電話機の記号と数字には、細かい世界基準があった
これが、「世界基準」なわけです。こんな厳密に決められている基準なんですね。
2006年の携帯電話出荷台数は世界で10億台を超え、07年8月の時点で、携帯電話を使っている人の合計は約30億人にのぼるという。
03年末の利用者数が約13億5千万人だから、とんでもないスピードで増え続けているわけだ。


ただ、これだけたくさんの電話機が普及しているのに、ボタンに描かれた12個の数字と記号は、どの電話機も変わらない。
フォントや大きさは違うけど、数字の「1」が漢数字だったり、別の記号を使っているような電話機はない。
一体どうしてなんだろうか。

先日、電話の“#”はシャープ(♯)じゃなく“スクエア”っていう名前であること、“*”(正確にはこれを90度回転させたもの)は米印じゃなく“スター”であることを紹介した。これらの呼び方は、世界191カ国が加盟している国際電気通信連合(ITU)の「勧告」の中で書かれている。あらゆる通信技術の国際的な決まりが書かれている書面だ。
「数字や記号については、勧告の中で世界基準が示されています。数字は算用数字(アラビア数字)であることが基本で、漢数字やローマ数字は好ましくありません。あと記号は、#の形についての細かい基準があるんですよ」(財団法人日本ITU協会)

数字も記号も、世界基準として決められているものだった。では、その“#の形の基準”って何だろう。
「“#”の形には2つのパターンがありまして、1つは縦線が傾いているもの、もう1つはすべてが直角に交わっている正方形のものです。その両方ともに、縦線の斜め加減や、交差した線の出っ張り部分の長さが細かく決まっているんです」

詳しく聞くと、以下のことが書かれているという。

・縦線と横線は同じ長さ
・縦線が傾いている“#”の場合、縦線と横線は80度で交わり、出っ張り部分の長さは線の長さの18%
・正方形の“#”の場合、縦線と横線は垂直に交わり、出っ張り部分の長さは線の長さの8%
とんでもなく細かい世界基準だ。ただ、これによってどんな電話機でも使いやすいよう、作られている。JISにはない、電話機独自の細かい基準。

また、“*”はスターと呼ぶにもかかわらず、分かりやすい形だからか“#”ほど細かい基準がない。“*”から90度傾いている図が定義されているものの、長さの基準はない。電話を使うときも“#”の方がたくさん使われる気がするし、なんだかスターなのにかわいそうだ。

というわけで、せっかくなので、とりあえず定規か何かで“#”の線の長さを測ってみてはいかがでしょう。定義された形に近い“#”になっているはず。

ちなみに、“#”の呼び方が“スクエア”と定義されつつも“シャープ”と呼んで問題ないのと同じで、今日挙げたものもあくまで基準というレベル。
手元の電話機が世界基準と違うときは、少しデザインを優先させた結果だと思ってください。
(イチカワ)
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