2026年5月22日(金)、都内にてルミナス・ビー・ジャパン株式会社がドライアイに関する正しい理解の促進を目的とした「ドライアイ疾患啓発メディアセミナー」を開催。セミナーには眼科医で、大阪大学 視覚先端医学 寄附講座 准教授・高静花氏が登壇し、日常生活の中で見過ごされがちな目のサインから、ドライアイの原因、放置によるリスク、そして予防・治療の考え方まで紹介された。

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高静花氏

日本人の「5人に1人」がドライアイの可能性が

まずは高氏が、ドライアイが隠れている可能性がある日常の場面を紹介。

「1日中デスクワークをして、夕方になってくると肩も凝り始めて、帰宅してスマホやパソコンで食事会の店を探したり、SNSの動画を見続けているうちに深夜になって、目が乾いたり、赤くなったり、ゴロゴロしたり、涙が出たり、かすんで見えたり……という症状が出ることはあると思います。原因はさまざまありますが、ドライアイが隠れている可能性があります」

高氏によると、驚くことに日本全国でドライアイの患者は2200万人以上いると言われており、さらに半分以上がドライアイの診断を受けていない“隠れドライアイ”の状態にあるという。「『ちょっと疲れ目かな?』と思っていても、実はドライアイだったという可能性も考えられます」と指摘した。

ドライアイ患者の多くが診察を受けていない理由として、治療を必要とする病気として認識されていない可能性について言及。そのうえで、涙のメカニズムについて解説した。

「涙は単なる液体ではなく、油層と水とムチンの液層に大きく分かれます。涙の一番外側の層が油層で、液層が乾いたり蒸発したりしないようにコーティングしています。液層のムチンはいわゆる納豆のネバネバ成分と同じで、角膜や結膜に涙を留める役割を果たしています。油層と液層のバランスが崩れるとドライアイになります」

分類としては「水が足りないタイプ」と「油が足りないタイプ」に大別され、アメリカの研究結果では、油が足りず蒸発しやすい「蒸発亢進型」のドライアイが多いことが示されている。

ドライアイの多くの原因である蒸発亢進型に関係するのが、「マイボーム腺機能不全(MGD)」だ。マイボーム腺は、まぶたの縁に上下合わせて40~50個ほど(ひとつのまぶたに20~25個)が並び、油を分泌している。この油の出口(開口部)が詰まったり機能が悪化したりすることでMGDを引き起こすという。

高氏は、「いわゆるアイラインやマスカラなどのメイクがマイボーム腺の開口部に付着し、脂の分泌を低下させる可能性があります。また、メイク落としが不十分でゴシゴシこすると炎症が起きて、マイボーム腺が詰まりやすくなります。まつげエクステなども接着剤の使用や長時間の装用が、まつげの根元やまぶたの縁に負担をかけるため、関連してくることが指摘されています」とコメント。女性の美容習慣が目元の環境に関係しており、近年眼科領域と美容領域の両方から目元環境への関心が高まってきていることを明かした。

その他のマイボーム腺機能不全の主要な要因として挙げたのは、以下の2点。

ひとつ目は、デジタルデバイス(VDT作業)とまばたき不足だ。

デジタルデバイスを用いたVDT作業は、紙の印刷物の作業と比べて不快症状や「不完全なまばたき」が増えることが知られており、まぶたがしっかりくっつかないことで涙腺から涙を、マイボーム腺から油を分泌するポンプ作用が起きにくいという。高氏は「タブレットよりもスマホのようにデバイスが小さくなればなるほど『不完全なまばたき』が増えることも知られています」とデバイスのサイズによるまばたきの違いについても解説した。

「不完全なまばたき」が増えると、目の表面が完全に覆われないことで乾燥した状態が続き、角膜に傷もできやすいという。

2つ目は、まつげダニ(デモデックス)だ。まつげの根元に生息するニキビダニの一種で、目のかゆみや違和感の原因として注目されており、アメリカでは眼科受診患者の約60%にダニに関連する所見があったと報告されているという。その他、加齢や性ホルモン、感染症、炎症、アレルギーなどもマイボーム腺機能不全に関係しているそうだ。

日本人の「5人に1人」がドライアイの可能性。あなたは大丈夫? ドライアイセミナーレポート

高静花氏

ドライアイを放置したらどうなる? 予防方法・治療方法もご紹介

ドライアイを放置すると、どのような影響があるのだろうか。

まず、挙げたのが「見え方の質の低下」について。高氏は、「目の表面に傷ができると、光をキャッチする面が荒れて、視力1.0なのに見え方の質が悪くなることがある。視力検査のときに強くまばたきすることで瞬間最大風速的に視力は出るものの、実生活では、特に夜間やコントラストが悪い状況で顕著になります」と指摘した。

もうひとつは、「重症化による合併症や日常生活への影響」について。「軽度から中等度では角膜の下の方に傷が典型的に出ますが、重症化すると角膜全体に傷が広がることがあります。糸状のものが角膜につくと、まばたき時に非常にゴロゴロして痛みを伴うことがあります。また、傷がある状態は細菌感染のリスクも高めますし、コンタクトレンズの装用やまつげエクステが困難になったり、集中力や労働生産性、さらに睡眠の質が低下したりすることもあります」とコメント。

そして、ドライアイ患者はそうでない人と比べて抑うつ傾向があることが報告されていることも付け加えた。

では、ドライアイを予防することはできるのだろうか。もし「自分はドライアイかもしれない」と感じたらどうすればいいのだろうか。

高氏が紹介した自宅やオフィスなどでできる対策方法は以下の通り。

・VDT作業環境の改善
パソコン画面は、目線よりも下向きに配置し、目を見開くのを抑え、蒸発する面積を減らす。

・20-20-20ルール
20分作業したら、20フィート(約6メートル)先を20秒間見ること。

・まばたきの意識改善
「不完全なまばたき」を避けるため、意識的にしっかりとまばたきをしていくこと。

・温罨法
ホットアイマスクなどでまぶたを温めること。脂が温かくなって分泌されやすくなるため、脂の流れの改善に有効だとされる。

・リッドハイジーン(眼瞼清拭)
まぶたのクレンジングで目元をきれいに保つこと。

・インテリア環境改善
加湿し、エアコンの風が直接目に当たらないようにすること。

・生活環境の見直し
個々の目に合ったコンタクトレンズへの見直しとケア、適切な美容習慣を実践すること。

そのうえで「自分はドライアイかもしれない」と感じたら、眼科での治療をおすすめするという。

高氏「眼科での基本的な治療方法は点眼治療になります。ドライアイのタイプにあった点眼薬が処方され、涙を補う治療がなされます。もし、点眼では追いつかない重症の場合は、涙点プラグという涙の出口である涙点に栓を入れ、涙を溜める治療が行われるケースもあります。

そして、最近では「IPL治療」というカメラのフラッシュのような光を用いた新しい治療法が取り入れられています。元々美容医療で使われていましたが、MGD関連のドライアイへの活用が進んでおり、炎症や血流にアプローチしてマイボーム腺から出る脂の流れを改善します」と解説した。

髙氏が改めて『ドライアイは改善される病気です』と発信した通り、この疾患が単なる目の乾きにとどまらず、集中力や睡眠、さらにはメンタルヘルスまで脅かす可能性があることを示唆した。日々の適切なセルフケアに加え、症状に応じた専門的な治療を受けることによって、「隠れドライアイ」も含めた多くの人々が目の快適さ、そして質の高い日常生活を取り戻すことが可能になるはずだ。

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