白雪姫は、実は超奔放キャラだった
どんなピンチでも「♪アハハハハ〜」とか歌える白雪姫の神経の太さに、あこがれてしまいます。
先日、『本当はツンデレなグリム童話 ツングリ!』という本の発売が話題になっていた。

これは、グリム童話をパロディでツンデレにしたもののようだが、実はかつてのビデオを観たりすると、パロディにするまでもなく、普通に姫たちがけっこうな奔放キャラだったりする。


なかでもいちばんすごいのは、白雪姫だ。
1937年のディズニー映画『白雪姫』(ブエナビスタホームエンターテイメント)DVDから、名場面を見てみよう。

「この世でいちばん美しい人」と鏡が告げたことで、女王に敵意を向けられ、森に捨てられた白雪姫。
命からがら逃げた先で、まるで動じることもなく小鳥たちに、「私もひどいめにあったの。どうしたらいい?」と尋ねたかと思いきや、その答えも待たず「こういうときは歌えばいいのね」と、あっけらかんと歌いまくるのは、たいした度胸。たいしたタマである。


さらに、動物たちに「寝るところはないかしら? みんなと違って地面はダメだし」と無理難題をぶつけた上で、「あるの? 連れてって」と命令。動物たちを瞬時に完全に白雪ペースに巻き込んでいる。
そこで、見つけたのは、こびとたちの住む家。だが、留守宅に侵入し、テーブルの様子を見て「ずいぶんだらしない子どもたちね」などと暴言を吐いた後、「お掃除したことがないのね。お母さんは何を教えてるのかしら? あ、それともみなし児? 可哀想な子たち……」と、勝手に妄想の中で話を進めている。

そして、動物たちを下僕のように使い、押しかけ女房のごとく掃除をしまくる白雪。
なかには、角をハンガーかけがわりに使用される鹿などもいるが、それでも誰にも文句は言わせない。
挙句、勝手にこびとたちのベッドを占拠して熟睡し、こびとたちが見つめるなか、目を覚ましても、慌てず騒がず詫びもせず、「よろしく」の一言だけ。
自分の名も名乗らず、一方的に「アナタはねぼすけ、あなたはクシャミだわ」と、その外見・雰囲気のみで、ズバズバ相手のあだ名を言い当ててしまう無礼さも持ち合わせている。

さらに、台所も我が物顔で使い、こびとたちに「手を洗え」と説教。7人の寝室を独り占めし、涼しい顔で「いい夢をね」と言ってのける白雪。
すべての人に愛されることが「当然」と思っている白雪にとっては、「不法侵入」も「押しかけ家事」も「寝床の占拠」も、歓迎されて当たり前。
仕事に出かけるこびとたち全員に、分け隔てなくキスをしてあげ、「もうダメよ」とじらす態度も、実に悪女なのである。

ところで、そんな白雪も、毒リンゴで倒れてしまうが、王子の迎えで目を覚ますと、自分をずっと守ってくれてきたこびとたちに、あっさり「さよなら」と告げる。
湿っぽい別れも、惜別の情もまるでなく、清清しくこびとたちを踏み台にして旅立つのである。観ているこっちが、気持ちよくなるほど、ドライな態度で。

普通の女がコレをやったら大ヒンシュクだろうが、そこは「絶世の美女」。踏み台にされてこそ、こびとたちも輝くのでしょう。
さすがのナチュラルボーン「姫」なのです。
(田幸和歌子)

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