瀧靖之さんの著書『夢中になれる子の脳』では、Q&A方式で「好き」や「夢中」を大切にした子どもの育て方を解説しています。
■夢中の底には、「美」が宿っている
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Q:子育ての期間は長いようで短いとよく言われますが、究極的に、親が子どものためにできることって何だと思われますか?
A:「美しいもの」を見せること。一緒に体験すること。それに尽きるかもしれません。
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好奇心がある子は、どんどん夢中になっていく。ただ、子ども自身が好きなものを見つけるのは難しい場合も多いので(そもそも「好き」というのはあいまいなものなので)、基本的には親自身が好きなこと、得意なことをしてもらうといい。
夢中になっていった子は、その後の人生で、自分の新たに好きなものにどんどん出会い、得意なことが増えていきます。それは仕事であっても変わりません。
ただ、子どもの進んでいく方向性やものごとの進め方、人との関わり方の傾向などについては、もう1つ別の観点が出てきます。それが、「審美眼」です。
審美眼とは、簡単に言えば「何を美しいと思うか」ということで、人の姿形やアート作品、色彩といったことを思い浮かべるかもしれませんが、それだけではありません。
たとえば、木々や葉っぱ、花などの植物、犬や猫などの動物、昆虫や魚、建造物、ファッション、食べもの、車などの乗りもの、音楽、数式、スポーツ、ビジネスモデル、さらには椅子や机の形、木目やタイルの柄。
私自身はいろいろと好きなものが多いのですが、やっぱり小さな頃に両親に連れて行ってもらって見た星空や、森の中でとった虫の美しさはいつまでも色あせることがありません。そのときのなんとも言えない感動、言葉にならない感動のようなものが、私の言う審美眼の根底になっているように思うのです。
ゲームやYouTubeなどのエンターテイメントに子どもがはまる時期というのは必ず来ます。私も子どもの頃テレビゲームにはまりましたし、最近で言えば「マインクラフト」のようなゲームも、「これははまっていくのは仕方ないなぁ……」と感じました(終わりがないというか、脳の仕組みから考えてもよくできているのです)。
また、友人同士の遊びや、思春期になれば恋愛や人間関係で悩んだりすることも、人生の豊かさを考えるうえでは大事なことですね。ただ、そういうものにどっぷりはまる時間があっても、審美眼がしっかりあると、最終的には戻ってきやすいのです。
審美眼って言うと難しいなぁと思われるかもしれませんが、最後に少しこのあたりの話をさせていただければと思います。
■アートだけが審美眼を高めるものではない
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Q:美しいものって、具体的にはどんなものなのでしょうか? やっぱり、美術館に行くことなどでしょうか?
A:美しいものは、世界にあふれています。アートだけではなく、自然の美しさや美しい体の動かし方など、自然体験・文化体験をしてみることです。
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審美眼を子どもに持ってもらいましょう。というと、とんでもなくハードルの高いことのように思えます。
ただ、実際にはそんなことはないのです。基本的には、自然体験と文化体験が大事になってきます。自然にふれて、珍しいものを見つけたり、触感や温度を感じたり。親子一緒に何かをつくったり、音楽を聴いたり、演奏したり。他にも農業体験とか、茶道とまでいかずとも、和室で畳のい草の香りを嗅ぐとか、そういうことも文化体験だと言えます。
そういう時間が積み重なっていくと、いつか「心の琴線」にふれる出来事が出てきます。何か1つでいいので、あとで振り返ったときに「あの経験はよかったなぁ」と思えるようなことがあると、審美眼がつくられていくのです。
たとえば動物が好きな子は、牧場などで牛や馬とふれあったらその体験は宝ものになりますね。動物に囲まれて暮らすことを夢見るかもしれません。何より、動物や生きものを慈しむ気持ちは、人を助ける、生命を大切にする、という倫理や道徳にも通じてきます。
その資質が、やがてその子を支えるオンリーワンになっていくのです。
■美しいものはマネしてみたくなる
スポーツに関しても、スポーツができる人は体の使い方が美しいものです。
たとえば、テニスのプロ選手のラケットを振る姿勢。全力でラケットを振って、どうして狙ったところに返せるんだろう?と不思議に思いますね。バスケットボール選手の3ポイントシュートを決めるときの姿や、新体操の選手がバク宙やバク転をくるくると決める姿。いずれも無理・ムダがなく、洗練されています。それゆえに、非常に難しいことも簡単にやっているように見えるのです。
ですから、親子で何かのスポーツをしていたとしたら、トップ選手の大会を観にいってみたり、映像で観たりするのは審美眼を育むには大切なことだと言えます。
本当のトップ選手を見ると、「すごいなぁ。どうしたらあんなふうに動けるんだろう?」という、感動や美しさへの憧れのようなものが生まれてきます。
お子さんが小さいと注意が向かないかもしれないので、「あんなふうに動けたらカッコいいよね」と、想像をふくらませてあげるのもいいでしょう。このような体験が原点にあると、自主的に「やりたい」と思うようになり、練習やトレーニングを進んで行えるようになっていきます。
美しいものには憧れ、マネしたくなるんですよね。
それは、アートや異性の顔、人や動物などの動き、また「E=mc2」のような数式、あるいはボランティアをしたときなどの道徳的な美しさにも反応することがわかっています。つまり美しいものとは、人間にとって喜びを感じることでもあるのですね。
■記憶に残ることが大事
では、子どもに審美眼を持ってもらうにはどうしたらいいか? というと、親ができる限りその機会をつくって、一緒に楽しむということです。
「美しい」という感覚は非常に言語化が難しいものなので、たとえば、子どもが息をのむような美しい絶景を見たとしても、子どもが「美しいなぁ」と思うことはほとんどないと思います。
しかし大事なのは、記憶に残るということです。成長して、あとあと振り返ったときに、「そういえばあれ、美しかったなぁ……」と思えるような記憶。そうしたものの積み重ねが審美眼につながっていきます。ですから、「楽しい」だけでいいのです。
「これ、美しいでしょ? いいでしょ?」と、お子さんに説明するのもそれはそれでありかもしれませんが、圧が強すぎると「楽しくない!」になってしまうかもしれませんので、親もシンプルにいろんなことを経験し、楽しむのが大事でしょうね。
瀧 靖之(たき・やすゆき)
東北大学加齢医学研究所臨床加齢医学研究分野教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター長。









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