現地取材記者が選ぶ夏の甲子園2026 ベストナイン(前編)
2026年夏の甲子園は、智辯和歌山の優勝で幕を閉じた。甲子園最速となる156キロを記録した横浜・織田翔希の快投、健大高崎の粘り強い戦い、有明の快進撃など、今大会も多くの選手、チームが強烈な印象を残した。
投手/織田翔希(横浜)
捕手/大岩翔斗(健大高崎)
一塁手/小野舜友(横浜)
二塁手/楠本龍生(智辯和歌山)
三塁手/辻竜之介(履正社)
遊撃手/神崎翔斗(健大高崎)
外野手/赤間史弥(花巻東)
外野手/石田雄星(健大高崎)
外野手/田山纏(仙台育英)
指名打者/田中皐晴(日南学園)
今大会一番の名場面は、日南学園と横浜の2回戦、6回裏だ。1対1の同点で、日南学園はバスターエンドランの成功もあって無死二、三塁のチャンス。ここで先発の小林鉄三郎に代え、横浜ベンチがマウンドに送ったのが織田翔希だった。
田中皐晴を申告敬遠して無死満塁。織田はここから甲子園史上最速となる156キロをマークするなど、4番・谷口銀次郎を三振に仕留め、続く打者を併殺に打ち取って大ピンチを切り抜けた。すると直後の攻撃で横浜は一挙4点。終わってみれば大勝だった。
よく「流れを変える投球」というが、この時の織田がまさにそれだった。直前の攻撃では横浜がふたつの拙走でみすみすチャンスを逃し、勝利の女神にそっぽを向かれかねない展開だっただけに、リリーフでの役者ぶりが際立った。その後の登板でも、涼しい顔で何度も156キロをマークした織田。
次点として、もうひとり挙げておきたい。社の岩井秀耶だ。初戦で敗れはしたが、智辯和歌山戦で150キロをマーク。本人は「まだまだ体がちっちゃい」と自覚している。これから体が充実した時に、いったいどれだけのボールを投げるのか。楽しみな投手だ。
捕手は健大高崎の大岩翔斗。青?博文監督が「ウチのキーマン」と評する存在で、それぞれ個性の異なる投手陣を巧みにリードし、準決勝までの5試合でわずか2失点。打っても5試合で18打数8安打を記録し、天理との準決勝では強肩も披露した。
一塁手は横浜の小野舜友。ヒットならいつでも打てそうなしなやかなバットコントロールで、21打数9安打。
ことに動きのいい選手が目立った二遊間は、智辯和歌山の二塁手・楠本龍生と、健大高崎の遊撃手・神崎翔斗を選んだ。
楠本については、準々決勝で対戦した仙台育英の倉田葵生が「ヒット性の当たりを何本も捕られた」と嘆いたほど。二塁手は有明の永田晴輝と悩んだが、準決勝で横浜の織田から3ランを放ったインパクトも大きかった。
一方の神崎は、一歩目の反応とフットワークがいい。東海大甲府戦では、フラフラと中堅方向へ上がった難しい打球を背走しながら好捕した。「小さい頃から、お父さんのノックでああいうフライも練習してきました」。2年生ながら青?監督からの信頼も厚い。何より、糸を引くような低い送球にはほれぼれする。投手としても148キロを投げる強肩だけに、遊撃からの送球も目を見張るものがあった。
三塁手は大阪大会で15打点を挙げた辻竜之介。実績に加え、話題性も込みで選出した。
外野手では、まず花巻東の赤間史弥。打って走って、さらにマウンドでも奮闘した。なかでも新田戦、浅いライトフライから相手の一瞬のスキを突いて本塁を陥れた好走塁は秀逸だった。
石田雄星は、「歴代最弱」と言われたチームをまとめ上げたキャプテンシーを評価したい。ある解説者も「好きな選手です」と、そっと教えてくれた。
開幕戦で右翼席へ大会第1号本塁打を放ったのが田山纏だ。「須江(航)先生からは『逆方向に長いのが打てれば本物』と言われています」と語る田山は、レフト方向にもしばしば鋭い打球を飛ばした。引っ張るだけではない打撃も印象に残った。
指名打者には、投手兼外野手の田中皐晴を選んだ。守備にはやや課題が残るが、それを補ってあまりある打力がある。友人の甲子園準優勝投手が「田中、やばいですね」とメールをくれたほど、スイングの速さと正確性は別格だった。
出場は2試合ながら6打数4安打。
投手/石垣聡志(健大高崎)
捕手/西山享太郎(有明)
一塁手/小野舜友(横浜)
二塁手/楠本龍生(智辯和歌山)
三塁手/丹羽裕聖(仙台育英)
遊撃手/金本相有(天理)
外野手/赤間史弥(花巻東)
外野手/辻琉成(敦賀気比)
外野手/田中皐晴(日南学園)
指名打者/小和田和輝(佐野日大)
今大会の投手で圧倒的な存在感を見せたのは、横浜・織田翔希だった。しかし、その織田は準決勝で散った。ここでは決勝まで勝ち上がった健大高崎のエース・石垣聡志をベストナインに推したい。
