秋田県にある「阪神タイガースの山」
(上)写真1)頂上小屋に置かれた優勝祈願のサイン帳(下)中腹のブナの紅葉
♪あーきのゆうひーにー、で始まる童謡「もみじ」。色づく木々の中で、カエデの紅葉は遅いほう。
そんなカエデも、師走の声が聞こえるようになると、多くの地域で見頃になる。

北国の紅葉は早い。高いところはもっと早い。10月中旬、東北は秋田県雄勝町にある、紅葉の「虎毛山」に登ってみた。ところで、「虎」で連想するものと言えば? もちろん「阪神タイガース」だ。10人のうち6人はそう答えるんじゃないかな?

頂上にあるサイン帳をパラパラとめくってみると、やっぱり! そこには「阪神タイガース優勝祈願」の文字が! リーグ優勝を決めた去年の10月、日本シリーズ優勝を願ってファンが集ったのだとか。
ここは秋田県の山奥、というか山のてっぺん。交通の便はあまりよくないし、登るのにも4時間近くかかる。参加したのは地元の人が多いけど、兵庫や京都からわざわざ訪れた人も。「18年は長かろう。3年で又登ろう」なんてサインもあって、ちょっと笑えた。

虎はもともと日本にいない動物なので、「虎」の字のつく山は少ないのだとか。
そんな中でこの虎毛山、「虎」の字がつく日本最高峰。いわば「日本一の虎」なわけで、ファンが集まるのもうなずける。六甲山と並び賞されてもいいんじゃないのかな、って思う。 

紅葉の話に戻ろう。注目は中腹に広がるブナ林。ブナの葉は紅くならない。
カエデの艶やかさとはちょっと違う、華麗な黄色の美しさ。太陽に照らされ、風にそよいでキラキラと光る様子は、まるで黄金のよう。

建材として使えないブナの木は、昔はどんどん切られてしまった。最近は、保水力の高さで見直されている。ぶなは地面にしっかりと根を降ろす。水不足を防ぐと同時に、大雨が降っても水を貯めて、土砂災害を防ぐ効果もある。
「天然のダム」ってよく言われる。紅葉が終わると、落ちた葉っぱが土を肥やす。そして、ブナのどんぐりは熊の好物。山にどんぐりがたくさんあれば、今年みたいに熊が里に下りてくることも、少なくなるよね。

ブナの話だけになっちゃったけれど、虎毛山には他にもたくさんの魅力がある。今年はもう雪が降っていると思う。
タイガースファンの人も、私のようにそうでない(!)人も、来年ちょっとがんばって、是非登ってみよう。雪が消えるのは5〜6月頃。希望すれば登頂証明書ももらえる。(R&S)