・・・・ケルベロスの通称で知られた首都警特機隊の元隊員、乾にとっての渾身の戦いが始まった。数をたのんで迫りくる敵を、たった一人、愛銃MG42で迎え撃つ。布を引き裂くような鋭い連射音が轟く度、強力な7.92mmマウザー弾を被弾した敵が、後方に吹っ飛ばされるようにして次々と斃れてゆく。オーヴァーヒートした銃身を一瞬にして交換し、乾は着実に敵を仕留め続る・・・・国産アクション映画の傑作『ケルベロス-地獄の番犬』のワンシーンである。
第二次大戦勃発時、ドイツ軍は基幹小銃Kar98kと同じ7.92mmマウザー弾を使用する汎用機関銃MG34を装備していた。
そこで、MG34と同様に優れた性能ながら、省力生産が可能な新しい機関銃が開発されることになった。開発を担当したのはグロスフス社。切削部品を極力減らし、代わりにプレス加工を多用することで生産性の向上と生産時間の短縮が図られている。
このMG42の最大の特徴は、発射速度がきわめて速いことだ。一般的な機関銃の発射速度は毎分500~600発程度だが、本銃のそれは、実に1200発にも及ぶ。
とはいえ、1942年に制式化されたMG42はきわめて優秀な機関銃で、何と敵であるアメリカ軍は、自国の30-06弾を撃てるように改修したMG42のコピーの生産を企図。T24の名称が与えられてプロジェクトが進められたが、コピー設計時の寸法ミスや使用弾薬との相性の悪さといった様々な問題から、結局、「アメリカ版MG42」は実現しなかった。
MG42の射撃音は、発射速度があまりに速いので、遠くで聞くとまるで布を引き裂くような音にも聞こえる。
このように、発射速度が速いせいで銃身が過熱しやすいので、銃身の交換が一瞬でできる設計になっており、冷却のため数本の銃身を交互に交換しながら射撃することができた。MG42は優れた機関銃だったため、第二次大戦中に約423000挺も生産された。そして戦後、旧西ドイツ軍の再興に際して、使用する弾薬を7.62mm NATO弾に改めたうえでMG1、MG2、MG3という本銃の部分改修型が開発され、このうちのMG3は今も現役の座にある。
【要目】
使用弾薬:7.92mmマウザー弾
全長:1220mm
銃身長:533mm
重量:約12kg
ライフリング:4条右回り
給弾方式:ベルト給弾またはドラムマガジン給弾
作動方式:ローラーロック式ショートリコイル
発射速度:毎分約1200発