老後や将来の病気リスクを効率よく下げるには、どうすればいいのでしょうか? 運動習慣がない人が、「1日1万歩くらい歩かなければ意味がない」と考えるのは、大きな誤解です。世界中の研究データを分析した最新の報告でも、それよりはるかに少ない歩数で、死亡率や認知症の発症率が大幅に下がることが証明されています。
無理なくできてタイパもいい、運動量の目安とは―?

■Q. 1日1万歩なんて、とても歩けません。健康のためにできることは?
「運動が嫌いで、時間もなく、1日1万歩なんてとても歩けません。よく『1万歩歩かないと意味がない』と聞くので、すっかり諦めているのですが、何もしないまま年を取っていくのも不安です。将来の健康のために、無理なくできることは何かないでしょうか?」

■A. 1万歩も歩く必要はありません。「タイパ」のいい目安をご紹介します
「1日1万歩」は健康の目標としてよく耳にしますが、実は医学的な根拠に基づいた数字ではありません。2025年8月に発表された研究では、シドニー大学のDing Ding氏らが世界57件の研究データを分析した結果、1日2000歩しか歩かない人と比較して、7000歩歩く人には大きなリスク低下が見られることが分かりました。

具体的には、全死亡リスクが47%、心血管疾患による死亡リスクが47%、認知症の発症リスクが38%、がんによる死亡リスクが37%、それぞれ低下しています。2型糖尿病の発症リスクは14%、うつ症状は22%、転倒リスクは28%低下することも確認されました。

さらに、病気によって効果の出方には違いがあります。全死亡リスクや心血管疾患、認知症、転倒などは5000~7000歩あたりでリスク低下が緩やかになる一方、がんや2型糖尿病、うつ症状は歩数を増やすほど直線的にリスクが下がり続けることも分かっています。

・「1日7000歩」は、死亡や認知症のリスクを大幅に下げる現実的な目標値
・がんや糖尿病予防、メンタル管理を重視するなら1万歩以上を目指すのも効果的
・今より少しでも歩数を増やすことが重要。2000歩から4000歩に増やすだけでも死亡リスクは大きく下がる

運動が苦手な方でも、「1万歩」という高い目標にこだわる必要はありません。
まずはスマートフォンの歩数計で今の歩数を確認し、そこから「プラス1000歩」を意識するだけで、健康効果は十分に期待できます。無理なく続けられる範囲で、少しずつ歩数を増やしていきましょう。

▼秋谷 進プロフィール小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。
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