関西電力の八木誠会長の辞任は、世間の風当たりが強く、辞めざるを得なくなったためだ。引導を渡したのは経産省、首相官邸だろう。
岩根茂樹社長の辞任時期が第三者委員会の調査報告後となっているのは、報告書作成に目を光らせ、勝手なことをさせないため。これは経産省・官邸の意向でもあるようだ。国会で野党が関電関係者の参考人要求を出しており、関電は拒否している。経産省・官邸はそれを了としている。つまり、終盤国会のカードとして残しているわけだ。カードを切った時に、岩根社長が参考人として出るため、辞任時期を遅らせている面もあるのかもしれない。
次期トップは、社内で今回の問題や原子力に無関係な人を持ってくる可能性が高い。「民間の問題」という位置づけにしているので、政府主導で外部からトップを持ってくるということにはなりにくい。首脳人事は社外取締役主導で決められることになる。10月9日、「人事・報酬等諮問委員会」が開かれたが、八木、岩根の両氏は欠席、4人の社外取締役だけで議論し、臨時議長は小林哲也・近鉄グループホールディングス会長が務めた。
後任の社長には副社長執行役員で人財・安全推進室担当の森本孝氏、営業本部長の彌園豊一氏の2人の名前が挙がる。森本氏は企画畑、彌園氏は営業畑出身だ。
日産人事西川廣人前社長兼CEO(最高経営責任者)が不正報酬受領問題で辞任した日産自動車では、社外取締役でつくる指名委員会が今年の7月ごろから次期CEOの人選を進めていた。基本的には内部登用の路線で、50代の若手起用ということで、早くから専務執行役員の関潤氏(58)と内田誠氏(53)の2人に絞り込まれていた。結局は、内田誠氏がCEOに、アシュワニ・グプタ氏COO(最高執行責任者)に決まった。
外部からの登用を考えていたのは、経産省OBの社外取締役で指名委員長の豊田正和氏。経産省主導という手柄が欲しかった。経産省が引き続き影響力を及ぼせる再建案件にしたかったのだろう。新浪剛史・サントリーHD会長の名前を出したのは経産省。内田評は、キレ者だが、少し近寄りがたい存在。中途入社で出世しているので、プロパーのやっかみや外様意識もあるだろう。
社内は関CEOを望んでいた。つまり、関氏を「副COO」という不思議なポジションに就けたのは、社内融和のための日産対策。ルノーが決めた。内田CEOとアシュワニ・グプタCOO。
グプタ氏は三菱自動車COOだったがルノー出身。つまり、2トップがルノーに近い。
今後はフェーズが変わる。ルノーはフィアット・クライスラー・オートモービルズとの経営統合をまだ諦めていない。ルノー、フィアット、日産、三菱の4社で持ち株会社をつくってグループ化を目指す可能性が高い。
日産はルノーによる子会社化に抵抗しているが、この場合、直接的に日産がルノーの子会社になるわけではないのでやりやすい。
ルノーが日産を子会社化しようとしたのは、カルロス・ゴーン元会長の力が強くなり、ルノーの言うことを聞かなくなったから。それで子会社化しようとした。ゴーン氏がいなくなった今、ルノーにとっては内田新CEOがルノーに逆らわないかたちで業績改善を含め、ちゃんとやってくれれば、日産株式の50%超を持つ必要性はない。現状のままでよいのだ。
(文=有森隆/ジャーナリスト)