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泥試合のMLB労使交渉 決着の行方見えず、最大の被害者は引退...の画像はこちら >>

 終わりの見えない泥試合が続く。労使が決裂したメジャーリーグ。

昨年12月1日からのロックアウト解除への動きは、未だにない。最大の懸案である新たな労使協定交渉も行き詰まったままだ。

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 ニューヨークの有力タブロイド紙であるニューヨーク・ポストは、今季の公式戦全162試合を開催させるためには、遅くても2月22日までには新労使協定締結へ向けた和解が必要だと指摘した。

 メジャーリーグ機構と選手会。互いの主張を譲らず、下手をすれば公式戦期間を削減してでも、要求を通し続ける可能性はある。そうなると誰よりも割を食らうのは、限られた選手寿命の一部を削られることになるプレーヤーたちに他ならない。


 特に米メディアでもたびたび指摘されているのが、今季がメジャー1年目となる広島の鈴木誠也だ。野球からベースボールへの対応だけでなく、日本から米国という異国文化に溶け込まなくてはならない。通常であれば、日本からメジャー挑戦する選手たちは、12月中には契約を締結。1月に新居など生活基盤を整えて、2月頭にはキャンプ地へ先乗り。現地で自主トレを重ね時差や気候にも慣れ、2月中旬のキャンプインを迎える。

 だが、現状の交渉ペースでは、当初予定されていた2月中旬のキャンプインもままならなくなっている。

そもそも鈴木の場合は、交渉自体ロックアウト解除後からとなるので、どの球団に所属してどのキャンプ地へ向かえばいいのかさえ、おぼつかない。2月中に新天地が決まるかどうかさえ、怪しい雲行きとなってきた。仮に3月頭に所属先が決まっても、オープン戦の短縮は必至。調整や適応が満足でないまま開幕を迎え、その上公式戦の試合数まで削減される恐れがあるというのだから、たまらない。誰もが1年目から勝負、と期して海を渡るものだが、その土俵さえ整わない状態。そこでつまずき、2年目以降は出場機会を失う先達たちはたくさんいた。

 鈴木だけではない。契約交渉どころか、キャンプや公式戦の先も見通せない状況に、自ら引退を決断したメジャーリーガーたちも少なくない。昨年末、マリナーズからFAとなったカイル・シーガー内野手の引退は球界を驚かせた。まだ34歳。しかも昨季は打率こそ・212ながら、35本塁打と101打点はキャリアハイ。脂の乗りきったスターの決断だった。

30本塁打以上しながら引退したのは、メジャーリーグ史上でも3人目。労使交渉の決裂が呼んだ引き際となった。

 昨季はナショナルズとカージナルスに在籍し、7勝を挙げて通算200勝に達したジョン・レスター投手も、年が明けてから引退を決断。他にもキャメロン・メイビン外野手ら中堅どころの選手も引退が次々と報じられた。彼らはFA市場においてプライオリティが決して高くないため、労使交渉が和解に達してからも、すぐには契約が望める立場にはなかった。他のトップFA選手とは異なり、より先が見通せなかったわけで、まさに労使の泥沼劇の被害者といえた。


 契約社会の米国において、期限ぎりぎりまで結論を先延ばしし、少しでも有利な条項を勝ち取ることは、交渉の決まり事ともいえる。2月に入り、両者が一気に歩み寄る可能性もゼロではない。だが労使両サイドとも、既に一部の選手たちにはその影響が及んでいることを理解すべきだろう。願わくば、日本から大志を抱き挑戦する鈴木への足かせは最小限にとどまってもらいたい。そしてこうしたプレーヤーたちへ次々と影響が及ぶのを見て、誰よりもしらけていくのは彼らを応援しているファンたちであろう。スプリングトレーニングや開幕を心待ちする彼らが、何を思うか。

多かれ少なかれ避けられないファン離れ。その最大の被害者は、交渉の当事者である労使ともどもとなるのかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]