AGC(旧・旭硝子)とセントラル硝子は、基本合意していた建築用ガラスの国内での事業統合を中止すると発表した。コロナによる影響が指摘されている。
20年10月、同年12月末を予定していた統合時期を約1年延長。新型コロナの感染拡大で互いの生産設備を訪問できないことが理由だった。その後も協議を続けてきたが、合意が困難だと結論づけた。事業の将来の見通しや評価額について、両社の見解が一致しなかったことが破談の原因である。
国内のガラス市場はAGC、日本板硝子、セントラル硝子の3社が独占している。ガラスは世界的な寡占業界だ。板ガラスの8割が窓ガラスなど建築用。1割が自動車用で、残りが太陽光発電設備などに使われている。国内では建築用ガラスが住宅着工件数の低迷で市場の縮小が続き、余剰設備の統廃合が経営課題となっていた。経済産業省は15年、3社に統廃合を求める報告書を出した。
住宅着工件数は高度成長期に増加を続け、1973年に190万戸を超えピークを迎えた。バブル崩壊後の90年代は長期的な減少を続け、2009年にはリーマンショクによる景気低迷の影響で100万戸の大台を割り込んだ。それ以降は年間80万~90万戸で推移してきた。
国土交通省がまとめた建築着工統計調査によると、20年の新設住宅着工件数は前年比9.9%減の81.5万戸だった。減少は4年連続。リーマンショックの影響が残る2010年の81.3万戸以来の低水準となった。新型コロナウイルスの感染拡大で展示場への来場客が減るなど営業活動に制約が目立った。着工件数はさらに減る見通しで、2030年には60万戸台、40年には40万戸台に減るとの予測もある。
住宅着工件数の減少がAGCとセントラル硝子が建築用ガラス事業の統合に踏み切った理由だったが、統合条件がセントラル硝子に厳しく、これが統合交渉の大きなネックになったとの見方もある。
ガラス事業が売上高の6割を占めるセントラル硝子の21年3月期の連結決算の売上高は前期比15%減の1890億円、営業利益は75%減の20億円、最終損益段階で5億円の赤字になる見込み。米国で自動車用加工ガラスの製造設備の一部を廃棄するのに伴い、約25億円の特別損失を計上する。
AGCは医薬品と半導体関連が伸びる18年7月1日、旭硝子は社名をAGCに変更した。
AGCには苦い経験がある。液晶テレビ用のガラス基板の需要が増加し、2000年代に電子事業が業績を牽引。全体の営業利益の8割を超える稼ぎ頭となった。だが、バブルが弾け、11年12月期から4期連続の最終減益となった。1つの事業に急傾斜するリスクを身をもって学んだ。
このため現在は、複数の事業を展開することでリスクを分散させ、グループ全体の収益を確保する「ポートフォリオ経営」に注力している。新型コロナウイルスの感染拡大で産業界は大打撃を受けたが、AGCは事業の分散で打撃を最小限に食い止めることができた。
AGCの20年12月期の連結決算(国際会計基準)は売上高は前期比7%減の1兆4123億円、営業利益は25%減の757億円、純利益は26%減の327億円と減収・減益だった。祖業であるガラス事業の売上高は前期比12%減の6510億円、営業損益は166億円の赤字。
一方、医薬品が好調だった化学品事業の営業利益は505億円、液晶用や半導体関連部材の電子事業のそれは378億円。両事業がガラス事業の赤字を補った。
医薬品の受託生産に注力AGCの21年12月期の連結決算は売上高が前期比8%増の1兆5300億円、営業利益は32%増の1000億円、純利益は71%増の560億円を予定している。一転して増収・増益になるとしている。医薬品の受託生産と半導体向け先端材料が業績を引っ張る。
医薬品の受託製造は付加価値の高いバイオ医薬品に集中して事業を拡大している。20年6月、米ノババックスから新型コロナウイルス感染症のワクチン候補の補助剤の製造を受託するなど海外企業を中心に大口の受託が増えている。
AGCは16年ごろから海外企業を買収し、医薬品などの製造受託部門を伸ばしてきた。20年6月には英製薬大手アストラゼネカから米国の原薬製造工場を100億円で買収。同年9月にもイタリアの医薬品企業を約300億円で手に入れた。
AGCはガラスから医薬品受託企業に大変身中である。
(文=編集部)

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