塾選ジャーナルでは、全国の高校生104名を対象に「行き渋り」や「対人疲れ」に関する意識調査を実施しました。
勉強や部活動以上に、令和の高校生たちを悩ませている「対人疲れ」。SNSを通じて24時間どこにいてもつながり続けてしまう “時間制限のない交友関係”の中で、学生たちはどれほどエネルギーをすり減らしているのでしょうか。
本記事では対人関係で消費する心のエネルギー 「ソーシャル・バッテリー」の消耗や愛想笑いのリアル、そして令和の高校生たちがどのように回復しているのかを読み解きます。
■高校生の約8割が「学校に行きたくない」と感じた経験あり
普段の学校生活の中で「学校に行くのが面倒くさい」「なんだか行きたくない」と感じることがあるか尋ねたところ、「よくある(47.1%)」と「ときどきある(33.7%)」を合わせて80.8%に達しました。実に10人中8人の高校生が、日常的になんらかの行き渋りを感じていることになります。
▼月曜日と長期休み明けに行き渋りが集中「学校に行くのが面倒くさい」「なんだか行きたくない」と感じるタイミングについて詳しく聞くと、最も多かったのが「週の始め(月曜日など)(57.1%)」でした。
次いで「長期休みの前後(44.0%)」、「定期テストの前後(35.7%)」と続きます。日常のサイクルに戻るタイミングや、大きなプレッシャーがかかる時期に、心理的なハードルが高まる傾向が顕著です。
▼行きたくなさの背景には「朝のつらさ」「課題負担」「クラスでの気疲れ」どういった理由で「学校に行きたくない」と感じるのでしょうか。主な理由について複数回答で聞いたところ、1位は「朝起きるのがつらいから(45.2%)」でした。2位は「テストや課題の負担が大きいから(44.0%)」、3位は「クラスメイトとの人間関係に気を遣うから(41.7%)」で、上位3項目はいずれも40%を超えています。
これらの結果から、睡眠・学業・人間関係という3つの負担が絡み合い、高校生の登校意欲に影響を与えていることが分かります。
■6割以上の高校生が「対人疲れ」。背景にある24時間営業のような社交状態
学校生活の中で「もうこれ以上はしんどい」と感じることが「よくある」と回答した高校生は26.0%、「ときどきある」が34.6%で、合計60.6%が対人疲れを経験していると回答しました。過半数の生徒が、日常的なコミュニケーションの中で限界を感じていることがうかがえます。
▼海外で浸透する「ソーシャル・バッテリー」とはこうした「もうこれ以上、人と関わるのはしんどい」「誰とも話したくない時間がある」という状態を表す言葉として、海外のSNSを中心に「ソーシャル・バッテリー(Social Battery)」という概念が広く使われています。
これは、人と関わるために必要なエネルギーを「充電式の電池」に例えた言葉で、欧米では会話の中で「My social battery is drained.(ソーシャル・バッテリーが切れた)」と伝えて予定を切り上げるなど、自分の心を守るための身近な概念として浸透しています。
まさに今の日本の高校生たちは、この"目に見えない電池"を激しく消耗させている状態と言えます。
▼「1人になった瞬間に……」常に気を張る高校生たち自由記述からも、学校生活で常に気を張り、バッテリーを消耗している様子がリアルに伝わってきます。
「 1人になった瞬間に疲れが一気にくる(埼玉県・高1男子)」
「人の表情や感情の動きなどに敏感で、顔色を伺いながら生活してる(埼玉県・高3女子)」
「基本的に人と話すと疲れる。相手のテンションに合わせて盛り上げたりすると疲れる(東京都・高2女子)」
人とコミュニケーションをとる中でその場の空気を壊さないために心をすり減らし、ソーシャル・バッテリーを消耗している様子が伝わってきます。
▼放課後・休日もSNSでつながり続け、2人に1人がバッテリー切れその消耗は学校内にとどまりません。「帰宅後や休日でも、LINEやSNSで人とつながっていることで『ソーシャル・バッテリーが削られている』と感じる」と答えた生徒は51.9%となりました。
一昔前は、校門を出れば「学校の人間関係」からは解放されていました。しかし現在は、帰宅後もSNSを通じてクラスの空気感や友人との会話が続きます。
「1人になってもバッテリーを充電できない」という“24時間営業”のような社交状態が、高校生たちの慢性的なエネルギー不足を引き起こしている要因と言えるでしょう。
■高校生のバッテリーを最も急激に消費させる要因は、周囲への「無理な同調」
学校生活で相手に気を遣い「無理して笑った」経験が「ある」と回答した高校生は38.5%、「ときどきある」も同じく38.5%で、合計77.0%が愛想笑いを経験していました。多くの高校生が、日常の中で感情を押し込みながら笑顔をつくった経験があることがうかがえます。
