8年ぶりに日本へ寄港した、フランスの公益財団法人タラ オセアン財団の科学探査船「タラ号」。海洋環境の研究を目的に世界の海を巡るこの帆船の甲板で、メディア向けにワインのテイスティング会が開かれた。
この日用意されたのは、メルシャンが輸入するブルゴーニュのワインブランド「アルベール・ビショー」のワイン。一見、接点がないように思えるタラ号とブルゴーニュワイン。なぜこのような会が催されたのか。背景には、海と陸で環境保全に取り組む両者の、5年に及ぶパートナーシップがあった。
○8年ぶりに日本を訪れた海洋研究の科学探査船「タラ号」
2026年4月、タラ号はフランスを出港してから3か月半の航海を経て、東京へ寄港した。日本を訪れるのは実に8年ぶりとなる。
タラ オセアン財団は、2003年の設立以来、海洋生態系・気候変動・海洋汚染の研究を支援してきた公益財団法人だ。研究テーマは「生物多様性」「気候」「極地」の三つ。京都大学をはじめとする日本の研究機関と連携し、プラスチック汚染調査などを共同で進めてきた。日本での寄港を終えた後はパプアニューギニア方面へ向かい、東南アジアから太平洋にかけての海域でサンゴを調査する「タラ号サンゴプロジェクト」が始まる。
タラ号の船体は、もともと極地探査用に設計されたもの。船底はオリーブの種を思わせる丸みを帯びた形状で、海氷に挟まれても押しつぶされず浮き上がる構造だ。
階下には、乗組員たちが「カレ」と呼ぶ共用スペースが広がる。リビング・ダイニング・会議室を兼ねており、奥の壁には、過去に乗船した日本人アーティスト・大小島真木氏が描いたクジラの絵が掲げられている。さらに奥には、サンプルを解析するドライラボ、冷凍庫、海水を真水に変える装置などが並ぶ。
タラ号担当者によれば、航海中はアルコールを口にしないのがルールで、お酒が供されるのは寄港してゲストを迎えた時だけだという。その意味でも、この日のテイスティングは特別なイベントといえるだろう。
○パートナーシップを結ぶブルゴーニュの名門、アルベール・ビショー
船内の見学を終えた後は甲板に戻り、ブルゴーニュワイン「アルベール・ビショー」の試飲会が催された。進行と解説を務めたのは、メルシャンでアルベール・ビショーを担当する浅山閑氏だ。
同ワイナリーの起源は1831年、ベルナール・ビショーがブルゴーニュのモンテリーに設立したワイン商にさかのぼる。その後、主要産地ごとにドメーヌ(ワイナリー)を獲得し、現在は100ヘクタール以上の自社畑を持つに至った。日本のメルシャンとは、1978年頃から45年以上にわたる取引関係が続いている。
現当主は6代目のアルベリック・ビショー氏で、1996年に経営を引き継いだ。経営者であると同時に探検家でもあり、過去にはカナダ極北や南極のアデリーランドへ遠征した経験を持つ。このアデリーランドにちなんで、2003年に生まれた娘をアデリーと命名。さらに娘の名にちなみ、同年に取得したワイナリーをドメーヌ・アデリーと名付けた。
アルベール・ビショーは、土壌を健全に保つため、長年をかけて有機栽培への移行を進めている。土壌の微生物群集は「マイクロバイオーム」と呼ばれ、生態系を支えるうえで重要な存在だ。
そして、それは海でも同じである。タラ号担当者によると、陸と同じように海でもさまざまな環境問題が確認されているという。たとえば、平均海水温はここ20~30年でおよそ摂氏1度上がっており、陸から海へ流れ込む化学物質やプラスチックによる汚染も進行。稚魚まで取り尽くす過剰な漁獲が、生態系の再生サイクルを壊しているとのことだ。
海洋のマイクロバイオーム研究は、タラ オセアン財団のミッションの一つ。両者がパートナーシップを結んだ背景には、こうした共通の問題意識があったのだ。
○船上で熟成された特別なワインを含む5本をテイスティング
テイスティング会では、5本のワインが並んだ。
1本目「ドメーヌ・ロン・デパキ シャブリ 2021」は、ブルゴーニュ最北の産地のもの。冷涼な2021年ヴィンテージは酸の張りがあり、魚介との相性が良い。
2本目はこの日の主役といえる「ブルゴーニュ・コート・ドール シャルドネ セクレ・ド・オセアン 2024」。フランスの貨物帆船「グラン・ド・セイルⅡ」と組んで行った実験プロジェクトで生まれた。
2025年1月18日、ワインが入った228リットルの樽二つを甲板に固定して、船はサン・マロ港を出航。ニューヨーク寄港を経て、3月21日に帰港するまでの約2か月、ワインは大西洋を横断しながら樽内で熟成を続けた。
陸では得られない海風、湿度、波の揺れにさらされながら熟成した一本である。白い花や柑橘類の繊細なアロマに、ほのかな塩味を思わせるニュアンスが重なり、ミネラル感と張りのある緊張感を備えたバランスが心地良い。
コルクには海洋プラスチック廃棄物のリサイクル素材を使用し、ボトルは従来の580グラムから540グラムへ軽量化。ラベルにはサトウキビの搾りかすを再利用した紙を採用するなど、環境への配慮が特徴だ。フランス国内限定の約600本という希少品なので、現在のところ日本では購入できない。
3本目「ドメーヌ・デュ・パヴィヨン ブルゴーニュ・コート・ドール ル・パヴィヨン シャルドネ 2022」は、先ほどのセクレ・ド・オセアンとの比較で供された。ヴィンテージが異なるのであくまでも参考だが、余韻に感じられる塩味を思わせるニュアンスがより穏やかだった。
4本目「ドメーヌ・アデリー メルキュレ アン・ピエール・ミレ 2021」は、アルベリック氏が2021年12月にタラ号で南大西洋から南極へ向かった際に携えた一本。赤い果実の香りに、バラのようなフローラルな印象が重なる。華やかで親しみやすい。
最後は「ドメーヌ・デュ・パヴィヨン ポマール クロ・デ・ユルスリーヌ 2022」。アルベリック氏の自宅前に広がる単独所有畑(モノポール)から生まれる。ポマールらしい力強さにスパイス感と充実した果実味が乗り、今飲んでもおいしいが、もう少し熟成させるとさらに深みを増しそうだ。
この日、テイスティングしたワインは、いずれもブルゴーニュらしいエレガンスを備えたラインナップだった。「ブルゴーニュ・コート・ドール シャルドネ セクレ・ド・オセアン 2024」以外は日本でも購入可能だ。
タラ号とアルベール・ビショー、海と陸の環境問題に取り組む両者のパートナーシップは、今後ますます重要度を増していくだろう。アルベール・ビショーのワインを飲みながら、今もどこかの海で航海を続けるタラ号に思いを馳せてみたい。
山田井ユウキ/ワインエキスパート ワインも含め興味のおもむくまま多ジャンルで執筆するフリーライター。ワインの物語を伝える“ワインストーリーテラー”として活動中。著書に『ワインの半分は物語でできている。』など。[有資格]ワインエキスパート/WSET Level3/ドイツワインケナー/第8回J.S.A.ブラインドテイスティングコンテスト・ファイナリスト この著者の記事一覧はこちら











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