■オフィシャルレポート
日本デビュー20周年を迎えた東方神起が、4月25日、26日の2日間にわたり、アニバーサリーイヤーを締めくくる記念ライブ「東方神起 20th Anniversary LIVE IN NISSAN STADIUM ~RED OCEAN~」を横浜・日産スタジアムで開催した。
同会場では2013年に海外アーティスト史上初となる公演を行い、2018年には前人未踏の3Days公演を実施。豪雨の中で繰り広げられた最終日は、今なお伝説のライブとしてファンの胸に刻まれている。それから8年。海外アーティスト史上最多という新たな記録を打ち立てた自身3度目の日産スタジアム公演には2日間で約13万人を動員。国内外から祝福に駆けつけたファンが巨大なスタジアムを赤く染め上げた。
2日間のライブは、緻密に練り上げられた構成とスペクタクルなセット、空の変化や静寂すら味方につけた演出で観客を魅了。柔と剛が同居する円熟したパフォーマンスで、自身最多となる全31曲を3時間半にわたって披露し、ファンとの約束の地で、20周年を集大成するステージを作りあげた。4月27日が日本デビュー記念日の彼らにとって20周年の最終日となった2日目をレポートする。
東方神起の新たな伝説は予想の斜め上をいく幕開けだった。会場がまだ明るい開演時刻の17時にオープニング映像がスタート。春らしい陽気と野外の開放感も手伝って、スタジアムに穏やかな空気が流れている。
メインステージに到着した2人は正面LEDスクリーンに組み込まれたエレベーターに乗り込み、地上15メートルの高さへ。次の瞬間、それまでの静けさを切り裂くように「Reboot」の勇壮なイントロが鳴り響いた。
正面中央のLEDスクリーンが左右に開き、バンドとダンサーが登場。2人は空中に架けられたブリッジに姿を現し、彼らがいる場所へと下降していく。1ヴァース歌い終えたところで演奏が止むと、悲鳴に似た大歓声がスタジアムを揺らし、サビの始まりと同時に火花がスパーク。
歌いながら2人は左右の花道上を通るムービンステージ(以下ムビステ)へと移動し、客席後方のエンドステージへ。間奏でユンホは「いよいよ2026日産スタジアム、始まります!思い切り楽しんでくれますか?Are You Ready!」と声を上げ、チャンミンも「気合い入ってますかー? 盛り上がっていこう!」とシャウト。2人の言葉に観客が大きく応え、会場が次第にヒートアップしていく。
この一連の流れは、過去2度の日産スタジアム公演を組み合わせたような演出だった。「Reboot」は前回公演のオープニングナンバーであり、ムビステでの移動も同公演の再現。今回のステージセットは、サッカーフィールドの外周をすっぽり囲うような構造で、前々回の記憶を蘇らせる。さらに、「Reboot」登場時の、黒いマントを着て目深にパーカを被った姿は、2014年の「TREE」ツアーのオープニングを彷彿させるもの。今回のライブは「過去と今をつなぐ」。そうしたテーマを感じさせる導入だった。
エンドステージに移動後、「Why? [Keep Your Head Down]」が始まると、会場の熱気はこの日最初のピークへ。観客が返す「なんで なんで なんで」のコールがスタジアムいっぱいにこだまする。
続く「Choosey Lover」「Special One」では、ミドルテンポのファンキービートでスタイリッシュなステージを展開。メインステージに戻る際には、ユンホとチャンミンが先程と左右逆のムビステで移動し、この時点で2人は会場全体を巡ったことになる。その間も花道内側のアリーナ、外側のスタンドへと、体の向きを変えながらパフォーマンス。観客との距離の近さを感じさせるステージングで巨大な会場をひとつにまとめあげていった。
場面転換のVCRでは、2人がカフェや公園といった日常風景に溶け込む映像に乗せて、こんな言葉が届けられた。
「迷わなかったわけじゃない(ユンホ)/でも続けてきた(チャンミン)」
「最初は何もなかったところに,東方神起っていう1つの場所が生まれた(ユンホ)/それは2人で作ってきた世界じゃなくて、ファンのみんなとこの場所を守ってきた(チャンミン)」
「たくさん愛してくれてありがとう。ずっと守ってくれてありがとう(ユンホ)/必ず愛してくれて、照らしてくれて、ありがとう(チャンミン)」
これまで東方神起のライブVCRは、その時々のテーマで架空の物語を紡ぐことが多かった。しかし、今回は2人が直接的な言葉で思いを語る構成。ファンに自分たちの肉声でメッセージを届けようとする、20周年ならではの特別な演出だった。