初戦では1失点完投。準々決勝では延長10回タイブレークを無失点で切り抜け、2回戦、準決勝ではクローザーを務めて1対0の勝利に貢献した。持ち駒豊富な健大高崎投手陣にあって、まさに盤石の大黒柱だった。
2年先輩の石垣元気(現・ロッテ)と同じ石垣姓で、こちらは沖縄・石垣島出身。八重山ポニーズで活躍し、健大高崎進学の話が持ち上がった時は「え? 群馬?」と戸惑ったというが、いまやエースナンバーを背負い、チームを背負って立つ存在になった。しかも、まだ2年生。
捕手は、快進撃を見せた有明のマスクをかぶった西山享太郎。技巧派の工修哉、力で押す齊藤遼汰郎という「ダブル左腕」の持ち味を引き出した。アクシデントで工が離脱した3回戦以降は、エース・齊藤がひとりで投げきれるようインサイドワークに腐心。走者がいなくても時折クイックで投じる齊藤の自由奔放な投球スタイルは、よき女房役の存在あってこそだった。
一塁手は横浜の小野舜友。2年生だった昨春の選抜優勝も経験し、すでに実績十分の選手だが、主将を務め、1番を打った今夏は目を見張るほどの活躍ぶりだった。
とくに、中盤まで接戦となった日南学園戦、霞ケ浦戦では、ことごとくチャンスをものにする勝負強さが光った。準々決勝の花巻東戦では2度の申告故意四球。左投げの一塁手らしい軽快な身のこなしと巧みなミットさばきで、守備でもしばしば職人芸を見せた。
二塁手は好守を誇る選手が多く、本来なら選考に迷うところだが、智辯和歌山・楠本龍生が横浜・織田から放った3ラン一発で「即決」となった。
とくに地を這うような鋭いゴロを、まったくはじく気配もなく地面すれすれでグラブに収め、ヒット性の当たりをアウトにするシーンを何度見せられたことか。100点満点の守備力に加え、怪物投手から本塁打を放ち、天性の打撃センスも兼ね備えていることを証明した。ナンバーワン二塁手の座を揺るぎないものにした一発だった。
三塁手は、1年生で仙台育英のレギュラーを張った丹羽裕聖。おもに3番を打ち、4試合すべてでヒットを放つ上々の甲子園デビューを飾った。あと2年、さらなる活躍を予感させる期待も込めて選出したい。
遊撃手は、大会2本塁打と打撃面で目に見える結果を残した天理・金本相有。初戦(2回戦)の福山戦、準々決勝の三重戦で放った2本はいずれも左翼へ美しい放物線を描く、長距離打者らしい一発だった。
好守が光る遊撃手も多かった大会だが、新基準バット採用後では昨夏の日大三・田中諒に次ぐインパクトを残した長打力を大いに買いたい。
外野手は、実際に守備に就いた3ポジションごとに選んでみた。すると図らずも、全員が投打二刀流の選手になった。
まず右翼手は、投手としての出番こそ少なかったものの、打撃で鮮烈な印象を残した日南学園・田中皐晴。明徳義塾との初戦では、右中間三塁打、火の出るような遊撃ライナー(結果は併殺)、痛烈な右前打と、3打席とも完全に芯でとらえた打球を放った。第4打席では明徳・馬淵史郎監督がたまらず申告故意四球。横浜との2回戦でも右前打、右翼線二塁打とハードヒットを連発し、第3打席は再び申告故意四球となった。打棒絶好調のまま、惜しまれつつ2試合で姿を消した。
左翼手は、自身にとって春夏4度目となる甲子園で最も充実していた感のある花巻東・赤間史弥。木製バットで右打席に立ち、4試合で打率.357。投手としても4試合すべてに登板し、先発した3回戦の英明戦では6回無失点の好投を見せた。さらに初戦の新田戦では、相手中継プレーのスキを突いて本塁へ生還。2回戦の岡山学芸館戦では4盗塁と、高い走塁技術も披露した。打って、投げて、走る。文字どおりの二刀流、いや「三刀流」の活躍だった。
中堅手は敦賀気比の二刀流左腕・辻琉成。初戦の横手戦では4番打者として4打数3安打を放つかたわら、先発して5回無失点。圧巻だったのは、強力打線を相手に力投した智辯和歌山戦だ。延長11回途中で力尽きたものの、小気味のいい投げっぷりで強敵を最後まで苦しめた。まだ2年生。来季がさらに楽しみだ。
最後に指名打者は、背番号2をつけて「4番・DH」を務め、3試合で打率.500をマークした佐野日大・小和田和輝。2回戦の神村学園戦では4打数4安打と大暴れした。下級生の須田凌央に正捕手の座を奪われながらも、打力で4番の座を確保し、ベンチの期待に応えた。高校野球の「DH元年」にふさわしい活躍として、強く印象に残った。
つづく>>










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