映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』が4月24日より日本で劇場公開されます。

同作は公開からわずか12日間で全世界累計興行収入が1000億円を突破する超大ヒットを記録。
前作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界興行収入は2000億円を超え、日本でも約140億円を叩き出しており、そちらの記録に迫れるか、超えるかにも注目が集まっています。

■前作も今回も「評論家からは賛否両論」だけど「一般の観客からは大好評」
そんな本作で興味深く、また話題になっているのは、前作に続き評論家の評価が割れている一方で、一般の観客からは大好評という評価になっていること。

実際にアメリカの批評サービスであるRotten Tomatoesを見てみると、前作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は評論家59%に対し一般が95%。今回の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』は評論家43%に対し一般が89%という割合になっています。

それでいて、その評論家の賛否両論をネガティブに捉えすぎる必要はまったくなく、「子どもから大人まで分け隔てなく楽しめるゴールデンウィークに観る映画の決定版」「前作が好きな人は今回も大いに楽しめる!」と断言できる理由もあったりするのです。本編の大きなネタバレのない範囲でまとめていきましょう。

■「評論家の低い評価が追い風」になる理由は?
前作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』では評論家からの賛否が興行的にマイナスの影響を与えたわけではなく、むしろ人気や知名度の後押しになったのではないか?という見方があるのです。

実際に、マリオの“生みの親”のゲームプロデューサーであり、映画の製作にも関わっている宮本茂は、前作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の時点で、「大ヒットをしている今の気持ち」および「海外の反応などでおもしろかったこと」として、以下の発言をしているのです。

「評論家がけっこう低い評価をしているということで、「評論家がずれているんじゃないか?」みたいな意見が追い風になってくれたりもして。僕としては「映画の定義が変わった」とか言ってもらえたらうれしいなと思っています。

出典:ファミ通.com/映画『スーパーマリオ』宮本茂氏インタビュー」

こちらのインタビューでは、「いいものが埋もれることなく選んできてもらったのが任天堂の歴史」や「マリオはお父さん世代の人たちだけではなく、その子どもたちにも知ってもらえている」ことなど、マリオというIPの絶大的な人気も語られています。

その長年で培われた人気は「ファンの熱量」になり、それがあればこそ、評論家のネガティブな評価さえも、さらにコンテンツが盛り上がる理由へと変わるというのは、なるほど「映画の定義が変わる」ほどのものなのかもしれません。


■「キャラクターのパレード」は褒め言葉にもなる?
一方で、筆者個人は決して「評論家がずれている」とは思えない、それどころか的を射た批評をしており、それは裏を返せば作品の魅力そのものではないか? と思う部分もあります。

実例として、今回の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』に対しての、「WBOC」のネガティブなレビュー記事の一部を抜粋してみましょう。

「ピクサー作品ではドラマチックなストーリーと感傷的な要素を重視していますが、残念ながら本作はそうした要素に関心を示しておらず、空虚で中身のない印象を与えてしまいます。さもなければ、この映画は熱狂的なファンである観客に拍手喝采を浴びせるための、任天堂ゲームのキャラクターたちのパレードに過ぎないでしょう。

出典:Movie Review - The Super Mario Galaxy Movie | The M Report | wboc.com」

ほかにも、同レビューでは「設定が無理やりすぎではないか」「キャラクターの登場が“ファンサービス優先”になっていないか」など、総じて「多すぎる設定やキャラクターが、物語として有機的に機能していない」ことを批判されています。

その特徴はなるほど「映画の物語として考えると空虚にも思えてしまう」「ゲームのキャラクターのパレード」のようなものかもしれませんが……いやいや、そのパレードって、実際に観てみれば楽しいのでは?と思えるのです。
『マリオ』新作映画が「評論家からの賛否が分かれている」けど「心配ない」と言えるワケ
(C) 2025 Nintendo and Universal Studios. All Rights Reserved.
実際に筆者が今回の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』を見た時の感想はストレートに「めっちゃ楽しい!」でした。何しろ感傷的な要素は最低限で、次から次へと原作のキャラクターが登場して、それぞれの掛け合いも小気味が良くてクスクス笑えて、何よりゲームを再現したギミックやきらびやかな世界が次から次へと展開して……などと、停滞しているシーンは全くない、まさにパレードのような内容なのですから。

