シカゴ・ブルース・シーンを牽引する左利きの名手カルロス・ジョンスンと、彼を師と仰ぐ日本人ギタリスト田中秀明による、熱気あふれるコラボレーション・アルバム『Blues - It's Powerful Stuff』(Pヴァイン)。日本でのアルバム・リリースは実に17年ぶりとなる本作は、世代と国境を越え、ブルースという言語を通じて深く結びついたふたりの「音楽的会話」を記録したものだ。

今年3月、中国ツアーを経て来日し、高円寺JIROKICHIで熱演したカルロス。本番直前、京都から駆けつけた田中を交え、固い絆で結ばれた二人に本作への思いを伺った。

[取材・文・撮影]井村猛(ブルース&ソウル・レコーズ)
[取材協力]Pヴァイン・レコード/LIVE MUSIC JIROKICHI/Dove Records Beijing

── 『Blues - It's Powerful Stuff』はお二人のコラボ・アルバムですが、どういった経緯で制作することになったのでしょうか。

 カルロス・ジョンスン(以下、カルロス):何年も前から、一緒に何かやりたいってずっと話してたんだ。ある時、俺が中国へツアーに行くことになってね。「日本の近くまで行くんだから、合流して一緒にやろうぜ」って持ちかけたら、ヒデ(田中)も「絶対やろう!」って言ってくれた。彼との時間は最高だよ。俺は彼を本当の息子のように愛しているからね。彼に頼まれて、俺が断る理由なんてない。

──お二人が出会ったのはいつ頃ですか?

 田中秀明(以下、田中):初めて出会ったのはシカゴのブルース・クラブでした。僕が20歳くらいの時、1999年か2000年だから……もう26年くらい前ですね。実はその時、僕はまだカルロスのことをよく知らなかったんです。

でも、どこのクラブに行っても「カルロス・ジョンスンは凄いぞ、絶対に聴いておけ」とみんなが口を揃えて言ってて。それで、カルロスがギターを弾いていたビリー・ブランチのバンドをキングストン・マインズまで見に行ったんです。あの日、ビリーは車を盗まれて来られなかったんだっけ?

 カルロス:誰かが車のタイヤを盗みやがったんだ。なぜかビリーも警察に連行されちまって。あいつがやったって疑ってたんだろうよ。やってないのにな。

 田中:それで急遽、カルロスがメインで演奏することになったんですけど、そのプレイが本当に凄まじくて。「これだ!」って衝撃を受けましたね。

── カルロスさんにとって、田中さんはどんな存在ですか?

カルロス:俺の息子のようなものだよ。ヒデは俺のプレイ・スタイルをしっかりと吸収してくれた。彼がギターを弾くのを聴いていると、俺自身のプレイを聴いているような気分になるんだ。若い頃の自分を見ているようだ。

彼はまさに「若きカルロス・ジョンスン」なんだ。俺たちミュージシャンは、音楽を通して人を喜ばせ、同時に自分自身も満たされたいと願っている。それが情熱ってもんだ。自分の情熱やスピリットを理解し、自分のものとして受け継いでくれる存在がいるなんて、本当に素晴らしいことだ……あぁ、話しているだけで鳥肌が立ってきたよ。ヒデは俺の自慢の息子さ。(涙を浮かべる)

── 田中さんにとってカルロスさんは?

田中:最初は純粋に「凄いギタリストだから教えてもらいたい」という憧れの存在でした。でも個人的な話をすると、僕には父親がいなくて、年上の男性から優しくされた経験がほとんどなかったんです。一緒に過ごすうちに、ギター以外のことでもたくさんの時間を共有するようになって……。だから僕にとって、少し特別な存在なんです。

カルロス:(涙を拭いながら)人生で何より重要なのは、俺がこの世を去った後も、俺のスピリットが生き続けると知ることだ。ヒデが俺という存在を体現し、俺の魂を受け継いでくれているんだ。

田中:本当にありがたいことですし、いまだに信じられません。

カルロスのような凄まじいスピリットを僕が完全に出せるわけではないですし、僕が一方的にリスペクトしているだけなんですけどね。

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── カルロスさんから学んだことで、特に印象に残っていることは何ですか?

田中:常に全力だということです。当たり前のことのようですが、その「全力具合」が桁違いなんですよ。例えば一緒にジャム・セッションに行った時、以前の僕には「セッションだから少し肩の力を抜いて」みたいな気持ちがあったんです。でもカルロスは、どんな場であっても徹底的にやる。いつどこでも魂を込めて全力で演奏する姿勢は、本当に勉強になりました。それ以来、僕もそうするようにしています。やりすぎて煙たがられることもありますけどね(笑)。

── 確かに、カルロスさんのライヴは常に魂がこもっているのがわかります。今回のアルバムは2024年に大阪(三和レコーディングスタジオ)で録音されたそうですが、レコーディングはいかがでしたか?

カルロス:最高に楽しかったな! 弾いて、飲んで、また弾いて(笑)。技術的な完璧さなんてどうでもよかった。ひたすら楽しむための時間だったね。

俺だってCDの中でミスをしているけど、それでいいんだ。完璧を目指すなんてただの幻想でしかない。完璧なものなんてこの世にない。ただ息子と一緒に心から音楽を楽しむ、それだけだった。

── バックを務めているのは、田中さんが普段やっているバンドですね。

田中:はい、そうです。

カルロス:彼は素晴らしいバンドをまとめてくれたよ。本当に楽しかった。
俺たちは毎日何かを学ぶ。もし何も学ばない日があったら、それは無駄な一日だ。俺は長年ギターを弾いてきたけど、昨日も今日も新しいことを学んでいる。アーティストである以上、「自分は全てを知っている」なんて絶対に思っちゃいけないんだ。

常に新しいことにチャレンジしなきゃな。

── 全7曲の選曲はどのように進めたのですか?