そのVCRに続けて、正面LEDには深緑の木々や植物が写し出され、鳥獣たちの鳴き声が会場に響き渡る。
その後はダンサブルなナンバーを三連発。「Champion」では、チャンミンが「みなさん一緒に歌って!」と声をかけ、観客の「Oh Oh Oh Oh」というコールを誘発。一体感と高揚感を引き上げていく。「Spinning」ではエンドステージでダンサーと一列に並び、回転するランウェイの先端で華麗なステップを披露。遠心力が一層強く働く中でも安定した動きを見せ、超人的な体幹の強さを印象づけた。「感じるまま」は1コーラス歌唱後、ダンサー紹介へ。今回は東方神起ダンサーズの歴代メンバーを含む、過去最多の男女17名のダンサーが参加し、記念ライブを鮮やかに彩った。
ダンサー紹介の間にライトグレーのスーツへと衣装チェンジした2人は、再びエンドステージに登場。
歌い終えた2人はムビステに乗り、メインステージへと向かう。「Time Works Wonders」は、チャンミンのやわらかなファルセットがピースフルな空気を生み、ユンホのふくよかな歌声が温かみを添える。衣装にあしらわれた羽衣のような薄布が風にゆれる様は実にエレガント。暮れなずむスタジアムにチルな空間が広がった。続く「明日は来るから」はアコースティックな響きが美しいバラード。2人はメインステージで時折向かい合いながらていねいに歌いつむぎ、会場をしっとりしたムードへと導いていく。
その後のロングMCでは、まずチャンミンが再び日産スタジアムのステージに立てた喜びを報告。「1年前の東京ドームのときは、日産スタジアムという素敵な場所でみなさんと再会することは正直、想像できていなかった」と明かし、「密かにまた日産スタジアムに立ちたいと思っていたんですけど、その願いがかなって夢のようです」と語った。
ユンホは「昨日が初日で、今日が最終日です(笑)」と会場を和ませながら、今回のライブタイトルについて、「20周年の締めくくりを、ここにいるみなさんと一緒に過ごせていることに感謝の気持ちを込めて、“RED OCEAN”とつけました」と説明。
トークが昨年リリースされた「月の裏で会いましょう」の話に移ると、ユンホが「あのジャケットは当時まだ決まっていなかった日産スタジアムに立てることを願って描いてもらったイラストなんです」と裏話を披露。続けて、「その夢が実現したんです。願いは叶う。ここにいるみなさんと一緒に叶えたんです」と喜びを伝え、「みなさんは20年という長い時間を共にしてくださった仲間だと思っている」という言葉でファンとの絆を表現した。
その“仲間”という言葉から、映画「東方神起 20th Anniversary Film『IDENTITY』」の話題へ。チャンミンは「がむしゃらに進んできた今までの過程を振り返って、20年という時間を実感した」と語り、「すべての仲間たちが、2人のアイデンティティになっていると思う」と素直な思いを吐露。ユンホも「20年という、自分の人生の半分以上をここにいるみなさんと一緒にいる」と積み重ねてきた時間の重みを口にし、最後に「ここにいるみなさんが僕たちのアイデンティティです」と言葉を結んだ。
その思いを胸に、2人は新曲「IDENTITY」を披露。「なんで君の前にいると言葉 間違ってしまうんだろう?」「君がいて となりにいて いつも乗り越えてきた」「不甲斐ないと喘ぐその涙も 君が拭うから」「もっと強くなろうと思ってた いつも いつまでも」。いくつもの困難を乗り越えてきた大切な人との絆。それが自分らしさ(IDENTITY)となり、それこそが帰る場所(IDENTITY)となる。そんなテーマが2人まっすぐな歌声によって届けられていく。長い年月を共に過ごしてきたファンにとっても、思いを重ね合わせながら聴ける一曲であり、胸に迫るものがあったに違いない。春の宵はゆっくりと会場を薄暗くしていき、いっそう鮮やかに浮かび上がるレッドオーシャン。自然の移ろいすら味方につけたその光景は、間違いなく今回のライブを象徴する名場面だった。
流れる涙をやさしく拭くように、次は牧歌的な裏打ちリズムが心地いい「Road」へ。「君がくれた優しさで 今 僕は踏み出せるさ」と歌う2人のムビステからは、咲き乱れるように紙吹雪が放たれ、空へと舞い上がる。ファンタジックな空気が漂う中、ライブは神秘的な雰囲気をまとった美しいバラード「どうして君を好きになってしまったんだろう」へ。幽玄なサウンドと相まって、スタジアムは幻想的な世界につつまれていく。
