足元のPC市場は堅調だ。特に昨年は、10月にWindows 10のサポートが終了。これに伴う特需が発生し、販売が大きく伸びた。PC全体の販売台数前年比は、昨年4月の段階で112.6%。9月には207.1%と2倍以上の販売台数を稼いだ。10月もほぼこの水準を維持した。以降、伸びは縮小したが前年比プラスを維持。2月は88.6%と2桁割れを喫したものの、3月、4月と、ごくわずかながら前年を上回った。ノートPCの足取りがしっかりしている一方、デスクトップPCは3月、4月と前年比で半減。
平均単価に目を向けると、全体では、さほど大きく変動していない。昨年4月のノートPCの税抜き平均単価(以下同)は、13万5200円。この4月では13万8500円だった。確かに上がってはいるが上昇率は2.5%。メモリーやストレージが激しく上昇している中では緩やかだ。総務省が発表した4月の全国消費者物価指数・総合の上昇率は1.4%。これに比べれば、確かにPCの価格上昇率が上回っている。市場の大半を占めるノートPCに限ると2.3%。一方、デスクトップPCでは13.7%と、ノートに比べて上昇率が高い。
ゲームや動画編集、自らのPCでAIを動作させるといった用途では、ハイスペックなPCが必須だ。しかし大多数の消費者にとっては、それほど高いスペックである必要もない。求められているPCの性能にはかなりの幅がある。そこで、ノートPCでメモリー容量とSSD容量の組み合わせ別に平均単価の推移を算出してみた。本来なら、CPUの種類も考慮すべきところだが、できるだけ単純に比較するためと、特にメモリー価格やストレージの上昇が激しいことを考え、メモリーとストレージの組み合わせで比較した。メモリーは8GB、16GB、32GBの3パターン。SSDは256GB、512GB、1024GB(1TB)の3つ。代表的なパターンでは、メモリー8GB/ストレージ256GB(以下、8/256)、8/512、16/256、16/512、16/1024、32/512、32/1024の7種類だ。これでノートPCの91.7%を占める。4月時点で一番多かったのは16/512。47.4%とほぼ半数を占めた。
昨年4月と比較した価格変動率では、一番スペックの低い8/256の価格が26.3%も下落している。同様に8/512は5.7%、16/256も4.8%下がっていた。現状で8GBのメモリーはかなり厳しいスペック。使いこなすにはWindows以外のOSも視野に入れる必要もでてくる。とはいえ、3割近くも価格が下落している、というのは意外だった。一方最も上がっているのは32/512。28.0%の上昇だ。次いで16/1024で17.6%だった。32/1024は7.4%と1桁上昇にとどまった。最も売れている16/512は1.0%のわずかな上昇にとどまった。こうした凸凹をならすと、結果的に全体では2.3%の価格上昇、という結果になるわけだ。PC価格は一斉に値上がりしているわけではない。
AI特需に伴うメモリー特需は続いている。SKハイニックスやマイクロンテクノロジー(マイクロン)では、AI用途のHBM(High Bandwidth Memory=高帯域幅メモリー)は、26年末までの出荷分がすでに顧客の予約で埋まっているとしている。マイクロンのサンジェイ・メロートラCEOによると「第三世代のHBMを生産するために必要なウェハー(基板)面積は、PCなどに使われるDDR5の約3倍」だという。HBMの複雑な積層構造と歩留まりの悪さによるもの。PC用メモリーの供給を圧迫している主な要因だ。供給が減って価格の上昇を招いている。
さらにマイクロンはこの2月、個人向けのメモリーやSSDのブランド「Crucial(クルーシャル)」を終息させ、コンシューマー向け製品事業から撤退。ますます供給量が減少し、PC自作派にとってはダブルパンチだ。ホルムズ海峡の情勢も不透明なままで、国際的なサプライチェーンは傷んでいる。メモリー以外の部材の値上がりも危惧される。
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