火災報知設備や消火設備を手がける防災機器大手の能美防災<6744>が、M&Aを加速している。
同社は2026年7月6日、システム構築やプロトタイプ開発(製品やシステムの本格開発前に試作品を作り、機能や使い勝手を検証する開発)、ソフトウエア技術開発に関するコンサルを手がけるアスケイド(東京都新宿区)を子会社化した。
2023年3月期から2029年3月期までを対象とする中長期ビジョン2028で、積極的なM&Aを掲げており、この方針に沿って2022年4月以降の子会社化は今回で8社目となった。
同ビジョンでは2026年3月期から2029年3月期までの4年間の成長投資として440億円以上を見込んでおり、2026年5月時点でM&Aを中心に約130億円の投資を実行したとしていた。
アスケイドの買収価格は公表していないが、成長投資枠にはなお余力があるとみられ、今後も積極的なM&A姿勢に変化はなさそうだ。
アスケイド買収でIT開発を強化
傘下に収めたアスケイドは、国立研究所の研究支援や企業の新規事業開発、新技術の応用可能性の検討など、世の中にまだない技術やサービスの実現を目指す先行的な研究開発プロジェクトを支援してきた。
主要取引先には、国立遺伝学研究所、産業技術総合研究所、理化学研究所のほか、ソニーグループ、東京電力ホールディングス、トヨタ自動車などが名を連ねており、2025年2月期の売上高は3億2800万円だった。
能美防災はアスケイドについて、課題解決に向けたプロジェクトを支援できる技術力と、柔軟な開発体制を持つと説明する。
子会社化により、IT、IoT(モノのインターネット)分野の開発基盤を強化し、能美防災が持つ防災技術やセンシング技術とデジタル技術を組み合わせた新たなソリューションの開発を進める。
施工会社から防災ITまで買収
能美防災は、中長期ビジョン2028が始まった2022年4月以降、アスケイドを除いて7社を子会社化した。
2022年4月に、消防施設工事や保守点検を手がける日昭設備工業(現 大分ノーミ)を傘下に収め、同年7月には、電気設備工事を手がける坂本電設を子会社化した。
2024年10月には、電気通信工事、電気工事、消防施設工事を手がけるシステムズを子会社化した。
2025年7月には、電気通信工事や消防施設工事を手がける北興通信を、同年9月には、消防設備点検を手がけるセフトと、自治体向け災害対応支援システムを提供するプライムバリューを子会社化した。
さらに2026年2月には、気象防災や宇宙防衛に関する機器の製造、販売、サービスを手がける明星電気を子会社化した。
こうしたM&Aを進める中、2026年3月期は売上高1396億5700万円(前年度比4.5%増)、営業利益183億4900万円(同17.0%増)と、3期連続の増収増益となった。
火災報知設備(自動火災報知設備、環境監視システムなど)が売上高全体の36.5%を占め、消火設備(スプリンクラー設備、泡消火設備など)が33.6%、保守点検等(保守点検、補修業務など)が26.3%、その他(駐車場車路管制システムの取付工事など)が3.6%だった。
M&Aの推進体制を5人に拡充
中長期ビジョン2028は、2023年3月期から2029年3月期までの7年間を対象とする。
同社は、2020年3月期から2022年3月期までの期間をステージⅠと位置付け、その後の中長期ビジョン2028をステージⅡとステージⅢに分けた。
2023年3月期から2025年3月期までのステージⅡを経て、2025年5月に公表した2026年3月期から2029年3月期までのステージⅢでは、既存事業の収益拡大と利益率の向上、事業の拡大、新規事業の創出とスケール化(開発した技術やサービスを事業として拡大できる状態にすること)を重点施策とした。
このうち事業の拡大策では、防災周辺領域や隣接業界を対象とするM&Aの積極的な展開を挙げた。
こうした施策を通じ、2029年3月期に売上高1700億円以上、営業利益率12%以上を目標とする。
また、能美防災は2026年5月に公表した2026年3月期決算説明資料で、PMI(M&A後の統合作業)を担う人材の不足に対応するため、2026年4月にM&Aの専任組織の人員を2人から5人に増やしたと明記した。
今後はPMI体制のさらなる拡充も検討し、戦略に沿ったM&Aを継続するとしている。
同資料では、2026年3月期から2029年3月期までの4年間で、成長投資に440億円以上を充てる計画を示した。
ステージⅢが始まった2025年4月から2026年5月までに実行したM&Aを中心とする投資額は約130億円で、成長投資枠の30%弱だった。
その後に実施したアスケイドの買収については、価格を公表していないため、成長投資枠の残額は確定できないものの、アスケイドの企業規模や能美防災がM&Aの専任体制を拡充していることなどを踏まえると、防災周辺領域や隣接業界を対象とするM&Aは今後も増える可能性がある。
文:M&A Online記者 松本亮一

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