17日間にわたった凍てつく空気さえも沸き上がらせるような激闘続きの北京冬季五輪が閉幕した。日本は冬季五輪史上最多となる18個のメダル(金3、銀6、銅9)を獲得。

時差がほとんどないこともあり、連日のメダルラッシュで盛り上がった。健闘した日本選手団全員に拍手を送り、感謝を述べたい。

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 ただし、大会を通じて数々の難題が浮かび上がり、物議を醸したのも事実。商業化が批判の的となって久しい五輪ではあるが、今大会は決定的な転換点となることを避けられないのではないか。

 大会4日目、ジャンプ混合団体で日本のトップバッターとして会心のジャンプを決めた高梨沙羅は、その後泣き崩れた。抜き打ち検査でスーツの太股部分が規定より2cm大きいとして失格。

この競技では5人の女子選手がスーツの規程違反で失格となった。

 高梨は失意を押し殺したまま、2回目でもビッグジャンプを決めた。4人が2回ずつ飛んで総合点で競う。高梨の1本分を失い、延べ計7本のジャンプで戦わなければならなくなった日本。それでもエースの小林陵侑がビッグジャンプを連発し、一時はメダルの可能性もちらついた。惜しくも銅メダル。

確かにその戦いは多くの国民に感動を呼んだ。一方で失格となった各国代表チームや選手らからは、計測方法が通常の国際大会と異なったことなどに異論が続出した。多くの一般ファンからは、直後の抜き打ち検査ではなく、事前のチェック制にすべきと至極全うな意見が声高に出た。

 宿敵ショーン・ホワイトを破り、冬季3大会目にして遂に悲願の金メダルを獲得した平野歩夢スノーボード・男子ハーフパイプ決勝は、最後の3回目に大技トリプルコーク1440を決めきり、逆転勝ちでつかみ取った。その原動力は「イライラして怒りが止まらなかった」という2本目の競技への採点への不満だった。


 平野は2本目で、その大技を含むルーティンを公式戦で初めて成功させていた。それでも得点は伸びず91・75点止まり。3本目は意地で同じ構成ながら、高さをより上げて決めてみせ、96・00という高得点を奪い取った。

 この平野の2本目の採点には、世界中の関係者やメディアから批判が殺到した。「恥を知れ」と強い口調で責める海外メディアもあるほど、常識では計れないほど低い点数だった。平野が3本目をしっかりと決めて逆転勝ちしたからこそ良かったものの、転倒して金メダルを逃していれば、競技自体の根幹を揺るがす事件となっていたかもしれない。

ただでさえスノーボード競技は、Xゲームなど出場者の中では五輪熱が低い。今後の五輪スノーボード競技を有名無実化させかねないピンチを、運営側自らがつくっていたわけだ。

感動の一方で、分断された世界を象徴し、強調してしまった北京五輪 地元の「成功」の声も世界からは嘲笑のネタでしかなく

※画像はイメージです

 そして世界中を呆れ返させた女子フィギュアスケートでのロシア、カミラ・ワリエワのドーピング疑惑。フリースタイル決勝でのロシアチームの演技や、その後のやり取りなどの醜聞を見聞きするだけでクロと思わざるを得ない。そもそも結果は暫定とするという異例の前提付きで、ワリエワの出場が許可されたこと自体が問題。結果的に4位に終わったワリエワは「これで表彰式が行えるでしょ」と話したというが、彼女自身も複雑な構造下での被害者に映る。


 開催国・中国とロシア。異例の暫定出場可のGOサインは、旧社会主義国家同士の結び付きによる癒着と、世界の多くが思わざるを得なかった。そもそもロシアは2014年ソチ五輪での国家ぐるみのドーピング不正により、ナショナルチームとしての参戦は認められていない。個人個人がロシアオリンピック委員会(ROC)からの出場という形を取ったが、それでもチート行為が続くのであれば同国籍選手を全員排除するしか道はない。今後は亡命選手にしか出場の手立てを与えない選択肢も出てくるであろう。

 開催国の中国や、国際オリンピック委員会は大会の成功を声高に叫ぶ。

世界の多くの人には、醜く滑稽な雑音としか響かないだろう。分断が問題視されている世界の中で、過去のどの大会よりもその分断が強調された結果となってしまったのは皮肉でしかない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]