梅雨も開け、そろそろ完全に夏休みモードに突入! という方も多いのではないでしょうか? 私もついふらりと旅に出たくなってしまいます。

図らずも、ますます進む円高やLLC(ローコストキャリア)と呼ばれる安い航空会社の進出で、本当にリーズナブルに海外旅行を楽しめるようになりましたよね。
なんていったって世界一周旅行でさえ、今は30万円台で航空券を用意することができてしまう時代(関連記事)。少しだけまとまったお休みを取ることができれば、意外に気軽に世界を周ることだってできてしまうのです!

でもせっかくなら、旅先でもどこか時間に追われ、数日後には引き戻される現実……たまったお仕事や家事のことなど……を気にすることなく、本当の旅を一度は味わってみたいもの。そこでマッキャンエリクソンでメディア・プランナーとして活躍しながら、1年かけて世界を旅した津田裕さんに旅の魅力についてお話を伺いしましたよ。

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>どのような旅でしたか?
2009年10月から1年間、妻とふたりで世界をぐるりと旅してきました。僕は1年間会社を休職し、妻はこれを機会に会社を退職しました。家も引き払いました。


基本は、最初の訪問地さえギリギリまで決めないような、行き当たりばったりの旅でした。ハワイから東周りで周ったのですが、図らずもずっと夏を追いかけるような形で北中米、南米、南極、ヨーロッパ、北アフリカ、中東、アジアの順で一周してみました。いわゆる世界一周券は買わないで、その場のノリで次の行き先を決めて行くという感じです。出会った旅人と話をしていると、つい「ああ、ぜひそこに行ってみたいな」と思っちゃうんです。そんなとき、次のフライト地が決まっていると何かと窮屈かなあと。

僕らにとって大切だったのは“世界一周”という行為ではなく、“ゆっくり旅をする”ことでした。
目覚めた時、今日は何をしようかなと、まっさらな気分で考えられる日々を過ごしたいなと。


>何を求めて旅だったのですか?
まあ、特別に何かを求めて旅立ったわけではなくて、単に世界を見てみたかったというのが本音です。せっかくこの世に生まれてきたんだから、この星のいろんな表情を確かめてみたいと。テレビやネットでは体感できない、温度や湿度、音や匂い、光や影を実際に感じてみたかった。


>旅先で何を感じましたか?
たとえば中東の男たちは、どうみてもあんまり忙しそうには働いていない人が多いのですが、なんだかとても楽しそうに過ごしていました。インドやネパールの山奥では、家族の距離がとても近くて、小さな女の子が、これまた小さな弟の面倒をしっかりみていました。
パタゴニアやボリビアの大自然はとにかくどこまでも雄大で、気を抜くと吸い込まれそうでした。南極は、無駄なモノが一切ない静謐で美しい世界で、どんなに着込んでも身震いするくらい寒かったです。

どの土地にもそれぞれの時間が流れ、それぞれの幸せがありました。

人は本当にちっぽけな存在だなと思ったし、またちっぽけながらも、それぞれがあたたかい営みを大切にしている姿に、胸を打たれました。そうしていろんな土地に足を運びながら、時折、遠くにある故郷に思いを馳せました。自分の家族や友人に縁あって出会えたことを、ひそかに感謝しました。


旅をしていると、世界は“無限”に感じます。発見することが次々と現れてくるから、キリがない。でも、一方で、自分はその無限の選択肢から、ひとつを選ばなくちゃいけないのも事実。つまり、“限界”も同時に感じるんです。わかっちゃいたけど、人生は限られているんだなって感じます。そして、僕らがこれまで出会ってきた人やものは、奇跡の連続だったんだなってことに気づくんです。



>帰国して何が変わりましたか?
まずは“定住生活”がこんなに楽しいものだとは思いませんでした(笑)。食べ物をはじめ日本文化って本当に素晴らしいと思います。それまでは東京の世田谷に住んでいたのですが、より昔ながらの東京文化の情緒を感じられそうな日本橋~浅草付近に住むことにしました。いやー、最高ですよ。ホッピーとか煮込みとか(笑)。

仕事も、以前に増して楽しく感じるようになりました。
僕は広告会社でプランナーの仕事をしているのですが、うんうん唸りながらアイディアを練ったり、仲間たちと真剣勝負でモノゴトを作っていくということが、こんなにエキサイティングなことだったっけ? と驚いています。旅と同じように、困難な状況であればあるほど燃えますし、成長できる喜びを感じています。

生活が楽しい、仕事が楽しいと感じられるようになったのは、結局「日常も旅なんだ」ということに気づいたからでしょう。なんでもない毎日でも、自分の気の持ちようで、いろんな発見ができるし、成長もできる。自分の中の座標軸に“世界”が据えられたことで、前よりも人生において大切なことがクリアに見えるようになった気がします。まだどこかで僕と妻は、旅の途中なのかもしれません。

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津田さんの素晴らしい写真の数々と、奥様と二人で綴られた旅の記録は『旅に出ようぜ日記』でご覧いただくことができますよ。またデジタルカメラとアナログカメラで撮影された膨大な写真の数々は、これから少しずつ整理をして写真集や写真展の形で発表することを考えていらっしゃるとか。今から私もとても楽しみ!

さあ、やっぱり旅に出ましょう、みなさん!!
(鶴賀奈穂乃)