
北海道には伝統“的”工芸品がなかった
仕事上、色々な調べ事をする機会も多いのだけれど、その度に「世の中にはこんなことがあるんだ」と驚かされることが多い。もっとも私の場合、どちらかというと、「別に知らないでも生きていけるよ」ということに反応してしまうことが多いのですが。
つい先日驚いたのが、「47都道府県のうち、北海道にだけ伝統的工芸品がない」ということ。
実は伝統的工芸品(この“的”というのがクセモノなのですが……)というのは、経済産業省が指定したものを指すもので、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)の中でその要件が明文化され、その要件に合ったものだけ伝統的的工芸品とのお墨付きをいただけるようになっているのだ。
そもそのこの法律は昭和49年5月に「伝統的工芸品の産業の振興を図りつつ、地域経済の発展、国民の生活を豊かで潤いを与えるものにする」という目的で制定されたもので、第二条に伝統工芸品の指定、要件が記されている。
一 主として日常生活の用に供されるものであること。
二 その製造過程の主要部分が手工業的であること。
三 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
四 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
五 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。
これだけ読むと、北海道に該当するものがない、という理由が見当たらないのだが、真相はさらに細かい部分に。経済産業省伝統的工芸品産業室に話を聞いてみた。
「伝産法の中では、歴史が何年以上とか従事する人の数といった具体的な数字は入っていませんが、実施要領、通告レベルのものですね、その中に一部具体的な数字が入っているのです。五の“少なくない数”ですが、これは実施要領によると“少なくない数とは10以上の事業者、30人以上の従業者を意味する”となっています。
なるほど。どうやらこの100年以上の歴史というのが北海道にとってはネックになっているようだ。
「歴史の部分は文献などで調べてそれをよりどころにしているわけですが、文献に残らないものも多く、この点については今後議論されるべきところだとは思います」
北海道庁にも伝統的工芸品について聞いてみた。
「はい。法律で定められたところの、いわゆる経済産業省が指定する伝統工芸品というものは確かに北海道にはありません。なかなか基準は厳しいものがありまして……。でも北海道には伝統ある工芸品がないということではありません。先住民族の織物や工芸品、伝統的な文化がありますし、それにモノはなくても豊富な食材があります(笑)」と北海道庁経済部。
確かに、経済産業省の指定を受けた伝統的工芸品になればお墨付きや助成措置など利点も多いのかもしれないけれど、一般消費者からすればあまり大きな意味はもたないような気もする。
ちなみに、現在経済産業省から伝統的工芸品として指定を受けている工芸品は全国で215(2007年12月現在)。一番多く指定を受けているのは京都府で西陣織をはじめ17の工芸品。そして2番目がちょっと意外な新潟県で15品目。以下、東京、沖縄が13品目、愛知12品目、石川10品目と続いています。
(こや)
つい先日驚いたのが、「47都道府県のうち、北海道にだけ伝統的工芸品がない」ということ。
実は伝統的工芸品(この“的”というのがクセモノなのですが……)というのは、経済産業省が指定したものを指すもので、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)の中でその要件が明文化され、その要件に合ったものだけ伝統的的工芸品とのお墨付きをいただけるようになっているのだ。
そもそのこの法律は昭和49年5月に「伝統的工芸品の産業の振興を図りつつ、地域経済の発展、国民の生活を豊かで潤いを与えるものにする」という目的で制定されたもので、第二条に伝統工芸品の指定、要件が記されている。
一 主として日常生活の用に供されるものであること。
二 その製造過程の主要部分が手工業的であること。
三 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
四 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
五 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。
これだけ読むと、北海道に該当するものがない、という理由が見当たらないのだが、真相はさらに細かい部分に。経済産業省伝統的工芸品産業室に話を聞いてみた。
「伝産法の中では、歴史が何年以上とか従事する人の数といった具体的な数字は入っていませんが、実施要領、通告レベルのものですね、その中に一部具体的な数字が入っているのです。五の“少なくない数”ですが、これは実施要領によると“少なくない数とは10以上の事業者、30人以上の従業者を意味する”となっています。
あと伝統的ということですが、法律の概要説明を書いた『伝統的工芸品ハンドブック』という本では、“100年以上の歴史を有し、現在も継続しているもの”としています」
なるほど。どうやらこの100年以上の歴史というのが北海道にとってはネックになっているようだ。
「歴史の部分は文献などで調べてそれをよりどころにしているわけですが、文献に残らないものも多く、この点については今後議論されるべきところだとは思います」
北海道庁にも伝統的工芸品について聞いてみた。
「はい。法律で定められたところの、いわゆる経済産業省が指定する伝統工芸品というものは確かに北海道にはありません。なかなか基準は厳しいものがありまして……。でも北海道には伝統ある工芸品がないということではありません。先住民族の織物や工芸品、伝統的な文化がありますし、それにモノはなくても豊富な食材があります(笑)」と北海道庁経済部。
確かに、経済産業省の指定を受けた伝統的工芸品になればお墨付きや助成措置など利点も多いのかもしれないけれど、一般消費者からすればあまり大きな意味はもたないような気もする。
ちなみに、現在経済産業省から伝統的工芸品として指定を受けている工芸品は全国で215(2007年12月現在)。一番多く指定を受けているのは京都府で西陣織をはじめ17の工芸品。そして2番目がちょっと意外な新潟県で15品目。以下、東京、沖縄が13品目、愛知12品目、石川10品目と続いています。
(こや)
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