ジャイアンの「心の友よ」発動条件は?
ジャイアンの口グセ「心の友よ」と歌声の「ボエ〜」。意外と密接な関係にあるようです。
わがままで乱暴だが、情に厚く、いざってときにいちばん頼りになるジャイアン。
味方につけたら百人力の彼が、友情の証として発する定番のセリフ、「おお、心の友よ」。

これを彼に言わせるには、どうしたら良いのか。

てんとう虫コミックス『ドラえもん』全45巻から、ジャイアンの「心の友よ」発言をピックアップし、その発動条件を調べてみた。
初期はなかなか登場せず、8巻でジャイアンリサイタルにお世辞を言うスネ夫に、「ヒャー。うれしいこといってくれる」と、アンコールで応えるものの、「心の友よ」とは言わず。歌がうまくなるキャンデー欲しさに、のび太に「ぜひぜひ、おれの親友に…」とおべっかを使うときも、10巻リサイタル時に「きみらはほんとうのげいじゅつがわかるひとだ」と言うときも、やはり「心の友」は不発である。

ようやく初登場となるのが11巻、その名も『ジャイアンの心の友』。
のび太がジャイアンの夢だった『乙女の愛の夢』というレコードを出してあげた際の、このセリフだ。
「今からおまえは、おれの親友だ! 心の友だ!」
調子にのったジャイアンは「心の友よ、きょうだいよ。このぶんだとNHKの紅白出場も、ゆめじゃない」とまで発言。

16巻『シンガーソングライター』では、作曲ができないと悩んでいたときに、「メロディーお玉」を貸してもらい、「ドラえもん、のび太! ありがとよ! おまえたちは、おれの心の友だ、親友だ!」と叫ぶシーンなどが見られた。
また、なぜか犬を連れた美少女に弱いようで、女の子との仲を取り持ってくれるように頼む恋の悩み系「心の友よ(だ)」2回。

他に、13巻『ジャイアンシチュー』では、ひき肉とたくあんとしおからとジャムとにぼしと大福と……そのほかいろいろで作った料理に、のび太が「こんなうまいものはじめてたべたよ」と言ったことで、大感激。

「きみだけだ、わかってくれるのは。きみこそ親友だ。心の友だ」と涙を流していた。
その一方で、スネ夫にマンガを借りるための、安売り・ごますり系「心の友よ」が1回。

妹・ジャイ子の恋やマンガ創作の悩みについては、かなり心を砕いて尽力するものの、基本的に命令調子で、「心の友よ」は一切出ていない。

案の定というか、ジャイアンが「心の友よ(だ)」と叫ぶのは、ジャイアンの歌を褒める、リサイタルの会場探しなどの支援をする、歌手デビューの手伝いをする、歌の才能をバックアップするなど、圧倒的に歌・リサイタルがらみが多く、全45巻中8回。

歌・リサイタルがらみの「親友よ(だ)」は3回。「なかよくしような」「おれの親友に」「きょうだいよ」が1回ずつ。

このように、ジャイアンにとって「心の友」は、いちばんの夢であり、弱点である「歌手」への一途な思いを応援し、励まし、能力を認めてくれる人物ということは明らかだった。
(田幸和歌子)