それらの特徴は精緻に物語を組み立てているピクサー作品とは確かに異なる、クレイジーなまでの勢いのあるアニメの演出が魅力のスタジオ・イルミネーションの「らしさ」でもあります。

矢継ぎ早な編集や目まぐるしいアクションは、ゲームが好きな人はもちろん、ショート動画を見慣れている世代でも全く退屈させない、「今の時代のエンタメ」であると思えました。
『マリオ』新作映画が「評論家からの賛否が分かれている」けど「心配ない」と言えるワケ
(C) 2025 Nintendo and Universal Studios. All Rights Reserved.
とはいえ、「キャラクターが多すぎて物語や設定が無理やり」という批判が的を射ていると思ったのも事実。具体的には「あの展開からマリオがピーチ姫を追う流れになるのは不自然では?」「ロゼッタのゲームとは異なる設定や過去の描き方はさすがに強引では?」と筆者個人としても思ってしまいました。


しかし、それでも「クッパJr.と父親クッパの関係」と「ピーチ姫が自分のルーツを探す旅」という対比のある物語構造そのものと、キャラクターそれぞれ(特にロゼッタ)の感情の揺れ動きは、とても面白く仕上がっていたと思います。
『マリオ』新作映画が「評論家からの賛否が分かれている」けど「心配ない」と言えるワケ
(C) 2025 Nintendo and Universal Studios. All Rights Reserved.
何より前述した批評でいうところの「ゲームのキャラクターのパレード」が超特急で、いや暴走特急で走り抜けていくような「勢い」があったので、細かいツッコミどころや無理やりさはそれほど気にならない、それどころか「この荒っぽさで満点のサービスを楽しませてくれ!」な領域になっていると思ったのです。

■「映画の定義が変わる」ほどの魅力がさらに進化していた
先に挙げた前作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のインタビューで、宮本茂は「ゲームは自分が積極的に考えて遊ぶからこそ面白いのであって、受動的に観る映画とは異なる」ことを前提として、「ゲームで経験したアクションを本当のように見せてくれるシーンがほしいということをすごく大事にした」「たくさんのゲームの楽しさを詰め込むのには時間がかかった」という趣旨の発言をしており、ほかの映画とは異なる製作のプロセスがあったことも分かります。

『マリオ』新作映画が「評論家からの賛否が分かれている」けど「心配ない」と言えるワケ
(C) 2025 Nintendo and Universal Studios. All Rights Reserved.
その結果として完成した映画本編も、まさに「ゲームの魅力を詰め込んだ」作品でした。それでいてゲームを知らないと楽しめないということもなく、映画という受動的な媒体かつ、作り込まれたアニメでこその「圧倒的なアクションと世界観」をたっぷりと「体感」できる内容といえます。

その意味では、IPの人気だけでなく、内容そのものでも「映画の定義が変わった」ほどのものだったのです。

「ゲームの魅力を詰め込んだ上に映画として体感できる」前作の魅力は、今回の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』でさらにパワーアップしていました。「あのゲームのあの場面だ!」「え!?あのゲームをそんな表現にしてしまうの!?」「それも本気でやってしまうんだ!」といった驚きと興奮はゲームファンこそマシマシになるでしょうし、ゲームを全く知らない人でも多彩なアイデアをたっぷりと楽しめるでしょう。

個人的に注目してほしいのは、さらにバラエティー豊かでゴージャスになったアクションと世界観もさることながら、「よりダイナミックになったカメラワーク」と「星の輝きの美しさや炎の強さがわかるライティング(光と影の表現)」でした。それらも間違いなく「前作超え」をしたクオリティーなのです。
『マリオ』新作映画が「評論家からの賛否が分かれている」けど「心配ない」と言えるワケ
(C) 2025 Nintendo and Universal Studios. All Rights Reserved.
そうしたファンサービスや見せ場が前作に勝るてんこ盛りになったぶん、やや「勢い任せ」な物語になったこともまた否定はできませんが、それもまた「楽しい!」と思える理由にもなっていると思うのです。ぜひお子さんから大人まで、エンドロールの最後まで(おまけがあります!)楽しまれることを期待しています。


この記事の執筆者: ヒナタカ
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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