11月8日放送『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)の第6話が、非常に重いテーマを扱っている。コメディタッチな空気感が貫かれていた同作、次第に趣きが変わりつつあるようだ。

「奥様は、取り扱い注意」6話。コメディタッチ返上、遂に綾瀬はるかの肉弾戦が消えた
イラスト/Morimori no moRi

アリバイ作りに利用される綾瀬はるか


今回は、伏線が色々と張り巡らされている。一度観て、話の流れを把握した上で再見すると「そういうことだったのか」と気付くだろうシーンが点在しているのだ。

フラワーアレンジメント教室に通い始めた、伊早山菜美(綾瀬はるか)と大原優里(広末涼子)と佐藤京子(本田翼)の3人組。そこで菜美は、街の町内会報の編集を担当する吉岡冴月(酒井美紀)にインタビューを申し込まれ、翌日の夜に冴月宅へ訪れる約束をする。
冴月 7時はどう? 30分もあれば終わると思う。
(冴月、立ち去る)
優里 せめて、ご飯時は避けてくれたらいいのにねぇ~。

そして、取材日当日。
菜美がスーパーで買い物をしていると、気味の悪い笑みをたたえた知らない男が見つめてきた。そして、その男に笑顔で語りかける冴月。なんと、この男は冴月の夫で歯科医の達郎(竹財輝之助)であった。

その後、約束の時間に合わせて菜美が吉岡宅へ訪れると、玄関前には冴月の友人の藤村靖子(芦名星)と加藤千尋(原田佳奈)の姿が。「インタビューの後、アレンジメントの勉強会をやることになってるの」とのことだ。しかし、冴月は不在。
遅れる旨の連絡を受けた靖子らに従って家の中に入ると、そこにはなんと達郎の刺殺体が……!

そして、例によって洞察力を発揮する菜美。「死体の傷口から出た血は、そんなに広がってなかった。(中略)死体を発見した時、犯人はまだあの広い家の中にまだ潜んでたのかも……」と、事件の周辺状況を推測。加えて「日時を指定されて死体を発見するって、偶然だとしたらものすごい確率だなって」と、冴月と交わした約束にも疑いの目を向ける。つまり、第一発見者に仕立てられた自分が“アリバイ作り”に利用されたのではないか? ということだ。

後日、菜美はマスコミから犯人だと疑われる冴月に話を聞きに行く。
そこで、冴月は菜美からの質問に力強く返答している。「(夫を)愛してたわ。私のこと、とっても大切にしてくれた! どんな理由があろうと、私に殺せるわけない」。

「一度は真剣に愛した人に直接手を下すことはできなかった……」


状況証拠と聞き込みによって、犯人の目星がついた菜美。「犯人は、吉岡さん、藤村さん、加藤さんの3人だ。ただし、旦那さんに直接手を下したのは、藤村さんと加藤さん」と、すでに核心を掴んでいた。

しかし、殺害の動機がわからない。
そして、菜美は3人に問いただす。すると、靖子と千尋は15年前に達郎からレイプされていた事実を告白する。
「私たちは秘密を打ち明け合った日から、一つのことに取り憑かれてしまった。あいつを殺すこと」(靖子)
そして、夫の行いを知った冴月は2人に協力する。
「私は妻である前に女だった。だから、女の痛みを見過ごすことはできなかった。
(中略)夫は罰せられるべきだった。でも、一度は真剣に愛した人に直接手を下すことはできなかった……」

要するに、それぞれの伏線は以下のように着地する。
「7時はどう?」
冴月は達郎の仕事が終わり、殺害が完了するタイミングで菜美を来宅させる必要があり、主婦にとって迷惑なこの時刻を指定した。
気味の悪い笑みをたたえた知らない男が見つめてきた
達郎には異常性がある。
犯人はまだあの広い家の中にまだ潜んでたのかも……
犯人は、菜美の傍にいた靖子と千尋。
「どんな理由があろうと、私に殺せるわけない」
事実、冴月は夫に直接手を下していない。


ちなみに、菜美が冴月宅へ行く前に自宅のテーブルに飾っていた白いバラには「純潔」の花言葉がある。

菜美が撃退するべき敵は、すでに殺されていた


すべてを知った菜美は、3人にこう語りかけた。
「自首するかどうかは、あなたたちに任せる。私は告発しない」

このドラマでは、菜美が得意のアクションで敵を成敗するのが鉄板の流れ。しかし今回、そのような場面は登場しなかった。これは、菜美が“女の痛み”を理解したからか? いや、成敗すべき相手はすでに靖子と千尋に殺害されていたからだ。

結果、彼女らが自首をすることはなく、街を出て行くという形で事件は収束した。殺人を犯した2人が罪に問われなかった展開について、ネットでは様々な意見が飛び交っている。「許せないのは理解できる」というものと「何があっても殺人が許されるべきではない」の両者だ。
「15年間、悪夢を忘れようと必死で生きてきたのに、あいつと再会するなんて。でも、あいつは私のことを覚えてなかった!」「私はレイプされた後、また男の人ときちんと付き合えるようになるまで5年もかかった」と告白している靖子と千尋。死にたくなるような過去を背負わされた2人に対し、豪邸を建てるほど歯科医として成功していた達郎。様々な考え方が交錯するのは当然だろが、このドラマは“痛み”を抱えてしまった女性の感情に寄り添った。「夫は私を初めて抱いた時、こう言ったの。『一生、忘れられない経験にしてあげる』って。それは、私と夫だけの言葉だったはずなのに……」という、冴月の言葉が痛い。

事件後、菜美から「男として生まれて悲しいと思ったことはある?」と問われた夫・勇輝(西島秀俊)は「『男は法律をつくるために生まれ、女は自然を保持するために生まれる』、何かの本にそう書いてあった。男はたぶん、本当の悲しみを知らない生き物なんだ」と答えている。
調べてみると、これはフランスの童話作家・セギュール夫人が残した「男は法律をつくるために生まれ、女は風俗をつくる」が元になっているらしい。「男女はわかり合えない」ということを表した言葉だ。

レイプ事件の加害者と被害者の関係、それのみでなく菜美と勇輝を暗示した言葉だと思えなくもない。2人は、本当に夫婦としてわかり合っているのか?
第1発見者として菜美が警察で取り調べをされた際、署まで付き添った勇輝は警察関係者と談笑。勇輝は菜美に「大学の同級生だよ」と説明していたが、裏がありげな彼の素性も次第に明らかになっていきそうだ。
(寺西ジャジューカ)

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