決算と金利の組み合わせが、相場の方向感を決めることになりそうです。


「上値の重たさ」の意識と、くすぶる下値不安に注意

 最後に、テクニカル分析の視点で目先の相場展開について考えていきたいと思います。


 確かに、株式市場は先週末にかけて復調を見せましたが、株式市場にとってネガティブに働く金利(債券利回り)は目立って下げてはおらず、「上値の重たさ」が意識されることになりそうです。


 今週公表される米物価関連指標でインフレ懸念が後退し、金利が低下していく展開に期待したいところですが、あまり状況が変わらないと、株価の上昇が限定的になってしまうかもしれません。


<図3>日米の10年債利回り(日足)の推移(2026年7月10日時点)
週間で3,565円動いた値動き荒い日経平均…当面の「上値めど」と「下値めど」は?【アナリストが解説】
出所:MARKETSPEEDIIデータを基に作成

 一般的に、金利の上昇は株式市場にとって、許容できる株価収益率(PER)の水準を引き下げることになります。実際に図4でも、2026年に入って19~20倍台で推移していた日経平均の予想PERが、金利の上昇が意識され始めた5月の半ばあたりから、17~18倍台まで引き下げられている様子が確認できます。


<図4>日経平均(日足)とPERとEPS(予想ベース)の推移(2026年7月10日時点)
週間で3,565円動いた値動き荒い日経平均…当面の「上値めど」と「下値めど」は?【アナリストが解説】
出所:日経新聞掲載データを基に作成

 先週末10日(金)の予想PERは18.18倍、予想1株当たり利益(EPS)は3,771円となっていますが、仮に、PERが19倍台まで許容できる状況になれば7万1,649円、20倍台ならば7万5,421円ぐらいの上昇が見込めることになり、このあたりが当面の上値の目安になりそうです。


 その一方で、下値については、「直近の安値が底」という見方と、「もう一段階の下値を探る」という見方の分岐点に差し掛かっている可能性があります。


<図5>日経平均(日足)多重移動平均線とMACDの動き(2026年7月10日時点)
週間で3,565円動いた値動き荒い日経平均…当面の「上値めど」と「下値めど」は?【アナリストが解説】
出所:MARKETSPEEDII

 図5は、日足の日経平均のチャートに多重移動平均線と、下段にMACDを描いたものになります。


 先週の値動きによって、日経平均の株価が多重移動平均線の束を下抜ける場面を見せました。

また、多重移動平均線自体も、期間の短いものと長いものが入り乱れる格好となっており、上昇トレンドの勢いが削がれ、下向きの意識が強まりつつある様子がうかがえます。


 さらに、チャートを遡ると、こうした足元の状況と似たような場面が2カ所確認できます。具体的には、3月から4月にかけての場面と、昨年11月半ばから12月半ばにかけての場面になりますが、前者はその後もしばらく下値を探る動きとなったのに対し、後者については、上値が重たいものの、下値も堅い展開となっていました。


 では、「今回はどちらなのか?」ですが、基本的には、先ほどもチェックしたイベントの動向次第になるものの、テクニカル分析的には、下段のMACDがまだ「0円」ラインより上に位置しており、この0円ラインがサポートとして機能する可能性が残されていることから、「どちらかと言えば下値が堅い」展開がメインシナリオになります。


 いずれにしても、今週も神経質な相場展開が続くことになりそうです。


(土信田 雅之)

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