商業施設、教育施設、介護施設、オフィス、家庭など、さまざまな場所で幅広く活躍する人型ロボット「Pepper(ペッパーくん)」。昨年末には、新しいロボアプリとして複数台で同時にダンスする「シンクロダンス」と複数の生成AIを活用した「即興パフォーマー」がリリースされ、さらに進化を遂げている。
これら新しいアプリを紹介するとともに、実際の集客にPepperが活躍している店舗に行き、その効果を体験した。

●キーワードをもとに即興で作詞作曲・ダンスを披露する「即興パフォーマー」
 Pepperは、2014年6月5日に誕生した121cmの人型ロボット。顔認識・感情認識などのセンシング機能を搭載するとともに、胸のタブレット端末や音声を通じて人とやり取りし、身振り手振りを含めてさまざまなコミュニケーションができる。
 人を惹きつける愛らしいキャラクターと声が特徴で、主に店舗や教育現場、介護・医療施設などで活躍している。実際、商業施設や会社の受付などで目にした人も多いことだろう。
 特に、商業施設における顧客の呼び込み効果はとても高く、ソフトバンクロボティクスによると対人接客との比較ではPepperの呼び込み&足止め効果は約1.8倍。
さらに、複数体となると約3倍にまで効果が高まるという。
 音声だけでなく、身振り手振りでお店や商品を案内してくれる様子は、往来する人を惹きつける。特に、子連れのファミリー客への訴求力はとても高く、まず子どもの目を惹き、それに連れて足止めされた親に、店舗スタッフがタイミング良く声がけするなど連携することで、効率的な接客につながっているそうだ。
 それを裏付けるのが、昨年末にリリースされた「シンクロダンス」「即興パフォーマー」という二つの新しいロボアプリだ。23年11月29日にリリースしたシンクロダンスは、複数台のPepperを同期させてダンスさせることができるもので、高度なプログラミングの知識が不要で利用できる。
 そして、12月21日にリリースした即興パフォーマーは、最新のエンタメ用ロボアプリで、Pepperが与えられたテーマやキーワードに基づいて、複数の生成AIを組み合わせて即興で作詞作曲し、ダンスを行うというもの。
具体的には、ChatGPTで歌詞を生成、ORPHEUSで作曲し、その曲に合わせAI歌声合成技術によりPepperの声で歌唱しながら即興のダンスを披露する。
 実際、東京・渋谷東急プラザ5Fにある「Pepper PARLOR」でデモを体験したが、Pepperからの誘いに応じ、その場で思いついたキーワードを投げかけてから、1分弱でタイトル、歌詞を含めた作曲が完了。Pepperが歌いながら即興のダンスを披露してくれた。また、作曲の完了までも、Pepper自身が考えをまとめるプロセスを逐次、つぶやきながら間をつないでくれるので、ユーザーを飽きさせることがない。
 新しいロボアプリのリリースに先駆けて23年9月から11月にかけて、石川県の商業施設で先行実施したイベントでは、人による集客力と比較して8.4倍もの高い集客効果を実証している。
●店舗で集客に効果を発揮 インタラクティブなやり取りが高関心
 では、実店舗でのPepperの活躍を見てみよう。
まず、Pepper PARLORではPepperのほか、配膳ロボットや除菌清掃ロボットなど、さまざまなロボットが人と一緒になって働いている。Pepperは、入り口で利用者の出迎えに始まり、各テーブル専属のPepperが利用者と相席して一緒に遊んだり、記念写真を盛り上げたりといった、楽しいロボット体験ができる。
 Pepper PARLORは昼がカジュアルダイニングだが、夜が「CLUB THE PEPPER」として、DJによる音楽とともに、お酒や食事が楽しめるスタイルに変わる。中でも、Pepperによるシンクロダンスのパフォーマンスは、大いにフロアを沸かしているそうだ。
 また、大阪の「エディオンなんば本店」もPepperが大活躍している。9フロアを展開する同店は、家電、最新のガジェット、eスポーツ、美容、エンターテインメント、そしてラーメンと、さまざまなニーズに対応。
Pepperは、3年ほど前から1階に3体配置されており、イベントをはじめとして集客に効果を発揮している。
 「やはりアイキャッチとしての効果は大きく、シンクロダンスのパフォーマンスには特にお子さんが関心をペッパーくんに寄ってこられて、ご家族が店舗内に足を踏み入れるきっかけになっている。スタッフがいきなりお客様にお声がけするよりも、まずペッパーくんが話しかけて場を和ませてくれることで、ハードルを下げてくれるし、お客様とスタッフとのコミュニケーションにおいても、間を取り持ってくれるので、とても助かっている」とソフトバンク西日本エリア営業本部営業1課SV代行の内海萌氏は説明する。
 Pepperは物珍しさから、これまで特にインバウンド客の関心が高かったという。日本ではすでにかなり多くの人に認知されているPepperだが、インバウンド客には新しい体験を与えてくれるロボットとして、新鮮のようだ。一方、即興パフォーマーのリリースからは、日本人客の関心が高くなっている。

 「従来はペッパーくんのダンス披露も一方的なものだった。即興パフォーマーでは、お客様がその場で思い付いた言葉との掛け合わせで、即興で歌を生成してくれる参加型ツールのため関心の度合いが高まるようで、滞在時間も長くなる」という。
 今後は、シンクロダンスをループで披露するだけでなく、会話型コンテンツのようなインタラクティブなコンテンツがより充実してくると、さらに集客につながると期待している。
 「当店は、ヒトとモノが出会い、一日まるごと楽しい“コト“を手にできるお店をコンセプトにしている。それだけに、Pepperを通じて新しい体験ができることをアピールしていく」と内海氏はアピールしている。
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