河合優実の朝ドラヒロイン起用に「抜てき」という言葉は不適切。「満を持しての起用」だ。

現在25歳。宮藤官九郎氏が脚本を手掛けたTBS系「不適切にもほどがある!」などのコメディーから映画「あんのこと」(入江悠監督)のようにシリアスな社会派作品まで、演じる役柄が幅広く、いま最も勢いのある若手女優の一人であることは間違いない。

 年齢のわりに落ち着いている印象を持たれがちだが、とても前向きで社交的な性格だ。小学生の頃からダンスを習い、高校の文化祭で喝采を浴びたことが、芸能界を目指したきっかけで「こう見えて、歌って踊れる女優なんです」と語る。

 文化祭などではリーダーシップを発揮。行動力も人一倍だ。高校時代、映画「あみこ」を見て山中瑶子監督に「いつか映画に出演させてください」と手紙を送った。本人と面識はなく、芸能界デビューもしていない状態でのアプローチが後に映画「ナミビアの砂漠」での初タッグにつながった。

 女優として演技をする以前に、作品の作り手という意識を持っている。実際の事件をモチーフにした映画「あんのこと」で日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞しているが、同作の入江監督は「河合さんじゃないと、この映画は実現しなかった。当事者に取材して一緒に、どんな作品にしていくのか、探す姿勢が大事だった。こういう役を繊細にできる唯一無二の女優」と、ものづくりの姿勢を評価していた。

 卓越した演技力の原点はダンスの経験だ。「何かをコピーするのが面白いと思う。好きな作業ですね。方言を覚えるのも好き。絵を描くのも好き。模写したり、観察してコピーするのが好きです」。NHKドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」で披露した関西弁は、大阪出身のスタッフも太鼓判を押す完成度だった。

 プライベートでは、大好きなお酒を飲みながら「M―1グランプリ」などの賞レースをテレビで見るのが、お気に入り。出演作が次々にヒットを記録し、ここ数年で知名度が上昇しているが、「街で声をかけられることは全然ないので、まだ売れてないんだと思います」と冗談交じりに語る。その謙虚さも魅力だ。

 朝ドラでは25年前期の「あんぱん」の朝田蘭子役が印象深い。今田美桜演じる主人公・朝田のぶの妹役で、恋仲だった原豪(細田佳央太)を戦争で亡くしてお茶の間の涙を誘った。

その後、妻夫木聡演じる八木信之介と急接近するシーンも名場面として強烈な印象を残した。宮藤氏との相性の良さは「不適切―」で実証済み。毎朝8時、全国に活力を届ける名作の誕生を期待したい。(有野 博幸)

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