ドライバーを除いては、ほとんどの人が意識をすることがないであろう「道路標識」。だが日本全国には、知られざる奇妙珍妙な道路標識があった! マニアでなくともニヤニヤせずにはいられない、奥深い世界をご堪能あれ。

 さて道路標識というもの、日常でよく見かけるものであるだけに、時として妙な噂やら都市伝説やらの題材にもなってしまう。たとえば「歩行者専用」の道路標識について、以下のような話を聞いたことのある方は多いのではと思う。

 ――この標識を作る際、親子連れの写真をモデルにしたのだが、これは実は子供を誘拐している男を、偶然に撮ってしまったものだった。手を引かれている女の子が、男から体を遠ざけるような姿勢をしているのは、嫌がって逃げようとしているためなのだ――。

幽霊が出る?「ビックリマーク」標識の噂は本当かの画像はこちら >>
写真を拡大 「歩行者専用」標識

 都市伝説の常で、確たるソースや根拠はおそらく何もない。ただ、この標識に描かれた人物は妙に腕がにょろりと伸びていて、体型も何やら宇宙人のようである。

全体になんとなく不気味な雰囲気が漂うのが、こうした噂の出る理由なのではと思える。

 

 もうひとつ都市伝説のある標識が、「その他の危険」である。黄色の菱形に大きくビックリマークが描かれた、えらくインパクトの強いデザインだ。黄色地に黒の標識は「警戒標識」と呼ばれ、「十字路あり」「動物注意」「幅員減少」など、行く先に危険や注意すべき事柄があることを示す。で、これらに当てはまらない注意事項がある時が、「その他の危険」標識の出番なわけである。

幽霊が出る?「ビックリマーク」標識の噂は本当か
写真を拡大 「その他の危険」標識

 というわけで多くの場合、「その他の危険」標識には補助標識が取り付けられ、どのような危険があるのか明示されている。

だがこうした補助標識がなく、なぜ「その他の危険」が設置されたかわからないケースがある。これは、その場所に幽霊が出ることを示しているという噂があるのだ。

 まあ「幽霊が出るから標識を立てます」と申請して、お役所がはいよと予算を通してくれるわけもないのだが、そう言ってしまっては話は終わりである。というわけで実地の道路で、どのように「その他の危険」標識が用いられているか、いくつか検証してみよう。

まだある! 奇妙珍妙なレア標識 連載第3回:全国で2カ所だけ。幻の道路標識を求めて滋賀県・琵琶湖へ向かった】  「その他の危険」の設置理由とは?

「その他の危険」は、以前に取り上げた「自転車並進可」や「平行駐車」のような激レア品ではないが、かといってそうそう見つかる品でもない。

平均すれば、せいぜい県に数枚から十数枚程度ではないだろうか。自分では見た記憶がない、というドライバーの方も少なくないのではと思う。

 設置理由として多いのは、窪地などの手前で「冠水注意」の意味で立てられているケースだ。下の写真は神奈川県川崎市のJR浜川崎駅付近にあったもので、線路をくぐる道路の入り口に立てられている。

幽霊が出る?「ビックリマーク」標識の噂は本当か
写真を拡大 「大雨冠水注意」の補助標識あり

 こちらは横浜市の工業地帯にあったもので、「この先1200m行き止まり」の補助標識がある。トラックなど大型車の通行が多く、広い迂回路も少ないため、かなり手前から予告されているのだろう。

幽霊が出る?「ビックリマーク」標識の噂は本当か
写真を拡大 先方行き止まりを示す標識

 熊本市の熊本城付近には、「落木注意」の表示がある標識があった。台風の被害なども多い地域であるため、こうした標識が必要なのだろう。ちなみに写真左下に写っているのは、2016年の熊本地震で崩落した城の石垣の石だ。名城はなお痛々しい姿のままであり、一日も早い復旧を祈りたい。

幽霊が出る?「ビックリマーク」標識の噂は本当か
写真を拡大 熊本城近くの「落木注意」標識

 名古屋は「その他の危険」の聖地であるらしく、「冠水注意」や「中央分離帯注意」の標識がそこここにあるそうだ。また札幌市の北7西1交差点付近には、この標識が3連続で立っている場所があり、ストリートビュー でも確認できる。

ここは雪国の常で路肩が広く取られているのだが、この先の歩道橋が路肩にはみ出している「どうしてこうなった」的設計であるため、激突を防ぐべく何度も警告標識を設置したものと思われる。

まだある! 奇妙珍妙なレア標識 連載第4回:大八車の通行規制? 銀座の歩行者天国で見つけたレア標識がシブすぎる】 「注意」の一言しかないもの

 このように設置理由は様々だが、中にはわけのわからないものも存在する。たとえば茨城・栃木県道1号仏ノ山峠の茨城側に「その他の危険」標識があるのだが、ここの補助標識には「注意」のひとことだけしかなく、「だから何に注意すりゃいいんだよ」と言いたくなる代物である。「ここから先は魔境・茨城県だから心して走れ」という意味合いかと思ったが、考えてみればこの手前は栃木県だから、魔境度にそう差があるわけではない。まあ実際には、この先に「凍結注意 スリップ注意」という看板があるので、滑らぬよう気をつけて走ってくれということなのだろう。

幽霊が出る?「ビックリマーク」標識の噂は本当か
写真を拡大 「注意」の一言だけしかない

 峠道といえば、国道299号正丸峠(埼玉県飯能市)の旧道にも、ぽつんと「その他の危険」が一枚立っている(ストリートビュー )。

ここには補助標識などは設置されておらず、ただ無言で峠道の脅威を訴えかけてくる。

 

 実はこの正丸峠は、関東でも指折りの心霊スポットとして有名だ。検索してみると、様々な怪談や動画が引っかかってくる。筆者は霊感など全くない人間だが、そう知った上で走るとやはりあまり気持ちがよくない。そこにふっと現れる黄色と黒の標識は、ちょっとぎくりとさせる視覚的インパクトがある。先に挙げた都市伝説は、あるいはこういうところから生まれたのかもしれない。まあいずれにせよ、峠道を走る際にはいろいろなものに気をつけていただきたいと思う次第である。

まだある! 奇妙珍妙なレア標識 連載第7回:観光地に続々登場! 外国人増加でできた期間限定のレア標識