中学受験の塾に通い始め、宿題の難しさに親子で途方に暮れてしまう……。そんな光景は珍しくありません。
実はその原因、お子さんの能力不足ではなく、塾で使用している「テキスト」が目標に対してオーバースペック過ぎることにあるかもしれません。

合格実績だけで塾を選びがちですが、実は「テキスト選び」こそが合否を分けるポイント。

今回は、『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジ)など多くの著作を持つ中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表の西村則康先生に、主要テキストのレベル感と、志望校に見合った塾の選び方の極意をお聞ききしました。

■偏差値60までなら「新演習」が実は最強の選択肢?
多くの中小塾や個人塾では、四谷大塚が制作する「予習シリーズ」が採用されています。中学受験界の老舗が作る、圧倒的なブランド力と信頼があるテキストです。

しかし、ここで注目したいのが、栄光ゼミナールなどで使われている「新演習シリーズ」です。

筆者が数年前に取材した際は、塾側から「偏差値60までの学校に対応している」との説明を受けました。一般的に偏差値60以上の学校を難関校と呼び、それ未満の学校を中堅校と呼びます。そのため「新演習は中堅校向けのテキストということだな」と理解しました。

ところが近年、このテキストは改訂を重ねて非常に内容が充実し、難易度も底上げされています。今や「これを完璧にすれば、偏差値60以上の難関校も狙えるのでは」と感じるレベルに進化しているのです。

西村先生は、「新演習」をこう評価します。


「新演習は幅広い難易度の問題が豊富に載っています。それでいて超難問や奇問が省かれているため、着実に基礎学力を高めるのに適しています。

実は、この内容をしっかり仕上げれば、御三家受験の素地を作ることも十分可能です。特に女子校であれば、難関校でも新演習の内容で十分対応できますし、女子学院とは非常に相性がいいテキストだと言えます」

例えば、個別指導塾で「新演習」を使って基礎を完璧にし、6年生から大手塾の志望校特訓に合流して御三家に合格する、といった戦略も現実的なのです。

■「偏差値45まで」なら、さらにコンパクトな教材で十分
個別指導塾などでよく見かける「新小学問題集シリーズ」(教育開発出版)についても見ていきましょう。

「新小学問題集は、内容が非常にコンパクト。解法などの解説が省かれている部分もありますが、その分、総復習をする際には非常に使いやすい構成です」

実際、ある中堅塾では小学6年3月までにこの「新小学問題集」の6年生テキストを一通り学習させ、その後「新演習」へステップアップするというカリキュラムを組んでいます。

つまり「新小学問題集」は、「新演習シリーズ」をより基礎的にしたテキストと言えます。

「目指す学校が偏差値45ぐらいまでであれば、無理に難解なテキストに手を出さず、この『新小学問題集』を完璧にするだけで十分合格を狙えます」

■「予習シリーズ」は、4年生から記述も鍛える難関校専用
では、王道の「予習シリーズ」はどうでしょうか。

「予習シリーズは難関校対策に向いたテキストです。説明の丁寧さに定評があり、カラー印刷で見やすいのが魅力です」

ただし、注意点もあります。例えば国語。
小学4年から記述の問題が多く入ってきます。ここが「新演習」や「新小学問題集」と違うところで、桜蔭や男子御三家などの難関校対策を強く意識した内容になっています。

今回は中学受験の主な教材である「予習シリーズ」「新演習シリーズ」「新小学問題集シリーズ」の3つを紹介しました。

それぞれに特徴があり、それを把握した上で「どのテキストを使っているか」を塾選びのポイントにしたいところです。また、SAPIXや日能研などのオリジナルテキストを使う塾に通っていても、「予習シリーズ」や「新演習」を自習用の参考書として活用することもできます。

しかし、このテキスト選びを間違えると、中学受験で最大の敵となる「オーバースペック」という問題に直面することになるのです。

西村 則康さん プロフィール
名門指導会代表、中学受験情報局主任相談員、塾ソムリエ。30年以上、難関中学・高校受験指導を一筋に行う家庭教師のプロフェッショナル。ひとつの解法を押しつけるのでなく、その子に合った方法を瞬時に提示する授業で、毎年多数の生徒を最難関中学の合格に導く。著書に『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジ)など。

この記事の執筆者: 杉浦 由美子
キャリア20年の記者。『女子校力』(PHP新書)、『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)など単著は14冊。
『ダイヤモンド教育ラボ』、『ハナソネ』(毎日新聞社)『マネーポストWEB』(小学館)などで取材記事を寄稿している。趣味は取材。
編集部おすすめ