〈『VIVANT』なぜ盛り上がらない?〉視聴率15%超でも漂う“物足りなさ”の正体…前作にあって今作には「まだない」もの
〈『VIVANT』なぜ盛り上がらない?〉視聴率15%超でも漂う“物足りなさ”の正体…前作にあって今作には「まだない」もの

テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。

今回は、いまいち軌道に乗らない『VIVANT』のモヤモヤ感について語る。

微減だが…『VIVANT』の視聴率の推移

TBS日曜劇場『VIVANT』の視聴率が、再び下がった。

8月23日に放送された第15話の平均世帯視聴率は15.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。前週の16.6%から1.4ポイント下げた。

第2シーズンは初回18.8%でスタートし、その後は16.4%、15.1%、16.6%、15.2%と推移している。

もちろん、2桁を取れば大成功といわれる現在の連続ドラマで、5話続けて15%を超えていること自体、異様なほど高い。視聴率だけを見れば今期の一人勝ちで、ここ数年のドラマと比べても圧倒的だ。

ただ、初回からは3.6ポイント下がっており、勢いが増しているとは言いにくい。

一方、同じTBSで今期大きな話題になっている蒼井優主演『Tシャツが乾くまで』は、初回6.9%から始まり、第7話で番組史上最高となる7.7%を記録した。

微増といえばそれまでだが、放送を重ねながら数字を伸ばしていけるかどうかは、ドラマへの支持を見るひとつの材料でもある。

思えば、2023年に放送された第1シーズンの『VIVANT』も、まさにそうしたドラマだった。

初回は11.5%。そこから口コミや考察の盛り上がりとともに数字を伸ばし、最終回では19.6%を記録した。

では、第2シーズンはなぜ今のところ、同じような伸びを見せていないのか。

ここまで見ていて気になるのは、豪華なはずなのに、その豪華さが画面から伝わりにくいことだ。

『VIVANT』の大きな売りのひとつが、出演者の豪華さであることは間違いない。

堺雅人阿部寛二階堂ふみ松坂桃李二宮和也役所広司……。全員が主演級どころか、それぞれがそのクールで最も注目されるドラマの主演を務めてもおかしくないメンバーだ。

彼らが勢ぞろいしたメインビジュアルは圧巻。第1シーズンは内容も含めて、日本のテレビドラマにおける“ドリームチーム”のような作品だった。

第2シーズンでも、ほぼ同じメンバーがそろっている。なのに、なぜか“ドリーム感”が薄い。

理由は単純で、豪華キャストがなかなか同じ場所にいないからだ。

「1話の半分はパソコン画面見せられてる感じ」

現在の物語の中心にいるのは乃木憂助(堺)と野崎守(阿部)の二人だけ。そのうえ第1話以降、その二人ですらほぼ別々の場所で動いている。

二宮、二階堂、松坂に至っては、ここまで5話を通しても登場時間そのものがかなり少ない。

出演者一覧を見ればとんでもなく豪華なのに、実際のドラマでは、その豪華キャスト同士の「掛け合い」がなかなか見られないのだ。

第1シーズンでは、乃木、野崎、薫(二階堂)が一緒にバルカ警察から逃げ、後半になると黒須(松坂)、ベキ(役所)、ノコル(二宮)らも加わり、同じ場所で激しくぶつかり合った。

