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マンガにみる「天才主人公」の残酷さ

       
マンガにはいろんなジャンルの「天才主人公」がいるが、彼らに共通して言えるのは、ピュアで無邪気で、他者に対して無神経で残酷な人が多いということ。

たとえば、『ドラゴンボール』の孫悟空は、純粋に戦いを愛するあまり、その他のこと、たとえば結婚・家庭などにまるで頓着がなく、嫁も子どもも常に「放置プレイ」であった。
自分より強そうな相手にしか興味を持たない悟空にとっては、サイヤ人の王子・べジータですら、興味の埒外。そんな純粋さに、何度、べジータは敗北感を味わってきたことかわからない。
また、『少年サンデー』で連載を終了したばかりの『焼きたて!! ジャぱん』の天才主人公・東和馬も、能力の劣る凡人・河内に対しては、戦友というより「道具」扱い。
目の前に困難がたちはだかったとき、共に戦おうと、傍らでうろたえる河内に対し、「なんとかなるじゃろ」と東は軽く流すだけ。手の内を明かさず、相談もせず、利用するところだけして、ちゃっかり勝利してしまうのである。

思えば、“日本初のグルメマンガ”といわれる『包丁人 味平』の主人公・味平も、天才ゆえに「オレは西洋料理人でも日本料理人でもない! 美食人だ!」と傲慢にも思える主張をし、カレーやラーメンづくりのイロハも知らないくせに、堂々とその道の手練れたちに戦線布告する。
そして、日ごろ真面目にその道一筋で頑張る職人さんを前に、「(ラーメンの)麺を粉からつくるなんて!」とか、かん水を見て「この水みたいなもんはなんだろう?」と無邪気に聞きつつも、わずかばかりの経験と、持って生まれた天才的センスだけで打ち負かしてしまう傲慢さ・残酷さに、天才はまるで気づかない。

これは少年マンガの世界だけでなく、『ガラスの仮面』における天才女優・北島マヤもまた、同じだ。
家柄にも容姿にも恵まれたライバル・姫川亜弓に対し、敵対心を持つようなら、まだかわいげがある。でも、マヤは必死に演じる亜弓に対し、「美しい……さすがだわ」などと無邪気にほめたたえつつも、自分の演技をたった一言「〇〇(役)だったらこうしたと思ったから」とサラリ。「一生懸命演じなくても、なりきってしまう」天才ぶりを何気なく残酷に突き付け、亜弓にいつも「マヤ……おそろしい子!」と言わせてしまうのだ。

思えば、マンガだけでなく、映画『アマデウス』では、サリエリが必死で作り上げた曲を、まだ幼いモーツアルトが1度聴いただけでコピーしたり、さらには「サリエリ風」などとパロディまで瞬時に作ってしまうことに、サリエリが嫉妬と憎しみを燃やすわけだが、こうした天才の残酷さを考えれば、サリエリのほうに共感を抱かずにはいられない。
そう、『ドラゴンボール』でいったら、べジータのほうがよっぽど人間くさいし、また、サイヤ人の域にはまるで到達しないながらも、自分なりの修業をコツコツ続ける天津飯のほうが、美しいのではないだろうか。

天才の活躍の陰で、泥くさく努力するライバルキャラ。目線をその悲劇の人たちに向けてみると、物語がまた別の味わいを帯びてくるはずだ。
(田幸和歌子)

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2007年1月22日のコネタ記事

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