17日間にわたって熱戦が繰り広げられた北京五輪が2月20日、閉幕した。スポーツマスコミにとってもビッグイベント。

話題の尽きない大会になった。スポーツ新聞のデスクを務める40代のA氏と、ネットメディアのライターとして健筆を振るった30代のB氏が緊急対談。スポーツメディアから見た今大会は、どんなものだったのか。

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羽生結弦の「穴」犯人捜し、さんま苦言、4回転半への疑問・・・北京五輪「羽生狂騒曲」総集編 https://cocokara-next.com/athlete_celeb/yuzuruhanyu-beijing-olympics-summary/



A 良くも悪くもネタ満載の大会だったね。

B 期間中、「きょうはヒマ」という日がほとんどありませんでした。

A ページビュー(PV)的にはワリエワのドーピング騒動が凄まじかったな。


B それと高梨沙羅のスーツ失格問題ですね。ネットではどうしてもネガティブな話題の方がクリックされやすいですから。沙羅に関してはアスリートファーストの見地から、どう考えても運営上の不手際に映りましたよ。あんなの、飛ぶ前に検査すりゃいいだけの話ですから。

A ロシアのウクライナ侵攻の危険性と、15歳の女性アスリートにドーピングをさせてしまうという、「ロシアの闇」がシンクロした形だった。若年層の選手を五輪に向けてマシンのように完成させ、国威発揚の道具として用いて、終わったら使い捨て。

「再犯」を繰り返す国を結果的に容認し、出場させているIOCにも問題がある。

B 日本人が五輪に抱くイメージは良くも悪くも「清く正しく美しい」というもの。しかし国際社会の力学でいえば、形を変えた「戦争」でもある。五輪はビッグマネーが動く「興行」で、IOCはイベント会社。バッハ会長は大物プロモーターと考えれば分かりやすい。東京もそうだったけど、そんな胡散臭さに気づいた人も多いんじゃないでしょうか。

A 暗い話題はこの辺にして。それでもアスリートたちの奮闘はやはり素晴らしく、コロナ禍で落ち込みがちな社会に活力をもたらしたと思う。

B 金メダリストたちの凄さは言うまでもないですが、メダルを逃しながらも羽生結弦というアスリートの凄さがあらためて際立った大会だったとも言えます。

A スポーツ新聞の編集姿勢はメダル至上主義なんだが、羽生は4位だったが、各紙は一面で4回転アクセルを世界で初めて認定されたことを報じて、その挑戦をたたえていた。

B プロ野球の世界では、「打者が打って、投手が抑えて一面になるのは当たり前だが、打者が打てなくて、投手が打たれて一面になってこそ、超一流の証明である」という見立てがあります。思った通りの結果が出なくても、一面に掲載されるにふさわしい「格」があるということです。

今回の羽生はまさにそうでしょう。


A スポーツ各紙とも、番記者もカメラマンもエース級を北京に派遣した。羽生ファンは記事の一言一句をしっかりと読み解き、写真についても考察してくれる。こんなに新聞が作りがいのある読者はいない。SNSでの反響は社内でもみんな気にしている。羽生は放つ言葉も文学者のように深い。

「羽生の前に羽生なく、羽生の後に羽生なし」。そんなトップアスリートと言えるかもしれない。文句なしのMVPだろう。

B どの記事も作成するときは一生懸命書くんですけど、羽生の記事は繰り返し読んで誤字脱字やニュアンスの違いがないか、入念にチェックするようにしています(笑)。

A 野球や競馬好きのおじさん向けにこれまで発行してきたスポーツ紙にとって、女性読者の獲得は永遠の課題だった。羽生の出現で、これまで手に取ってもらえなかった層にも我々の仕事がアプローチできた。

「活字離れ」のご時世で、各紙とも羽生報道に力を入れたのは、そんな背景もあると思う。ただ・・・。

B ただ?

A 「2月は新庄ビッグボスフィーバー一色に染まる」と思っていたら、予想以上に北京五輪が盛り上がってしまい、プロ野球報道はひっそりとになってしまった。これは想定外だったな。

B 寒い中で奮闘してくれた全てのオリンピアンに感謝したいですね。

A ちょっとでいいので、異国の凍てつく中で頑張ったメディア関係者にも、「おつかれさま」の気持ちを持ってあげてください(笑)。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]