子育て中の親世代の中には、子どもがYouTubeに夢中で「このまま見せ続けていいの?」と不安を抱えている方もいるでしょう。

瀧靖之さんの著書『夢中になれる子の脳』では、子どもが夢中になれるものの見つけ方や好きなことの伸ばし方をQ&A方式で詳しく解説しています。


今回は本書から一部を抜粋し、親世代の身近な悩みに寄り添います。

■それはいい夢中?悪い夢中?
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Q:小さいながらもうちの子はすでにタブレットを自在にあやつり、YouTube大好き。このまま放っておくのはよくないですか……?

A:悪い夢中にならないように、「付き合い方」を学んでもらいましょう。
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夢中のベースは好きであるとお伝えしていますが、1つだけ注意が必要です。それは、夢中にも「いい夢中」と「悪い夢中」があるということ。何でも熱中していればいいわけではない、ということです。

「好き」には、見方を変えると依存的な側面もあります。たとえば、「お酒が好き」という人は多いですが、行きすぎたお酒好きは、あまり健康的ではありませんね。ギャンブルなども同様です。何でも「好きだからいいでしょ?」で通してしまうと、さまざまな不都合も生まれてきます。

端的に言うと、悪い夢中とは、生活に悪影響を与えるものにはまってしまっている、という状態です。睡眠不足になったり、お金が必要以上にかかったり。
日常生活を送るのに支障が出てくるような夢中。これは、好きというよりも依存に近い状態で、健康的ではありませんね。

依存とは、もはやそれが好きではないけれど、そこから逃げられなくなっている状態。やめたいのに、やめられない。そのような状況が、医学的には依存と定義されます。大人になれば、ある意味では自己責任の世界ですので、他人がどうこう言うようなことではないかもしれません。

しかし、子どもの場合には事情が違ってきます。子どもが悪い夢中にはまらないように、ある程度は親が見ておく必要があるでしょう。

■YouTubeは見させていいの?悪いの?
特にここ十数年ほどで、大きく変わったことがあります。テレビ番組、ネット配信のサブスクリプション、YouTube、スマホのアプリやオンラインゲームなどなど。身のまわりにはこうしたメディアがあふれていますね。

どこで覚えてきたのか、気づけば子どもたちも大好きになっています。
親としても、そういうものを見せておけばおとなしくしてくれているので、ついつい頼りがちになるかもしれません。

もちろん、それ自体が悪いということではありません。どうしても手が離せないときなどは、上手にメディアを使うのも現代的なテクニックでしょう。しかし、映像メディアやゲームなどは、その付き合い方を親が見極めておかないと、悪い夢中になってしまいかねません。

典型的なのは、「子どもがYouTubeばっかり見ている」という悩み。さらに小学校に上がっていけば、ゲームをする子も増えてきます。

そんなときの子どもの集中力にはすさまじいものがあります。その様子はまさに夢中で、放っておけば何時間でも映像を観たり、ゲームを楽しんだりしています。親としては、「これで大丈夫なのか?」と不安になるポイントでしょう。

結論から言うと、メディアから子どもを切り離すことはできないと考えたほうがいいでしょう。私たち大人がスマホを手放せないように、それは、「そこに当然あるもの」として考えるほうが自然です。

それを無理やり禁止したり、必要以上に遠ざけようとしたりしてしまうと、大きな反発が生まれてしまいます。
親としても、なんで言うことを聞かないんだ!とストレスを溜める要因にもなりますね。

■無理に禁止すると悪影響も
家庭環境で一番大事なのは、楽しい空間です。スキンシップや会話を通して、子どもは豊かな心、家族への愛情を持つようになります。ですから、子どもの心身の成長を考えると、「禁止」を強制することのほうが悪影響になってしまうかもしれません。

やることなすことガミガミ言われてばかりでは、どうでしょうか? 仕事や日常生活で、やることなすことぜんぶダメ出しばかり。そんなことが続くと、自分が認められていない気がしますよね。すると、やる気がなくなってしまいます。

やる気がなくなってしまえば、自分が本当に好きなものを探す気にもなれません。夢中に出会うチャンスを逃すことにもなってしまうのです。ですから、基本的には「さわっていい時間(スクリーンタイム)」を決めること。また、「宿題を終わらせてから」などのルールを決めること。ただこの際、親から一方的にルールを強制するのではなく、子ども自身で選んでもらう、ということを大事にしてみてください。


かつてはアルコール依存症などを治療するとき、「お酒のある生活から切り離す」という方法がとられてきました。しかし最近の研究では、対象物を切り離すよりも、日常にあるストレスを減らしていくことが有効だということがわかってきたのです。たとえば、人間関係の整理や、家族や友人との会話、運動や規則正しい生活、睡眠の量や質など。こうした生活環境を整えていくことが大事ということです。

そうすると、必要以上に何かに依存することがなくなっていくのです。気分転換にゲームをする、動画を観るというのは何の問題もありませんよね。何でもかんでもそれはダメ!ではなく、「それをやりたいんだね。わかった。じゃあそれなら……」と、やりたいことを認めてあげるようにすると、「悪い夢中」が生まれにくくなっていきます。

瀧 靖之(たき・やすゆき)
東北大学加齢医学研究所臨床加齢医学研究分野教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター長。医師。
医学博士。研究室では、脳の発達や加齢、認知機能の変化を、MRIを用いた大規模脳画像解析によって研究している。最新の脳研究と自身の子育ての経験をふまえ、科学的な子育てを提唱。書籍や講演、メディアを通して脳と健康に関する知見をわかりやすく発信している。
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