VCRを挟み、ステージの表情は一変。夜の帳が下りた漆黒の会場を青いレーザビームが切り裂き、パーカッシブなビートがスタジアムに響き始める。2人が紫と黒と白を配色したメタリックなセットアップに着替えて登場すると、客席からは再び大歓声。アグレッシブなダンスナンバー「Survivor」でライブは終盤戦へ突入した。
色鮮やかな照明がステージを彩り、ラストサビでは火花がスパーク。チャンミンが裏拍に合わせて「ハイ!ハイ!」と煽り、客席をヒートアップさせていく。続けて、「High time」「Hot Hot Hot」「大好きだった」が連続で繰り出されると、会場は祝祭のような盛り上がり。客席を染める赤のペンライトがリズムに合わせて上下左右に揺れ、スタジアムが命を宿したかのように躍動する。その後、爽快な「IT’S TRUE IT’S HERE」でバンドメンバーを紹介。最後に2人とダンサーがメインステージの中央に集まり、和気あいあいとしたフォーマンスを届けると、会場にはハッピーなムードが広がっていった。
一瞬の暗転を挟み、「Rising Sun」で空気は一転。緊張感のあるイントロが鳴り出し、火花がこの日一番の派手さでスパーク。メインステージ前列で火柱が一斉に吹き上がり、ラストスパートの合図を盛大に告げた。正面LEDで太陽が燃え上がるなか、2人はフルキャストのダンサーを従えて、血がたぎるような圧巻のステージを展開。観客の歓声と熱気もそれに応えるようにぐんぐんと高まっていく。そこから「“O” -正・反・合-」を畳みかけると、客席は大興奮。東方神起の原点といえるダンスナンバーを連続で叩き込み、王者の貫禄を見せつけていく。2人の動きは神懸かったようにキレキレ。これぞ東方神起の真骨頂といえるパフォーマンスで観客を圧倒した。
その後のVCRでは、オープニング映像でユンホから放たれたシアンの光線とチャンミンから放たれたマゼンタの光線が再登場。2本の光線は日産スタジアムを駆け巡り、静かで穏やかな天空の雲海へと突き抜けていく。会場に静寂が訪れたところで、美しいピアノの音色に導かれ、本編ラスト曲「PROUD」へ。この曲は、彼らが初めて日本武道館のステージに立った際に歌ったメモリアルなナンバー。実に19年ぶりとなる披露であり、冒頭で感じた「過去と今をつなぐ」というテーマがオーバーラップする。「この街でめぐりあった」「激しい雨が降っても 強い風が吹くなかでも」「この愛を守りぬける」。そんな歌詞を、日産スタジアムで生まれた絆と重ねるように、2人は情感豊かに歌い上げていく。背後のLEDには、シアンとマゼンタが混ざり合う紫色のコスモが映し出され、その色は2人の衣装の色とリンク。観客席の照明が落とされ、スタジアムの空は黒一色となる中、レッドオーシャンが深紅に浮かび上がる。選曲・歌唱・演奏・演出、そのすべてが一体となった見事なステージで、本編は切ない余韻を残しながら、美しく幕を閉じた。
アンコールを求めて「東方神起!東方神起!」と声を上げる観客。大会場ゆえの音のズレから、6万5000人がつくるレッドオーシャンが、まるで本当に波を打っているように大きくうねる。そんな中、アンコールは「MAXIMUM」からスタートした。まずはメインステージにユンホが自分の身長ほども高くポップアップして登場。ムビステに乗って1ヴァース目を披露すると、続いてチャンミンが反対側の花道にポップアップして姿を現す。チャンミンもムビステで移動しながら2ヴァース目を歌い、2人はエンドステージで合流。観客は特大の声で合いの手を入れ、会場が再び大歓声で揺れた。
その後のMCでは、事前に募集した「あなたの大切な一曲」エピソードから1通紹介し、アカペラで「Believe In U」のサビを歌唱。2人からの素敵なプレゼントに会場が和んでいると、チャンミンが「他に聞きたい曲があれば、その曲は帰り道に携帯で聞いてください」とお得意の毒舌MCを炸裂させ、笑いを誘う。それをユンホが「こんなすてきな曲をこれからもここにいるみなさんにお届けできるように頑張っていきます」とすぐさまフォロー。こうした抜群のコンビネーションも東方神起ならではだ。最後はユンホが「この日産スタジアムを思い浮かべながらレコーディングした曲です」と次曲を紹介。チャンミンが「今日のライブ、もっともっと最後まで盛り上げていきましょう!東方神起ライブ、日産スタジアム、ラストスパートです!」と呼びかけ、アンコールのステージへと戻った。
