レタリックやサベアらがチームに一体感をもたらした(C)産経新聞社

 5月30日、31日の両日にわたり、リーグワンのプレーオフ準決勝が行われ、コベルコ神戸スティーラーズ(以下神戸S)とクボタスピアーズ東京ベイ・船橋(以下S東京ベイ)が勝ち、6月7日に行われる決勝へと駒を進めた。S神戸の決勝進出は初で、初の栄冠を目指す。

S東京ベイの決勝進出は2シーズン連続で、2022-23シーズン以来2回目の頂点を狙う。

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 シーズンを1位通過したS神戸はシーズン4位でプレーオフ準々決勝で劇的なサヨナラ勝ちを収めた東京サントリーサンゴリアス(以下東京SG)と30日に対戦。この両チームはプレースタイルがよく似ている。ともに、スピーディーな展開とフィールド上全てのプレーヤーの豊富な運動量で、相手ディフェンスを翻弄してトライを量産する攻撃的ラグビーが身上だ。

 しかし、この日の対戦では、このプレースタイルを存分に見せつけたのは神戸Sだけだった。ボールキャリアーの一人一人が強い突進でディフェンス網に穴を穿ち、その穴をフォロワーが的確に突いて次々と傷口を作っていった。32分のワイサケ・ララトゥブアのトライから後半37分までに実に8本連続してトライを奪い、一気に試合を決めてしまった。

 東京SGも同じように連続した攻撃を志向したのだが、神戸Sに比べると明らかにフォロアーの動きが鈍く、キャリアーが良い突破を見せても逆に孤立してしまって反撃を食うシーンが何度もみられた。

 このチームの「一体感」の差は、キャプテンを務めたブロディ・レタリックとオールブラックスの一員として長くプレーしたアーディー・サベアによってもたらされたものだろう。

 どのエリアからでもどんな状況からでもトライを狙いに行き、そして取り切ってしまうのがオールブラックスというチームのスタイルだ。今シーズンの神戸Sはオールブラックスのプレースタイルをかなりの精度で実現できていたが、その実現のためには、どのようなスキルを磨くべきなのかを身を以て示したのが二人のニュージーランダーだったのだ。元々優れたポテンシャルを持った選手の集まりである神戸Sに一本芯が通り、プレーが繋がるようになったことがシーズン1位、そしてプレーオフでは最多となる69得点を奪ったこの日の大勝をもたらした。

 31日に行われたS東京ベイと埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下埼玉WK)の一戦は対照的に、お互いにフィジカルの強さを全面に押し出したバチバチのぶつかり合いとなった。

 攻撃側は流麗なランプレーで相手ディフェンスを崩すのではなく、密集の近くでクラッシュを繰り返しながら少しづつだが確実に前進する。そして守備側はぶつかり合いの最中に冷静に隙を見極めてボールを奪い取ろうとする。遠目にみていてはなかなか分かりにくいが、リーグワン史上屈指の濃密な肉弾戦が80分間続いた。そして、相手のミスを的確に突き、チャンスを確実にモノにしたS東京ベイが、薄氷の勝利を手にした。

 この試合、最大の殊勲はハラトア・ヴァイレアのコンバージョンチャージだろう。後半20分過ぎにゴール真下にトライを決めた後のコンバージョンキック。あまりにイージーな位置だったゆえ、キッカーの斉藤誉哉はあまり距離を取らずに、そして相手選手の動きを確認することもなく漫然とコンバージョンキックを蹴ってしまった。ヴァイレアは被トライ後の円陣に加わらずにキッカーを注視しており、猛然とチャージをかけ、ものの見事にキックをブロックしてしまったのだ。

 これで埼玉WKに傾くかに見えた試合の流れがピタリと止まってしまい、S東京ベイが息を吹き返した。そして最終的にはここで入らなかった2点の差で、終了間際の追い上げも届かず勝負が決まってしまったのだから埼玉WKにとっては悔やんでも悔やみきれない大きなミスだった。

 さて、決勝は「最強の矛」である神戸Sと「最強の盾」であるS東京ベイとの間で争われることとなった。

今シーズン、両チームは奇しくも初戦と最終戦で対戦しており、勝敗は1勝1敗。ただし、シーズンの深まりとともに成長した神戸Sは、シーズン序盤とは別物のチームになっていると言え、最終戦で足掛け7年に渡り29連勝とホームえどりくではめっぽう強かったS東京ベイを破っている。

 成長著しい「矛」が「盾」を打ち砕くのか、それとも円熟の時を迎えている「盾」が「矛」を叩き折るのか。固唾を飲んで見守るような試合が展開されるはずだ。

[文:江良与一]

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