シリーズ第29作目となる劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』が2026年4月10日から公開されている。今作では、最新鋭の運転アシストバイク「エンジェル」のテスト走行を巡る陰謀と、謎の黒いバイク「ルシファー」が引き起こす連続爆破・暴走事件にコナンが挑み、神奈川県警の萩原千速のバイクアクションが大きな見所となっている。


連鎖するバイク事故と「ルシファー」の正体
物語は、コナン一行が参加する「神奈川モーターサイクルフェスティバル」から動き出す。高速道路で暴走する「ルシファー」に遭遇したコナンは、白バイ隊員・千速と合流。背後には軍事利用を画策する陰謀や、過去のバイク事故との関りがあることが明らかとなり、千速とルシファーによる命がけのチェイスが幕を開ける。彼女にとってこの捜査は、爆弾処理に失敗して殉職した弟・萩原研二と自分に思いを寄せていた松田陣平との記憶を呼び覚ますものでもあった。

※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さい。

物理法則を超えた!コナン名物「トンデモすぎるアクション」
今作におけるバイクアクションは、映画ならではの大胆な演出が光る。まず、千速による壁面走行。カーブにおいて遠心力は不可欠な要素だが、彼女が見せるバイク走行は物理法則上の限界を完全に超えており、強烈な重力と遠心力をねじ伏せて突き進む姿は、もはや異次元というほかない。

さらに、毛利蘭の「かかと落とし」も圧巻だった。超高速で迫りくる車体に対し、衝撃を加えて強引に進行方向を変えるその身体能力は、“いよいよ人間離れしてきた”と思わずツッコミを入れたくなった人も多かったのではないか。

そして、なんといってもクライマックスのベイブリッジでのシーン。
千速は急勾配のケーブルを重力に逆らって駆け上がり、最終盤にバイクごとヘリコプターに突入。コナンと千速が繰り出したコンビプレーはシリーズ屈指の「無理ゲー」にも見えたが、コナン映画の醍醐味であるトンデモすぎるアクションには、観客も大満足だったことだろう。

あの名作を呼び起こす千速と重悟の関係性
例年の『コナン』映画と違い、今作はキーパーソンを千速に絞り込んでいる。そのため、彼女を気にかける横溝重悟警部との関係もクローズアップされていた。

特筆すべきは、千速と重悟を演じる声優の組み合わせだ。千速の初代声優は2024年に亡くなった田中敦子であり、重悟を演じる大塚明夫とは、押井守監督の代表作の一つ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)で共演していることは有名だ。同作は、電脳ネットワーク社会の犯罪を描き、ハードなアクションと哲学的な問いが融合したSFアニメで、草薙素子(田中)とバトー(大塚)と千速と重悟はシンクロしている要素も多く、意図的にキャスティングされていたと思わずにはいられない。恋愛として成就するにはまだ遠い絶妙な距離感の千速と重悟だが、今作では2人が親密になっていく未来がはっきりと予感させられた。

これまでの『コナン』シリーズでは、佐藤刑事と高木刑事が時間をかけてパートナーになっていく過程を丁寧に描いてきた前例もあり、『攻殻機動隊』では見られなかったロマンスが期待されるところだ。

エモすぎる結末と広がる余韻
今作では、まだ作中に登場して間もない萩原千速というキャラクターが深掘りされている。意外にもスーパーウーマンではなく、過去を引きずり、脆さを抱え、バイク以外は至って「普通」であることも判明。作中ではバイク好きの人物が次々と“堕天”していくが、千速も何かのきっかけで同じ道をたどっていたかもしれない。
しかし、彼女がそうならなかったのは、「バイクに乗れば無敵」だと言い残した弟や松田の言葉や、重悟という頼れる存在がいたから。

エモい結末と共に、コナンファンに「風の女神」を印象付けた彼女が、今後のシリーズにおいてどんな役割を与えられるのか楽しみでならない。

アクションと人間ドラマが融合した今作は、シリーズにおける「新たな挑戦」だったと言えるのではないか。

作品概要
タイトル:劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』
原作:青山剛昌
監督;蓮井隆弘
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
キャスト:
高山みなみ(江戸川コナン) 山崎和佳奈(毛利蘭) 小山力也(毛利小五郎)
沢城みゆき(萩原千速) 三木眞一郎(萩原研二) 神奈延年(松田陣平)
スペシャルゲスト:横浜流星 畑芽育
主題歌:MISIA「ラストダンスあなたと」(Sony Music Labels Inc.)
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
公開:2026年4月10日(金)
(C)2026 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
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