カルロス:二人で決めたんだ。「あの曲いいな」「うん、あれをやろう」って感じでね。

─ 田中さんは“Don't You Lie To Me”でヴォーカルも披露していますが、これは最初からご自身で歌うつもりだったのですか?

田中:いえ、なんとなくですね(笑)。

── “My #1 Son”は田中さんのことを歌った曲ですね。

カルロス:あれはスタジオで、その場で作った。座って、心から湧き上がる言葉をそのまま歌にしたんだ。書いたりリハーサルしたりは一切なしだ。

── 即興でそこまで出来るものなのですね。

カルロス:もちろん。俺にとって音楽を作るのは、愛し合うことと同じなんだよ。始めるまではどうなるか分からない。

相手がどう感じているかに反応して動くものだから、「1、2、3、4」と型通りにはいかないんだ。ライヴのお客さんに対しても同じだよ。お客さんのエネルギーを感じ取ってプレイを変える。だから俺はセットリストを信じない。リストがあっても、その場のお客さんから感じるエネルギーがリストと違えば別の曲をやるんだ。

田中:(笑って)でも録音の時は、僕がちゃんとリストを作ってたんですけどね。

カルロス:そうだったな(笑)。まあ、それが普通だよな(笑)。

【SPECIAL INTERVIEW】 カルロス・ジョンスン×田中秀明:新作『Blues - It's Powerful Stuff』を語る

── アルバムを聴くと、田中さんのソロや歌にカルロスさんが掛け声を入れたりと、お二人が会話しているように感じました。

カルロス:彼が「Don’t you lie to me?(嘘をつかないで)」と歌うと、「Are you gonna lie to me, yeah?(お前、俺に嘘をつく気なのか、ええ?)」なんて歌い返したり(笑)。まさに音楽を通じた会話(カンヴァセーション)だった。アルバム全体を通して純粋な喜びに満ちていたね。

田中:自然にそうなったんですよ。カルロスは自分のプレイだけでなく、B.B.キングやアルバート・キング、フレディ・キングの素晴らしさなど、本当にいろんなことを僕に教えてくれました。だから今回は、カルロスから教わった「カルロス以外の要素」も全部彼に見せたかったんです。「カルロス、僕は今こんな風に弾けるようになったよ」って見せているような感覚ですね。今回のアルバムのコンセプトは、「I want to show you my play(僕のプレイを見てほしい)」という感謝の気持ちなんです。

カルロス:あぁ、ヒデのプレイから「若き日の俺」が聴こえてきて、本当に誇らしかったよ。自分のことのように興奮した。最高に恵まれているよ……ダメだ、これ以上話すとまた泣いちまうから、この辺にしておこう(笑)。

田中:僕たちが一番仲良くなったきっかけは、カルロスが入院した時にお見舞いに行ったことなんです。「何が欲しい?」って電話で聞いたら、「ファニー・メイ(チョコレート)とニューポート(タバコ)を持ってきてくれ」って。入院しているのに(笑)。

── 日本で発売される17年ぶりの新作となりますね。日本のファンはずっと待っていたのですよ。

カルロス:中国ではアルバムを出していたけどな。ヒデとのアルバムはまだ始まりに過ぎない。もっといろんなレコーディング・セッションをやって、もっと違ったアルバムを作るつもりだし、ビデオだって出す。もう立ち止まらないよ。朝ちゃんと目が覚める限り、必ずやるって約束する!

── 最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

カルロス:日本で俺の情熱とスピリットを分かち合えることを神に感謝しているよ。日本のファンは、ただ酒を飲んで騒ぐためじゃなく、純粋にアートフォームとして、俺たちのようなアメリカのミュージシャンの音楽を評価してくれる。それはアーティストとして最大の賛辞だし、最高の喜びだ。
ロシア、イタリアを回った後、(2026年)11月にまた日本に戻ってくる予定だ。最高だね!

インタヴュー後に行われたライヴは、超満員の観客を熱狂の渦に巻き込む凄まじいものだった。江口弘史(b)、中道勝彦(key)、小野アイカ(g)、アキオジェイムス(drs)、そしてゲストの千賀太郎(hca)という鉄壁のバンドを背に、カルロスは時に激しく、時にすすり泣くように表情豊かなギターを弾き語り、1ステージ2時間半を駆け抜けた。“Mercy, Mercy, Mercy”に始まり、菊田俊介(gt)も飛び入りしたアンコール“Got My Mojo Working”まで、1曲が10分以上に及ぶこともある10曲の入魂のパフォーマンス。途中、カルロスに呼び込まれて田中秀明がギターを弾き、“Don't Throw Your Love On Me So Strong”などでアルバムを彷彿させる白熱のギター交歓を披露した。

彼らの熱い絆を、ぜひ『Blues - It’s Powerful Stuff』で体感してほしい。

【SPECIAL INTERVIEW】 カルロス・ジョンスン×田中秀明:新作『Blues - It's Powerful Stuff』を語る

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カルロス・ジョンスン『BLUES - It's Powerful Stuff』
発売記念来日ツアー決定!

◎11月27日 BLUE MOOD(東京)
◎11月28日 Tokuzo(名古屋)
◎11月30日 磔磔(京都)

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【SPECIAL INTERVIEW】 カルロス・ジョンスン×田中秀明:新作『Blues - It's Powerful Stuff』を語る

『Blues - It's Powerful Stuff』

CARLOS JOHNSON & HIDEAKI TANAKA
(Pヴァイン PCD-25518)

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