パンクロックの元祖とも言われる伝説のロックバンド、ラモーンズ。

バンドはメンバーチェンジを繰り返しながら1996年に解散。
それから20年以上がたち、2014年にはバンドのオリジナルメンバー4人は全てこの世を去った。しかし、「Blitzkreig Bop(電撃バップ)」や「Do You Remember Rock‘N’Roll Radio?(リメンバー・ロックンロール・レイディオ?)」など、簡潔にしてインパクトのある楽曲は、現在でも人気は高い。しかし、そのファンクラブが現在も活動を続けているのは、世界で唯一、日本だけだという。

ファンクラブの会長で、音楽雑誌『BURRN!』創刊メンバーでもあるyuki kuroyanagiさんが10万字の書き下ろしと多数の未発表写真で構成した書籍『Thank You RAMONES』(リトルモア刊)が、10月末に発売された。
ロリータ18号・石坂マサヨが語る伝説のロックバンド「ラモーンズ」
「Thank You RAMONES」

メンバーのジョニー・ラモーンと88年から文通を続け、他のメンバーとも交流があったyukiさんが07年に発表した著書『I Love RAMONES』の「その後」を記した本という位置づけになる。今もファンクラブの入会希望者の中には、バンドが実際に活動した時代を知らない若い世代も多い。
本書中で、yukiさんは、そんなファンたちとニューヨークやLA、ラモーンズ「聖地巡礼」の旅に出る――。


メンバーの人間らしさが分かる本


著者と同じくラモーンズを愛し、98年にはジョーイ・ラモーンがプロデュースしたアルバム「父母♡NY(フボラブニューヨーク)」をリリース、「ROCKAWAY BEACH」や「WART HOG」などラモーンズのカバーも行っているパンクバンド、ロリータ18号。11月18日からスタートした東名阪ツアーを直前に控えた、ボーカリスト・石坂マサヨさんが『Thank You RAMONES』の感想を聞かせてくれた。
ロリータ18号・石坂マサヨが語る伝説のロックバンド「ラモーンズ」
ロリータ18号・石坂マサヨさん

「yukiさんは、特にジョニーが身近な存在で、だからこそ書ける面白さをまず感じました。文章もどこかポップで読みやすく、どんどん読めちゃいます」

yukiさんが前著『I Love RAMONES』を記したきっかけの一つが、04年公開のラモーンズ初のドキュメンタリー映画『エンド・オブ・ザ・センチュリー』だった。作品内で、ジョニーがジョーイの彼女を奪い、その後二人は口をきくことなくバンド活動を続けたなどという描写があった。今回の『Thank You〜』の前書きにもその経緯がこう書かれている。

<ジョニーがヒールとして描かれていたことが悔しかった>
それから10年。オリジナルメンバー4人はこの世を去ったが、編集者に言われたこんな言葉がyukiさんに「その後」を書かせた。
「yukiさんにとってラモーンズは過去。でも、今日から彼らを聴くファンにとってラモーンズはいま、そして夢なんですよ」

ロリータ18号・マサヨさんは言う。
「ジョニーのことがあまりよく描かれていなかった映画が1冊目のきっかけで、それを払拭するために書かれた文章からは、ジョニーの人間性がすごくよく伝わりますよね。外国のバンドって、直接接する機会がなかなかなくて、ライブを見ても、見られるのはその姿だけなので、そのミュージシャンがどんな人で、どんなことを考えてるのかまではなかなかわからない。
ある意味アニメのキャラクターと同じレベルみたいなところもあると思うんです。それが、どんな人間だったのか、ラモーンズっていうすごいバンドも、自分たちと変わらない同じ人間がやってるバンドなんだ、彼らの人間らしいところなんかがよく分かる2冊だと思います」