有名俳優たちが同じ画面に並び、芝居をぶつけ合う。そのこと自体が『VIVANT』の豪華さにつながっていた。

第2シーズンは豪華キャストがそろっている。それでも、その豪華さを感じさせる「共演」が少ない。これは第1シーズンと比べて、明確に物足りないところだ。

もうひとつ、大きな違いを感じるのが映像である。

第1シーズン序盤では、広大な砂漠を進み、市街地を駆け抜け、バルカ警察の激しい追跡から逃れ、国境を越えるなど、大がかりな場面が次々と登場した。

第1話から「地上波の連続ドラマで、ここまでやるのか」と驚かされた。

第2シーズンも海外ロケを行い、実際にはかなり大規模な撮影をしている。

ところが今のところ、そのスケールの大きさが画面からは感じにくい。

ここ数話で目立つのは、ハッキング、監視カメラの解析、パソコンを使った追跡、そしてAIによる情報分析だ。

誰かを探す。ハッキングする。監視カメラを調べる。AIが分析する。そして居場所が判明する。そんな展開が何度も繰り返されている。

世界をまたにかけた物語なのに、視聴者が見ているのは室内とパソコン画面、リモートでのやり取りという時間も多い。

SNSでも、同じような違和感を指摘する声が見られる。

「今のVIVANT『はい、ハッキング~情報ゲットー!』『はいAIで解決~』ってしてて悲しい」
「前作にあったスピード感とハラハラ感がだいぶ変わった気がする」
「1話の半分はパソコン画面見せられてる感じ」
「ハッカーを便利に使い過ぎじゃない? 白けるレベルなんだけど」

また、印象的だったのが、

「前作みたいなドキドキハラハラ感はないけど、ナゾナゾ感は強いね!」

という声だ。

これはまさに、第1シーズンとの違いを端的に表している。

視聴者と出演者の構図が逆転

第1シーズン序盤の乃木たちは、基本的に「追われる側」だった。

捕まるかもしれない。逃げ切れないかもしれない。誰が味方なのかも分からない。そもそも主人公の乃木とは何者なのか。視聴者は毎週、振り回され続けていた。

一方、第2シーズンでは主人公の乃木が「追う側」に回っている。さらに凄腕のハッカーやAIという強い味方もいる。どうしても、危機感やハラハラ感は薄くなる。

さらに、ここまで大きく引っ張った謎のひとつが「野崎は本当に裏切ったのか」だったことも、視聴者がドキドキしにくかった理由のひとつだ。

第1シーズンを見てきた視聴者からすれば、野崎が本当に裏切るとはなかなか思えない。阿部寛が演じる野崎というキャラクターへの信頼まで含めた“メタ推理”をすれば、なおさらだ。

作中の乃木は野崎を疑い、必死に追いかけている。

ところが視聴者は「いや、野崎が裏切るわけないやろ」と比較的安心して見ている。

このズレは少し痛い。

案の定、第15話で野崎が裏切っていなかったことが明らかになると、ネット上では、

「テンポが悪いというか予想通りの展開過ぎてなんというか」
「うん、野崎の潜入捜査は知ってたよ、みんな」
「野崎さんは裏切ってないって視聴者みんな知っていたのに乃木さんと来たら別班のくせにそんなことも知らなかったの?」

といった冷めた声も上がった。

ここまで来ると、むしろこの先「実は本当に野崎が裏切っていた」くらいの展開があってほしいと思ってしまうほどだ。

第1シーズンは逆だった。

視聴者が「この人は何者なんだ?」と疑っている間に、登場人物たちはこちらをあざ笑うように次々と素顔を明かしていった。乃木にも、黒須にも、ベキにも、ノコルにも、それぞれ隠された顔があった。

登場人物のほうが視聴者より一枚も二枚も上手だった。ところが今は、視聴者のほうが先を読めているように見える。

では、第2シーズンはこのまま勢いを取り戻せないのか。むしろ、だからこそまだ期待できる部分もある。

第2シーズンは、第1シーズンで人気を集めた要素の多くを、まだ十分には見せていない。

言い換えれば、まだ“隠し玉”を残したまま、15%台という高い数字をキープしているとも考えられる。

乃木と野崎が再び同じ場所でぶつかる。

豪華キャストが一堂に集まる。

パソコンの前を離れ、人間が実際に動く。

そして「地上波ドラマでここまでやるのか」と思わせる大きな場面が登場する。

そうした回がひとつあれば、視聴率が再び大きく跳ねても不思議ではない。

第2シーズンで初回18.8%を超える日は来るのか。まだ使われていない『VIVANT』らしい魅力が、いつ爆発するのか。その瞬間を期待したい。

文/ライター神山

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