ATMはなぜ8時45分から手数料無料?
“45分”というハンパな時間には、日本らしい理由がありました。
何万円もの服を買った帰りに半額の惣菜を買ってみたり、高級車で1円でも安いガソリンスタンドを探してみたりと、ムダなお金は出したくないっていうのが今の日本の風潮。
僕の場合、そのひとつが銀行ATMの時間外手数料。
引き出すだけで105円や210円かかるのは悔しいから、いつも無料の時間帯にお金を引き出している。

そんなとき、手数料無料の時間帯を確認しながら、ふと不思議に思うことがある。それは、どうして午前8時45分っていう中途半端な時刻に、手数料が無料になるのかってこと。
日本らしい細かい時間設定とはいえ、この微妙なチューニングはどうして生まれたんだろうか。多くの銀行が、この時間で統一されているのはなぜなんだろう。

各都市銀行に聞いてみると、どこからも似た答えが返ってきた。
「昔からの名残ではないかと思いますが、明確な理由は分かりません。9時に出社する人が出社前に使えるよう……など考えられますが、実際の理由は不明です」
たぶん利便性の確保っていう推測で正しいんだと思う。ただ、どの銀行でも断言してくれる人はいなかった。

そこで、昔の新聞記事を調べてみた。すると、ATMよりも前の、現金自動支払機(キャッシュディスペンサー:CD)の時代にヒントがあった。

日本で初めてCDが導入されたのは、1969年12月。
住友銀行(現・三井住友銀行)によるもので、このときの営業時間は、平日午前9時〜午後5時と、土曜午前9時〜午後2時だった。すべて手数料無料で、それ以外の時間は閉まっていたという。

それが78年10月24日、ここでも住友銀行が先陣を切り、他行と話し合ったのちに営業時間を延長。東京23区・大阪市・名古屋市限定で、店外CDの営業時間を、平日午前8時45分〜午後6時に広げた。

さらに86年7月28日、都市銀行や地方銀行が一斉に、夜の営業時間を平日午後7時までに延長。このとき初めて手数料が登場し、延長した1時間だけ、1回あたり100円徴収するようになった。銀行の収益源のひとつとして、さまざまなサービスの手数料が考えられていたようだ。
その後、営業時間は朝にも夜にも延びていき、日祝日の営業も開始。延びた時間帯でやはり手数料をとるようになり、今に至っている。

つまり、もともとCDやATMには手数料が存在していなくて、午前8時45分から午後6時までが営業時間だった。そこから時代とともに営業時間が拡大し、延びた分の時間帯で“時間外”の手数料が生まれたってわけだ。

9時じゃないのは、出社前に使いたい利用者のため。

8時半に拡大されなかったのは、手数料収入を期待している銀行のため。

推測ではあるけれど、そんな理由にやっぱり日本らしさを感じている。
(イチカワ)
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