さらに、愛想笑いをしたことがある人の中で「自然な会話より疲れる」と答えた高校生は72.7%に上りました。その場の空気を壊さないために無理に反応を続けることが、強い消耗につながっている様子がうかがえます。
実際、自由回答でも、笑顔の裏にある気疲れを訴える声が寄せられました。
「ずっとニコニコしてたら『人生辛いことなさそうよね』って言われて。好きでずっとニコニコしてるわけじゃないのにって思いながら毎日を過ごしていました。トイレなど1人になれるときに真顔になったり、疲れが一瞬で押し寄せてきました(広島県・高3女子)」
無理して笑うことは、その場を円滑にやり過ごす手段である一方、1人になった瞬間に反動のような疲れを生むこともあるようです。
▼最も愛想笑いが起きる場面は「興味がない話に合わせるとき」具体的にどういった場面で「愛想笑い」が必要になっているのでしょうか。
愛想笑いが起きやすい場面を複数回答で尋ねると、最多は「愚痴や自慢など、興味がない話に合わせるとき」で60.0%にのぼります。次いで「親しくない同級生と話すとき」50.0%、「いじりや冗談を本当は嫌だけどやり過ごすとき」45.0%、「先生や先輩など目上の人と話すとき」41.3%という結果でした。
▼愛想笑いでやり過ごすしかない瞬間自由回答からも、愛想笑いが必要になる場面の切実さが伝わってきます。
「他人の悪口を聞かされた時に、否定したら別の場所で悪い事を言われるなと感じて愛想笑いをせざるを得なかった(神奈川県・高3女子)」
本当は同意したくなくても、その場で否定すれば自分が不利になるかもしれない。そうした空気の中で、笑ってやり過ごすしかないと感じる高校生は少なくありません。
また、教室内の人間関係の微妙な距離感も、気疲れの大きな要因になっていました。
「三人組で、私以外の2人が仲良くて知らない話をしてるから(福島県・高3女子)」
「 仲のいい2人組と自分で3人グループを作らされた時は疲れた(長野県・高1女子)」
「 相手が明らかに自分と関わりたく無さそうにしているのを横目に見ながら、それでもグループワークで会話しなければならない時(東京都・高1女子)」
こうした声から見えてくるのは、目立ったトラブルがなくても、教室の中では常に空気を読み続ける負担があるということです。
波風を立てないように振る舞い、自分が浮かないように気を配り続けることが、高校生のソーシャル・バッテリーを大きく消耗させていると考えられます。
■高校生が実践するソーシャル・バッテリーの回復法
限界まで削られたエネルギーを、高校生はどうやって回復させているのでしょうか。
ソーシャル・バッテリーを回復させるためにやっていること・やりたいことを複数回答で尋ねたところ、1位は「音楽を聴く」(57.7%)、2位は「好きなこと・趣味に集中する」(53.8%)でした。
3位「スマホやSNSを見る」(46.2%)、4位「動画・配信を見る」(44.2%)、5位「寝る・横になる」(43.3%)と続き、他者との交流を通じてストレスを解消するのではなく、「1人の時間に没頭できる」活動が上位を占めました。
学校で「愛想笑い」という感情労働をこなしてエネルギーを消費している分、その回復には「他者の目を気にせず、一切気を遣わなくて済む時間」が不可欠になっていることがうかがえます。
■高校生が感じる対人疲れ、保護者に知ってほしいこと
今回の調査から、現代の高校生は常に周囲との調和を優先し、オンライン・オフライン問わず「ソーシャル・バッテリー」を激しく消費させている実態が浮かび上がりました。
保護者に知っておいていただきたいのは、「学校に行きたくない」という訴えは、怠けではなく「バッテリーの残量がゼロになった」という警告かもしれないということです。
SNSが発達した現代では、学校の外でも"つながり"が途切れず、休息を取りにくい環境が続いています。高校生が「音楽を聴く」「趣味に集中する」などひとりで完結できる回復法を選ぶ背景には、静かに1人でいられる時間への切実なニーズが垣間見えます。
もしお子さんが帰宅後に1人で部屋にこもっていたら、それは外で使い果たしたソーシャル・バッテリーを充電している、大切な「回復の時間」かもしれません。
保護者は、子どもが見せる疲れのサインを見逃さず、1人の時間を大切にさせてあげることが、日々の回復につながるかもしれません。
■アンケート調査概要
調査対象:全国の高校生(有効回答数104名)
調査時期:2026年3月30~31日
調査方法:インターネットを使用した任意回答
調査リポート名:「高校生の対人疲れに関するアンケート」
※掲載しているグラフや内容を引用する場合は「塾選ジャーナル調べ:「高校生の対人疲れに関するアンケート」と明記し、『塾選ジャーナル』(https://bestjuku.com/shingaku/s-article/53521/)へのリンク設置をお願いします。
この記事の執筆者:塾選ジャーナル編集部
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