スシローグローバルホールディングス(GHD)は事業領域の拡大とグローバル展開を加速し、さらなる成長を進めるため社名を変更する。新社名はFOOD & LIFE COMPANIES。
1984年の創業以来、回転すしスシローの国内展開を進め、同業界で売り上げトップとなるまで成長した。2011年から海外展開を開始し、現在、4つのエリアへ進出している。17年、大衆寿司居酒屋「杉玉」の出店を始め、今年は台湾茶専門店「Sharetea(シェアティー)」を展開するなど、事業を拡大中だ。
台湾茶専門店「シェアティー」はお茶のスタバを目指すスシローGHDがカフェ事業に参入した。8月20日、台湾茶専門店「Sharetea(シェアティー)」を新宿マルイ(東京・新宿区)の本館にオープンした。シェアティージャパンは「ちょっとの上質を、毎日の贅沢に。」をコンセプトに、本格的な台湾茶を手ごろな価格で提供するという。ドリンクメニューはストレートティーおよびティーラテが各5種類。フルーツティーが3種類。タピオカ入りはタピオカミルクティーだけだ。
スシローは20年2月、グループのスシロークリエイティブダイニング(大阪府吹田市)が70%、台湾企業が30%出資する合弁会社Sharetea Japan(東京都千代田区)を設立した。社長はアパレル大手、ワールドで10代女子向けブランド「ピンクラテ」事業でトップを務めた経験をもつ小林哲氏。かつてワールドの専務だったスシローGHD社長の水留浩一氏がスカウトし、スシロー初のカフェ事業の責任者に据えた。顧客の年齢層が比較的若いカフェでは、ファッション感覚が求められることから小林氏に白羽の矢が立った。「シェアティーは全国500店舗を目指し、ティー版のスターバックスコーヒーを目指す」と小林氏は意気込みを語っている。
台湾茶といえば、19年に日本市場を席巻した「タピオカブーム」が記憶に新しい。台湾発のティー専門店「ゴンチャ(Gong cha)」や「春水堂」には、タピオカミルクティーを買い求め大勢の若い女性が列をなす光景が見られた。スシローは回転寿司に次ぐブランドとしてシェアティーを選んだ。先行するゴンチャを追いかける。
ゴンチャジャパン社長に原田泳幸氏が就任19年12月1日、世界17カ国で1100店舗の「ゴンチャ」を運営するゴンチャジャパン(東京・渋谷区)の会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)に原田泳幸氏が就任した。
“プロ経営者”の原田氏は今回、台湾茶のゴンチャジャパンのトップに招かれた。ゴンチャは06年に台湾で創業。日本では15年に東京・渋谷に1号店を出し、近年のタピオカブームの先駆けとなった。
「ゴンチャ」を展開するゴンチャグループを、米国のプライベート・エクイティファンド、TAアソシエイツが買収した。TAはグループ会長にマクドナルドのアジア太平洋地区を担当したピーター・ロッドウェル氏を、日本法人のトップに原田氏を起用した。原田氏はゴンチャグループのグローバルシニアリーダーシップチームメンバーに就任した。マクドナルドのOBコンビで台湾茶カフェの世界展開を進めていく。
原田氏が社長に就いたとき、ゴンチャの国内店舗は51店だったが、その後、急拡大。
スシローGHDの20年9月期連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる売上収益が前期比2.9%増の2049億円、営業利益は17.1%減の120億円、当期利益は35.5%減の64億円だった。新型コロナウイルスの影響で既存店売上高は4月に半分に落ち込んだ。家賃などの固定費もかさみ利益を押し下げた。
21年9月期は業績の回復を見込んでいる。売上収益は20年9月期比22.3%増の2506億円と過去最高を更新する見通し。営業利益は43.4%増の173億円、当期利益も63.5%増の105億円と大幅に改善する。テイクアウトで巣ごもり需要を獲得するなど既存店の売り上げが堅調。
株式市場は積極投資を評価した。株価は11月10日に3565円をつけ、株式分割を考慮して上場来高値を更新した。21年9月期の大幅増益を好感した買いが集まった。
ファミリー層を中心とした集客力の高さからスシローは「勝ち組」と評価されている。
(文=有森隆/ジャーナリスト)