(母)「トイレに行っておきなさいよ」
(子)「行きたくない!」

ほどなく股を押さえ、足踏みする子に……
(母)「だからトイレに行っておきなさいって言ったでしょ!」
(子)「でも、さっきは行きたくなかったんだもん。急に行きたくなったんだもん!」

子どもを持つ人なら、誰でも一度は経験したことがあろう、こんなやりとり。


実際、「トイレに行きたくない」と口では言っていても、いざ行かせてみると、ちゃんと出ることは多々あるし……。
でも、そういった精神的な部分だけでなく、不思議に思うのは、子どもに比べて、大人がかなり長時間でもトイレをガマンできること。
これは忍耐力の違いなのか、それとも膀胱にため込める量の違いなのか。神奈川県の消化器内科の医師に聞いた。

「子どもの場合、『骨盤底筋』がまだ完成されていないこともあり、オシッコがたまったら、すぐに出てしまう傾向があるんです」
つまり、筋力パワーが出ないことで、ためておけず、すぐガマンできなくなってしまうらしい。
ちなみに、トイレに行きたいとき、子どもはよくジャンプしたり、足踏みするが、これについて、ある編集者はこんなユニークな自説を披露してくれた。

「たぶん膀胱には『おしっこセンサー』のようなものがあって、限界ラインを超えそうになるとき、ジャンプや足踏みでおしっこ水面を揺らすことで、センサーが反応しないようにしているのでは?」

そんな冗談はさておき、これはどういう効果なのか。
「実際には、ジャンプすることや足踏みすることで、気を散らし、頭にいく『膀胱が満タン』というサインを止めるためですね」
単純に「膀胱容量」も大人と子どもとでは違うはずだけど……。
「大人の場合、個人差はあるものの、300~500mlまで膀胱に蓄えることができます。正常な放尿では、1度に150~200mlくらい出るのが一般的なので、それ以上の量が蓄えられていることになります」

一般的には1回に出るオシッコの量の2倍くらいを膀胱で蓄えられることになる。では、容量を超えたら、大人でもお漏らししてしまうもの?
「実は、子どもの場合、ある一定量に到達すると、出てしまうんですが、大人は一定量に到達した後も、その量を保てるようになっているんですよ」
!? では、容量を超える分のオシッコは、どこにいってしまうのか。
「膀胱容量を超える分は、水が『浸透圧』を利用して、血液などに吸収されてしまうんです」

子どもの場合は、骨盤底筋が完成していないため、ガマンできずに下から出てしまうが、大人の場合は、筋力パワーでしめつけることで、別の場所に吸収されるということらしい。

すごいな、大人の膀胱パワー。そして同時に、子どもの急な「おしっこ!」コールは、身体のしくみの上で、ある程度仕方のないことのよう。

また、たくさんためこめるとはいえ、もちろん大人だって、ガマンは禁物。お忘れなく。
(田幸和歌子)