大人気漫画を舞台化した、舞台『呪術廻戦』-京都姉妹校交流会・起首雷同-。芥見下々氏による原作コミックはシリーズ累計発行部数8,000万部を突破するなど、 ますます勢いを増している。
初の舞台化となった舞台『呪術廻戦』は2022年7月~8月に上演され話題に。今回続編となる舞台『呪術廻戦』-京都姉妹校交流会・起首雷同-(東京公演:2023年12月15日~31日 天王洲 銀河劇場、兵庫公演:2024年1月6日~14日 AiiA 2.5 Theater Kobe)が上演される。

今回は、驚異的な身体能力を持つ主人公の虎杖悠仁を演じる佐藤流司にインタビュー。自身の高校に現れた呪霊を倒すため、特級呪物「両面宿儺」の指を飲み込み、肉体を共有してしまうという役どころで、最強の呪術師である五条 悟(三浦涼介)の案内で、対呪い専門機関である「東京都立呪術高等専門学校」へと編入する。前作公演で感じたこと、今回の公演の変化について話を聞いた。

○■『呪術廻戦』虎杖悠仁を演じれば演じるほど「素の自分が…」

――第2弾の上演となります。
前作は演じていてどのように感じていましたか?

大変でした、本当に! 「精一杯やったな」という気持ちでした。新しい舞台の形として、新たな2.5次元としての一歩を踏み出した気がしました。

演出の(小林)顕作さんは、本当に“舞台”を作る方なんです。今はどんどんテクノロジーが発達してきて、プロジェクションマッピングの演出や映像もすごく綺麗ですし、いろんなギミックが使いたい放題で、映画を観ているような感覚に近くなってきているように思うんですが、顕作さんはそういった技術も駆使した上で、“舞台”を作っている感じがすごく好きです。ギミックに頼りすぎてしまうと「もう映像の方がいいんじゃないの?」と思ってしまうところもあるから、舞台をやる以上、“舞台である意味”を探していかなきゃいけないと、いつも考えています。

――前作を経て作品として変化しそうなところや、逆に変わらないところについてどう感じますか?

全体的に大きく変わるというより、ブラッシュアップという感覚です。
前作でも芝居、歌、ダンス、立ち回りと全部盛りだったので、そういった要素は変わらずに。前回2.5次元舞台の新しい形として一歩踏み出した上で、今回は、原作やアニメを愛してくださる方をより大事にしていく、多くの方を楽しませられるような舞台に向かっています。

原作の内容からしても、シリアスな中に京都姉妹校交流会の野球シーンがあったりして、舞台らしく面白く作っていけるシーンがたくさんあるんじゃないかなと思っていました。野球シーンは、自分自身も楽しみですし(笑)

――全部盛りだったからこその大変さがあったのでしょうか?

肉体的というより、精神的なしんどさがありました。虎杖はすごく元気なキャラクターで、演じれば演じるほど、素の自分が落ち込んでいく感覚があるんです(笑)。エネルギーを吸われるというか。
1番元気なキャラクターなので、自分がついていくのに必死だったところがありました。例えるなら、芸人さんがステージ上で明るいけど、楽屋では全く喋らないみたいな……。でも裏でためて、ステージで発散して、バランスをとってやっていました。

――たとえば「役が暗いと引きずられて自分も暗くなってしまう」という方もいらっしゃいますが、佐藤さんは逆なんですか?

確かにそういう時もあるんですが、虎杖に関しては逆でした。芝居している時に、感情のギアをいきなり二段階ぐらいあげないといけないので、使うガソリンの量が多くて、プライベートではガス欠になってしまう、みたいな(笑)

――そういう大変さがあったんですね。キャストについては、今回注目している方はいらっしゃいますか?

今回は、(禪院真希役の高月)彩良ちゃんがおそらく1番大変で、呪力がないというキャラクターなので、刀、大刀、三節棍と使う武器の種類がめちゃくちゃ多いんですよ。
尊敬します。新たに釘崎野薔薇を演じる山口乃々華ちゃんに関しては、一度舞台で共演しているので何の心配もないですし、めちゃめちゃ信頼しています。

――「この人が面白くなりそうだ」と思うのは?

(加茂憲紀役の梅津)瑞樹くん。加茂って、全然ふざけられないキャラじゃないですか。でも瑞樹くん自体はめっちゃふざけたい方なので、そこの折り合いをどうつけていくのか(笑)。本人はどう思っているんだろう? 内心すごく悩んでいるんじゃないかな。
やりたいことと、やってはいけないことがぶつかり合ってそうな気がしています。

稽古場では、めちゃくちゃ面白かったんです。たとえば、加茂が虎杖に向かって弓を引いていて、東堂が手を叩いて虎杖と入れ替わるシーンでは、入れ替わった瞬間に東堂の喉笛に矢を刺していて(笑)。でも、もちろん本番ではNGだから、いっそ稽古場で面白いことをやり尽くして、全部出し切ってもらうしかないです。

――前回「この人のここがすごかったな」と思ったことはありましたか?

いやでも、1番すごいのが、そもそも俺なんで。俺の次、誰かな?(笑)

――いいですね、その感じ!

(笑) やっぱり、(三浦)涼介くんは芝居力が半端じゃなくて、面白いシーンはめちゃくちゃ面白いし、真面目なシーンはめちゃくちゃかっこいいし、「すげえな」と思います。
前回も思いましたけど、今回も思っています。
○■『呪術廻戦』に感じる面白さは?

――『呪術廻戦』は原作もアニメも大ヒットしていますが、改めて舞台に関わって感じた面白さはどのようなものでしたか?

王道の少年漫画なんだけど、すごく暗い面のある題材でもあって、人の生死や呪いの話とのバランスを感じます。ヒューマンドラマだし、『ジャンプ』の王道の熱い展開もあるし、ギャグもあるし、誰が読んでも刺さるところがたくさんあるのが魅力で。さらに、話が複雑に絡み合って、考察したくなる部分も多くて、キャラクターの名前の理由もわかると面白いし、どうやって考えられているんだろうと思います。

――アニメ版も見られていますか?

もちろんです。移動時間はずっとアニメ版を流して、耳で虎杖の話し方を聞いています。前回で行動原理などある程度は理解できているので、今回はより話し方、感情を合致させていく段階に行けたらと思っています。

■佐藤流司
1995年1月17日生まれ、宮城県出身。2011年に『仮面ライダーフォーゼ』で俳優デビューし、以来さまざまな作品に出演。近年の主な出演作にライブ・スペクタクル「NARUTO」シリーズ(15年~)、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ(15年~)、音楽劇『逃げろ!』~モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテ~(23年)、ドラマ『とりあえずカンパイしませんか?』(23年)、ドラマ&映画『HiGH&LOW THE WORST』シリーズ(19年~)、原案・脚本・演出を務めた舞台『カストルとポルックス』など。公開・上演待機作に東映ムビ×ステ 映画『邪魚隊 / ジャッコタイ』(2024年公開)、舞台『邪魚隊 / ジャッコタイ』(24年8月~9月)がある。