そうして繰り出された「月の裏で会いましょう」では、グルーヴィーなリズムとラグジュアリーなブラスサウンドで会場が華やかに。チャンミンの「We Are T!」に観客が大きく「T!」と応え、巨大なスタジアムがひとつになっていく。
続く「Share The World -RED OCEAN Ver.-」と「ウィーアー!」は人気漫画「ONE PIECE」とのコラボ演出だ。ユンホはゴーイング・メリー号、チャンミンはサウザンド・サニー号を模したフロートに乗り込み、場内1周の旅へ。メインステージから銀テープが発射され、ライブのテンションが一気に高まる。曲中で2人は左腕を高く突き上げ、同作の名場面である「仲間の印だ」ポーズを再現。観客の胸を熱くした。「OCEAN」でサイン入りのボールやフリスビーを客席に投げ入れて会場との距離を縮め、間髪入れず「Somebody To Love」へ。ラストサビに差し掛かるタイミングで、2人はメインステージから延びる左右の花道を駆け出し、歌いながら175メートルを走り抜ける。その背後では、盛大な打ち上げ花火が夜空を彩り、20周年記念ライブを祝福。会場のボルテージは最高潮に達した。
その後は、ファンとの絆、お互いに向けた感謝を交歓するハートウォーミングなバラード「Weep」へ。黄色やオレンジの照明に照らされ、会場があたたかなムードにつつまれる中、観客は「ラララ」のコーラスを大合唱。東方神起の思いを受け止めたひとりひとりの気持ちが重なり合い、巨大なスタジアムをひとつにしていった。
歌い終えた2人は、ダンサーやバンドメンバーを改めて紹介。その後、会場をゆっくりと1周しながら、この日集まった6万5000人の近くへと足を運び、感謝の言葉を伝えていく。そして、2人は最後の挨拶へ。
チャンミンは「日産に立てるのは最後かもしれないという思いで準備をした」と語り、今回のライブに並々ならぬ決意で臨んでいたことを告白。「でも、また日産という素敵な場所でみなさんと再会できるといいな」と今後への淡い期待を口にし、「これからのことはどうなるかわからないけど、個人的には悔いのない、めちゃくちゃ楽しかった、2026年、日産スタジアムライブでした」と充実した表情を見せた。そして、「みなさんのおかげで夢を叶えることができてとても嬉しかった」と言葉を重ね、「みなさんがいるからアーティストとしての僕たちが存在すると思ってます」とメッセージ。客席に“こちらこそありがとう”という思いを乗せた拍手が大きく広がった。
ユンホは「最初はライブハウスでみなさんと出会って、ホール、武道館、アリーナ、ドーム、そしてこの日産まで、みなさんの力で来れたと思っています」と、20年の道のりを回顧。続けて「日産スタジアムはすごくいい思い出ばかり」と語り、過去3度の公演に思いを馳せた。「スタッフさん含めてだんだん仲間になっていって、みなさんとも“We Are T!”で、今またこうして集まれたことが本当に嬉しかった」と柔らかな表情を浮かべる。続けて「みなさんと次にまた会うときは、さらにハッピーな顔で、お互いに”おかえり“と言い合えたらと嬉しいです」と再会への思いを口にし、「ここにいるみなさんと過ごせて今日は本当に幸せな時間でした。ありがとうございました」と笑顔で締めくくった。
3時間半にわたるライブの幕引きは、「時ヲ止メテ」。「みなさんにプレゼントしてあげたい」(ユンホ)、「みんなにとってスペシャルな1曲だと思います」(チャンミン)という言葉に続けて披露されたこの曲は、2015年、入隊前最後となった「WITH」ツアーの最終日にトリプルアンコールで歌われた曲だ。そのときユンホは大粒の涙を流し、多くのファンの心を揺さぶった。それを20周年記念というハレの舞台で10年ぶりに届ける「過去と今をつなぐ」選曲となっていた。2人の歌声を胸に刻もうと、6万5000人がいるとは思えないほど、会場は静まり返る。客席を埋め尽くすレッドオーシャンも揺らぎを止め、スタジアム全体が2人の歌に耳を澄ませていく。やがて曲が終わると、張り詰めていた空気がやわらかな感動に変わり、会場を満たしていく。惜しみない拍手と感謝の声援で2人を送り出したスタジアムに残ったのは、深く、あたたかな余韻。そして、東方神起とファンを結ぶ揺るぎない絆だった。
(文・猪又 孝)


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