当時、映画『エンド・オブ・ザ・センチュリー』の試写を見たマサヨさんは上映後涙が止まらず、しばらく試写室の椅子から立ち上がれなかったという。
「もちろんファンとしても見ましたが、バンドをやっている演者として見た時に、あんなにカッコよくてでっかい存在のラモーンズにだって、私たちのバンドでも普通にあるようなささいなことがあったんだというのが衝撃的で」
試写室を出た時に、大量の携帯の着信があったことに気づく。
「ジョニーが亡くなったというんです。今でもこの話をすると鳥肌が立つんですが、映画に衝撃を受けてフラフラ出てきたらそれでしたから。まだ携帯でネットも使えませんでしたから、とにかく近くの漫画喫茶を探してパソコンで調べたら、本当に亡くなっていて。
そこからどうやって帰ったのかは覚えてないです」


大事なことがギュッと凝縮されている曲


マサヨさんとラモーンズとの出会いは、10代のころ。実は最初はピンとこなかったという。
「聞き流しちゃってた感じなんですよ。見た目もなんか地味に見えましたし(笑)」
しかしある時、
「よく聞いたらボーカル(ジョーイ)の声、ヘンじゃない? あれ、好きかもしれない。……むちゃくちゃカッコいいじゃんって」
と印象がガラット変わった。ちなみにこの「ヘンな声」というのは、マサヨさん流の「超絶な褒め言葉」だという。

「忌野清志郎さん、戸川純さん、セックス・ピストルズのジョニー・ロットン、トイ・ドールズのオルガ、KENZI……自分もそうだからってのもあるかもしれないんですけど、みんな最高に『ヘンな声』で大好き」

マサヨさんにとってのラモーンズの曲の魅力は、
「あの短い曲、少ないコード、それでキャッチーで耳に残る。本当に大事なことが短くシンプルな曲の中にギュッと入っている。そのすごさは、自分で曲を作るようになって、あらためて感じるようになりました。ただ、メンバー本人たちが、それを意識してたかどうかは分かりませんけれど(笑)。意識してなかったらそっちの方がカッコいいかもしれませんね」
ロリータ18号・石坂マサヨが語る伝説のロックバンド「ラモーンズ」
ロリータ18号のアルバム「父母♡NY」をプロデュースした、ジョーイ・ラモーンのサイン入りラモーンズのCD(石坂マサヨさん私物)

ラモーンズにはオールディーズやポップスなど、幅広いルーツミュージックもある。
「メンバーそれぞれが聴いてきたもの、好きな音楽のエッセンスが入っているんですよね。
音楽が好きです、というところから始めている人たちだと思うんです」
ロリータ18号も、様々な曲をカバーしているが、
「バンドをやることってつまり、自分たちの好きな音楽をやることだと思うんです。ロリータにカバーが多いのも、好きな曲をやると単純に楽しいからなんですよね」

マサヨさんにとっても、ラモーンズは「I Love」であり、「Thank You」な存在だ。
「今の私にとってラモーンズは、今も当たり前に自分の中にいるバンドです。メンバーがこの世にいるいないじゃなくて、一生自分の中に存在しているバンドです」
そして、同じミュージシャンとして、yukiさんの本は、「バンド冥利に尽きる本」だと語った。
「ファンクラブの活動も含めて、yukiさんという存在が、ラモーンズにとっての宝だと思うんです。yukiさんがいたことで、日本でラモーンズの存在は残って、若い子たちにも受け継がれていく。バンドって、いい商売だなと思います。いつか自分が死んじゃっても、自分にとってのyukiさんのような存在がいるかどうかは別として、作品は残る。幸せなもんだな、ロリータやっててよかったなと、あらためて感じました」
(太田サトル)

<ロリータ18号 東名阪ツアー「ロリータ18号ワンマンショウ2017 LOLITAvsLOLITAAA!!!」>
・11月18日(土) 大阪BRONZE
・11月19日(日) 名古屋UNLIMITS
・12月6日(水) 新宿ロフト
※詳細はオフィシャルサイトなどで