彦根の銘菓は「バルブ」なのです
名前も見た目もユニークな、この「バルブもなか」、彦根市内のホテルやお土産、風月堂の店頭にて入手可能。1個100円、10個入は1100円。地方発送も可能です。
滋賀県彦根市に、とてもパンチある響きの銘菓がある。
「バルブもなか」。


もなか。最中。
言うまでもなく、あんこを、あのカサッとパリッととした皮ではさんだ和菓子の代表だ。そんなもなかが、バルブ。管を開けたり閉めたりするのに使う、あのバルブだ。
もなかなのにバルブなのか、バルブなのにもなかなのかは知らんが、ともあれ、ふたつがくっついちゃったことで、ものすごくステキな響きが生まれていることは間違いない。
高知銘菓の「エチオピアまんじゅう」に匹敵する語感だ。試しに口に出してみるといい。
「バルブもなか」。
濁音がまた、いい、たぶん。「声に出して読みたい日本語」なのでしょうか。

この「バルブもなか」、実は結構歴史あるお菓子で、発売されたのは1960年ごろなのだという。

なぜバルブを菓子にしたのかというと、それが彦根の地場産業だから。
市内にある、製造・販売元の風月堂によると、
「地場産業である『彦根バルブ』をPRでき、なおかつ彦根土産になるようなものをと考えて考案しました」
とのこと。

その彦根でのバルブ産業は、もともとは明治時代に門野留吉さんという、金属のかんざしを作る職人さんが興したものであるらしい。お菓子についている説明によると、こうだ。
「その動機は、知り合いの人から、ボイラーにとりつけるカランの制作をたのまれた為とも、大阪の金属器具商から、彦根付近にあった製糸場のカランの修理、制作をすすめられた為ともいわれている」
ともあれ、日本の近代工業化にともなって、このバルブ産業が発展し、全国でも有数のバルブ生産地になっていったというわけだ。

こうして、なんとも珍しい、バルブをモチーフにしたお菓子が誕生したわけだが、苦労したのは、やはりその「形」なんだそうだ。

「バルブ上部のコック部分をどのようにあらわせばよいか、という点ですね。焼き型から抜きやすく、餡を詰めるときやお持ち帰りの際に壊れにくい形ということも考慮しています」

厳選した北海道産の小豆を使用し、
「食べ口が程よい甘さでありながら、食べごたえのある味に仕上げております。また、餡子のやわらかさも好評いただいております」
と言う通り、しつこくもなく、物足りなくもない、ちょうどいい甘さ。バルブという、硬質なモチーフなのに、ふんわりとやわらかく、お茶がおいしくいただけます。

もちろんこれで開閉などはできるわけはないですが、彦根のお土産に、ぜひ。
(太田サトル)

※有限会社 風月堂
滋賀県彦根市銀座町5-7
TEL:0749-22-0035